サングリアにまつわる思い出
スーパーの棚でサングリアを見つけ、手に取った。
こんな外国の酒まで商品化する商魂のたくましさはさておき、私は嬉しくなってしまった。
私が昔、スペインに旅行に行った折、サングリアばかり飲んでいた。
赤ワインにフルーツを入れた甘い酒であるが、私はそれがすっかり気に入ってしまったのである。
スペインでは、お決まりのアルハンブラ宮殿やフラメンコなどを楽しんだが、街で美人を探すのが、ひとつの楽しみだった。
私の意見であるが、ヨーロッパでいちばん美人が多いのはスペインである。
日程が一日空き、友人が農夫の家という観光スポットへ行こうと言い出した。電車に乗ってゆけば、たいして時間がかからないとわかり、私も行くことにした。
質素な建物を予想していたが、中はぜいたくなつくりであった。それもそのはず、カルロス四世が、狩りや保養に使った別荘であるということだ。
友人が調度品を見ている間、私はパティオでくつろいだ。三月ではあったが、天気が良くて暖かく、ジャケットを脱ぐほどだった。私は、大学を何とか卒業し、東京で就職も決まっていた。まさに人生の春を楽しんでいた。
その夜も仲間とサングリアを飲んだ。
そういうわけで、サングリアで、私は若くて楽しかったころを思い出すことになったのである。
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