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守ってもらうと弱くなるのか?~私を構成する漫画~

「漫画はすぐに読み終わってしまうから、小説の方が長く楽しめる。」理屈屋はそんなことを思い、幼い頃から漫画をあまり読まなかった(今は読む)。しかし、そのうちに持ち前の集中力を活かし、小説も早いペースで読めるようになった。ある時、全8巻の小説にはまった時は、毎晩、親に「(読み終わったから)次の本を買ってきて」とねだり(小説って漫画より高いんだもの)、「毎日は買わないよ」と怒られた。……懐かしい記憶である。

そんな漫画より小説が好きで、漫画に熱烈な想いがなかった私にも、一つだけ全巻を揃えた漫画があった。それは……
『花より男子』である。(写真はお借りしました。)

発端は、家族がハマっていたからである。新刊が発売される度に自動的に私の本棚に収められた。だから正確に言うと、私が揃えたというより家族が揃えた漫画である。だけど、その熱量に影響され、何時しか私も夢中になって一緒に読むようになった。

ドラマ化、映画化もされており、あまりに有名だけれど、改めてあらすじをご説明すると……

物語の舞台はお金持ちの子弟が入学する事で知られる英徳学園。主人公は、娘の玉の輿を願う母親の勧めで入学した一般庶民の牧野つくしである。学校は、財閥の御曹司や茶道の家元の息子等で構成されるF4(Flower 4―“花の四人組”)に牛耳られていた。彼らの親から多額の寄付を受けている学校は、彼らを野放しにしている。つくしは、それに違和感を持ちながらも平凡な高校生活を送ろうとしていた。 ところがある日、F4に花瓶の水をかけた事が原因で学校全体からいじめのターゲットにされてしまう。しかし、正義感の強いつくしは彼らの性根を叩き直さんとばかりに立ち向かって行く……というストーリーで、その中で次から次へと恋が生まれるラブコメである。(一部Wikipedia先生より引用)

「え?そんなことってあるの?」と思うストーリー(学校全体からいじめのターゲットになるってどういうこと?)にハラハラしたり、玉の輿を狙う女子達の足の引っ張り合いのバトル(高校生でしょう?)を描くストーリーにイライラしたり、スカッとしたり、時々、切なさを感じたり……とワクワクしながら読んだのを覚えている。また、お金持ちの世界の華やかさと、つくしちゃんの地味目な庶民生活の明確な対比も面白かった。

つくしちゃんは逞しい。私は、つくしちゃんの誰が相手であろうが関係なく「間違っているものは間違っている」と堂々と主張し、行動できるところが大好きだった。どんな困難に直面してもへこたれず、前を向いて立ち上がっていくところも大好きだった。真っすぐで正直で勇敢で……優しさも忘れない。そういう強さが眩しかった。

けれど、先日読み返してみると、漫画を読んでいた当時とは感じ方が変わっていることに気が付いた。逞しくて真っすぐで勇敢つくしちゃんに、危なっかしさを感じたのだ。正論が必ずしも通るわけではない。真っすぐなだけでは上手くいかなくて、正直者は、時々損をする。自己主張だけではダメで、伝え方次第で結果が変わることもあって……白か黒かではない世界、人や状況によって正解が変わる世界……そういう大人の世界の煩わしさを知ってしまった自分が読んだからなのだと思う。少し、寂しい。でも、それが大人になったということなのかもしれない。

どの場面だったかは忘れてしまったけれど、つくしちゃんが「守ってもらうと、弱くなる(だから、守ってほしくないんだ)」と言ったことがあった。初めて読んだ時、私は、「そうだよね!強くいなくちゃね!」と頷いたし、一時期、自分一人で頑張ろうと躍起になっていたことがあった。でも、今思えば、それはとても独りよがりだったなと思う。そもそも、みんな誰かに守られているのだから。自分一人で頑張っているのでは決してない。それを忘れたらだめだよなあ、と。つまり、「守ってもらっても、弱くはならない」のである。むしろ、守ってもらっていることに気が付いて、感謝できたのなら、また一つ強くなれるのだと思う。強く、しなやかに、そして、優しく。

また読み返してみようかな。感じ方が変わっているかもしれないから。

お付き合いいただきありがとうございました。

編集:アカ ヨシロウ
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