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周南市粭島の貴船祭、海を渡る神輿がゆく三世代が集う日

この記事は、周南市の魅力をPRする周南市市民ライターの活動として発信しています。

毎年旧暦6月10日に近い日曜日、周南市粭島すくもじまにある貴船神社では夏祭りが行われます。

祭りの時間はその年の潮の満ち引きで変わるため、2024年(令和6年)の開催は、7月28日午前11時から午後3時でした。

「海を渡る神輿」の姿を一目見ようと、多くのカメラマンが訪れるこのお祭り。
粭島に暮らす人々にとっては、島を離れた家族が集う地元の夏祭りです。

この記事では、貴船祭の歴史や祭りの様子、島に集まった人々をご紹介します。


周南市粭島すくもじまとは?

徳山湾の南の入り口に位置する粭島は、周南市中心部から車で30分の距離にあります。
フグ延縄漁はえなわりょう発祥の地でもあるこの粭島は、古くから漁業の島として栄えてきました。

フグのマンホールを見つけました!

約20年前、周南市で暮らしていた頃にも地名は聞いていましたが、「島」なので、私は船に乗って行く場所だと思っていました。

Googleマップで検索すると、地続きで行けるではないですか!
大島半島の海沿いを車で走り、小瀬戸橋を渡ると粭島です。

粭島から徳山方面を見る

島の先端まで来ると祭りの会場「貴船神社」が見えてきました。

幟が立っている場所が貴船神社です

貴船神社にまつられているのは龍神様

貴船神社の鳥居

周南市教育委員会が設置している神社の看板には、「貴布祢きふね神社」と書かれています。

貴布祢神社は、由緒沿革については明らかでありませんが、十八世紀の初め頃、祭神に高龗神たかおかみ闇龗神くらおかみの二柱を祀ったものと伝えられています。
また、西国の諸大名が瀬戸内海の航行の際、風待ちをしている間、粭島に散在する鎮堂を集めて社を建て、海上安全を祈願したことに由来するとも伝えられています。

引用:貴船神社看板

高龗神、闇龗神ともに龍神様です。
貴船祭で神輿が海から上がる場所には、「龍神社」もあります。

海岸沿いにある龍神社

龍神社は、貴船祭の神輿が上陸する地点に立ち、御旅所もすぐ側です。

貴船祭とは?

大漁旗が掲げられた島の様子

慶安年間(1648年〜1651年頃)に始まったとされる貴船祭は、海上安全を祈願して行われています。

祭りのクライマックスは、重さ700キロの神輿を担いで500m離れた御旅所を目指すシーンです。
島の人々が、貴船神社の目の前の海を神輿を担いて泳いで運びます。

「海を渡る神輿」として有名なこのお祭りを撮影しようと、多くのカメラマンが小さな島のお祭りに集まるのです。

神輿を待っている間、広島から来られたアマチュアカメラマンの一団が、伝馬船と大島の煙突を構図の中にどのように入れるか、話し合われていました。

島に集う人々

中央が御神木です

貴船神社の境内に入ると、多くの人が集まっています。
白装束を着用しているのは、祭りに参加する方々です。

祭りの参加者

祭りの無事をお祈りされているのでしょうか?

お祖父様が作られた奉納幟

ご家族4人で来られていた方にお話を伺いました。
普段は広島に住んでおられるご一家ですが、お祭りに合わせて粭島に帰省されたそうです。
お子さんの白い幟は、お祖父様の手作り。

お父様も白い衣装を着ておられ、神輿を担がれるそうです。

伝馬船てんませんの出発

11時から神様を乗せた神輿を、御旅所まで先導する伝馬船が出発します。
海でみそぎをした後に、拝殿にて参拝です。

拝殿の様子

伝馬船は2017年(平成29年)以降、漕ぎ手の減少や船体の老朽化で出航されていませんでした。
コロナ禍で祭り自体も3年間開催されず、昨年伝馬船の大規模な修理を行い6年ぶりに神輿と一緒の姿を見られるようになったのです。

踊り子のお二人を先頭に

伝馬船では、船首でポンデン踊り、船尾でかい踊りが行われます。
左の踊り子が手にしているのがポンデン、右の踊り子が手にしているのが櫂です。

伝馬船の船首と船尾で行われるポンデン踊り・櫂踊りは、明治二十年頃海運業の石丸安太郎が、他県より取り入れて始められたといわれています。

引用:貴船神社看板

海運業で栄えた島の歴史を伝える、大切な踊りです。

入江を回る伝馬船

伝馬船は、11時の出発から神輿が御旅所に到着する13時30分くらいまで、神社から御旅所の間をぐるぐると回り続けます。
漕ぎ手や踊り子にとっては、日差しを遮る物のない海上で大仕事の一日です。

子ども神輿も海を渡る

11時30分頃、子ども神輿が出発します。
伝馬船同様に、担ぎ手は海に入りみそぎをしてから神輿を担ぎます。

背後の伝馬船がポンデン踊りと櫂踊りをしています!

子ども神輿が浅瀬の海を渡ってきました。
途中から陸に上がり御旅所まで行き、再び貴船神社へ帰ります。

後ろの大人が奉納幟を持っていますね

子ども神輿が通り過ぎた直後から、波が急に高くなりました。
満ち潮です!
自然の移ろいと祭りのタイミングがぴったりと合わさっていることに、島の歴史と暮らしの営みに思いを馳せました。

祭りのクライマックス、海を渡る神輿

大きな音がするので振り返ると、ステンレスの台が海上に浮いています。

この台の上に神輿を置きます

さらに潮が満ちてきたので、場所を移動しました。
子ども神輿を撮影した場所は、すっかり海水に覆われています。

神輿が海へ

12時30分頃、みそぎが終わりいよいよ神輿の出発です。
担ぎ手が神輿を担ぎながら、浅瀬にやってきました。

子ども神輿を撮影したあたりの光景です

「このまま担いで御旅所まで向かうのかしら?」と思っていたら、先ほどのステンレスの台が神輿に近づいてきます。

浮力があるとはいえ、重たい神輿の下に台をセッティングするには呼吸を合わせなければなりません。

神輿の下に台を入れる

ロープを引っ張りながら、バランスを取っています。

ピンと張られたロープ

伝馬船が近づき、船からロープを神輿に渡します。

伝馬船からロープを受け取っているところ

神輿と伝馬船がつながり、いよいよ本格的な海渡りです。

神輿を引っ張る伝馬船

海を渡る神輿

沿道のお客さんは皆、神輿の進行に合わせて動きます。
少し先の道端から海を覗き込むと、こちらに進んでくる神輿が見えました。
波打ち際には、ロープの端を持った人が何人もいます。

海の真ん中を進む神輿

御旅所に向けて神輿を引っ張る伝馬船。
波打ち際でロープを持ち神輿を支える人。
神輿の先頭には、進行方向にロープを引きながら泳いでいる人がいます。

海を渡る神輿

神輿の掛け声が浜に響き、祭りのクライマックスを迎えました。

御旅所に到着

神輿が御旅所のある海岸に近づいてきました。

右奥に見えるのが出発地の貴船神社

龍神社の横で神輿を掲げます。

勢いよく持ち上げられた神輿

御旅所に到着した神輿の前では、神事が行われました。

御旅所での神事

神事が終わると一斉に拍手!
担ぎ手と地域の方の安堵した表情が、印象的です。

リラックスした様子の担ぎ手

周南市の伝統芸能

周南市伝統芸能スタンプラリーの会場

周南市を代表する伝統芸能でもある「海を渡る神輿」ですが、地域の高齢化が進み祭りを維持するのも大変なことと思います。

祭りの合間に、海辺で遊ぶ子どもの姿を見ました。

子ども神輿が終わったら遊びの時間

子ども神輿の後を追いかけるように、海に入る地元の方の姿も見かけました。

子ども神輿を追いかけて海へ

きっと祭りのために島に帰ってきたご家族が、多くおられたと思います。
また来年も、島に祭り囃子が響き三世代の笑顔が輝くことを願っています。

【貴船神社の情報】

【龍神社の情報】

【貴船祭の様子】


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