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#断捨離できない①

家族4人で3LDKに住む私、毎年今年こそ断捨離しようと決意してるのに…

今年もムダなものだとわかっているのに捨てられないものたち…

①家人が買ってきた「人間失格カステラサンド」の袋

はるか昔高校生の頃、太宰治の「トカトントン」「親友交歓」を読んで衝撃を受け、太宰治にはまり…大学でも太宰のレポートを書き金木町に旅行して斜陽館にも泊まるほど大好きでした。

しかしそんな太宰フリークの私、実は「人間失格」とか「晩年」とか、いわゆる太宰らしいと思われてる作品は好きではなくて!

太宰作品の真骨頂は、ユーモアと毒、クールな諦観と熱すぎる情熱、醜いエゴと温かい人間愛…相反するものをごちゃ混ぜにしつつ、考え抜かれたすばらしい、見事な構成と文章で切れ味鋭く人間ドラマを切り取った短編と古典やおとぎ話を太宰オリジナルでカバーした作品にこそある!と信じています。

実は一番好きな作品集は圧倒的に「新樹の言葉」!最初の掌編「 I can speak」から名作…。こんな短い掌編なのに姉と弟のものすごいドラマを感じさせる太宰の筆致が見事すぎて!!この作品集には平凡かもしれないけれど懸命に生きる人間への愛おしさがあふれているし、ユーモアやエンタメとしてのおもしろさもたっぷりあって、一般的な太宰のイメージを覆す異色の作品集。太宰の天才短編作家としての別の側面を堪能できます。

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「人間失格」は太宰の作品では一番有名な作品ですが、暗すぎるし救いがなさすぎるし、自意識過剰でネガティブすぎる主人公がどうしても好きになれず…。しかし言葉の魔術師太宰の天才的なネーミング「人間失格」という作品名はほんとうにすごいすごすぎる!!たった四文字なのに古今東西どんな人の心にも訴えかけるタイトル!この作品は「人間失格」という天才的なコピーによって永遠に名作として残ることになったのだと思います。

そしていつのまにか、どうしようもない男が何の救いもなく朽ち果てていく暗い物語がお土産になったり、お店の名前に使われたりするようになって…でもその多くは文豪や文学作品をイメージとして使っているという高級さやどこか文学的な香りが感じられるものだったと思います。

しかし、このカステラサンドミルク風味クリームには、そのようなこだわりや文学的なものへの憧れは感じられません。いくらなんでもカステラサンドと人間失格が1ミリも結びつきませんし…。言うなればご当地アイドルとかくまモンのようなご当地キャラクター、人気観光スポットの宣伝のような風合いです。

「人間失格」という言葉はいつしか、太宰の実際の小説の内容を離れ、一つの独立した広告のコピーとなったのでしょう。

でもそれくらいあのスキャンダラスで問題児だった太宰治が人々に文豪、スター作家、偉い人という記号として浸透し、青森のアイコンとなったのだなぁと思うと、ニヤっとしてしまうし何だかとても楽しい気持ちにもなってくるのです。

そんなことを思うと…このお菓子の袋がどうしても捨てられなくなってくるのでした…

断捨離への道は険しい…。

#断捨離できないものたち   #エッセイ  #日々思うこと  #文学  #太宰治

#人間失格  #国語大好き  #現代文大好き





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