ことばをどう選ぶか。

ダイアローグ 

ダイアローグは会話ではない。
会話は人間関係を発展させ、変化させる為の手段。
言動は思考や感情と一致しない。日常会話のリズムで、会話以上の多くの内容を含むものにしなければならない。
1、映画のダイアローグに求められるのは、圧縮と節約。
2、ダイアローグには方向性が求められる。
3、ダイアローグには目的が求められる。

映画は小説ではないという事も忘れてはいけない。
観客が台詞を瞬時に理解出来なければストレスとなる。映画は80%が視覚、20%が聴覚によって成り立つ芸術と言う。演劇では逆になる。
劇作家には表現を凝らしたダイアローグが求められ、脚本家には短く単純だが、観客に情報を与えるダイアローグが求められる。短く単純な砕けた口調の文が連なり、観客に小出しで見せていく。

「凡人の如く話し、賢人の如く考えよ」とアリストテレスは助言する。

短い台詞

観客を退屈させてしまってはスクリーンから離れさせてしまう。
長い台詞を書く時は慎重に。絶好の瞬間であれば良いが、独白のようなことは実生活では起こり得ない。人生はアクションとリアクションが織りなすダイアローグ。
映画ダイアローグの原点は短い台詞の素早いやり取りという形式。
映画というものの本質を理解しているなら、長台詞をアクションとリアクションに分割し、話者の言動を明確にすべき。このアクション、リアクションの組み合わせを登場人物の内側、人物同士、人物と現実世界の間で引き起こす。そうすると読み手の頭に観ているという感覚が呼び覚まされる。

サスペンス型の文

出来の悪いダイアローグは無用な言葉が文末に漂う。
そのため、重要な意味が中間にあるのに、無用な言葉に観客は退屈をしてしまう。ことばを刈り込むことでシーンの力強さを増幅させ、やり取りのリズムに勢いがつく。
映画において秀逸なダイアローグは、最後に核となるアイデアが明かされる形になる傾向がある。
例えば、「彼がされてきた事に比べれば全然ましだよ、君は知らないかもしれないが。彼はあのとき彼女に…」
意味を最後に明かす事で観客も俳優も耳を傾ける事になる。
関心を持たせる為の仕掛けがサスペンス型の文。

台本を排した脚本

映画のダイアローグを書く際の最高のアドバイスは「書かないこと」映像で表現出来るならば書く必要は無い。
まずは映像だけでどう処理するかを考える。収穫逓減の法則に従う。
つまり、書けば書くほどダイアローグの効果は薄れる。
どうしても必要な時だけダイアローグが交わされれば台詞に飢えた観客の関心に火がつく。無駄の無いダイアローグは視覚を重んじた作品の中で際立ち、力強さを増す。
最初に選択すべきは映像で、視覚的に豊かな映像がダイアローグへ移行する時に、観客はその刺激を耳で楽しむ。

ト書き

読み手の頭の中に映像を投影する事。
脚本家は壮大な修辞といった技法が使えない。その代わりに、文学を文学でない形で作品に取り込まなくてはならない。脚本家が目指すものはページをめくるたびに映像が頭に流れる、そんなト書き。
まずは叙述すべき事柄を、情報や感覚を正確に認識する事。言語表現の90%は映像に置き換える事はほぼ出来ないと言われる。だから脚本家は想像力を鍛え、スクリーンに映るものは何かを自問し続ける。映像化出来る事だけを書く。

今、この瞬間の鮮明な表現
脚本では鮮明さは物の名前から生じる。修飾語のついた包括的名詞や動詞は避け、具体的な物の名前を選ぶ事。具体的なイメージが湧く表現を選ぶ。
スクリーンに何が見える、聞こえるのかを考えて隠喩や暗喩は用いる。頭に浮かぶかどうか。
いかに正確に表現しうるか、映画を見ている感覚を引き起こす事。

イメージ系統

イメージ系統とは主題を表現したいときに使う手法の一つで、映画に埋め込まれるイメージをカテゴリ化したもの。作品にの始めから終わりまで、これらのイメージに微妙な変化をつけて、様々な方で繰り返し、視覚聴覚に訴える。それにより潜在意識に働きかけ、美的感情に深みや複雑さを与えるのが狙い。

ストーリーの詩的表現の本質と、それが映画内で作用する仕組みを理解すると、映画は詩人の心を持つ者にとって素晴らしい媒体になる。
詩的というのは、高い表現力を持っているという事。ストーリーの内容に関わらず、充実した表現が必要となる。どんな芸術作品においても、それぞれの要素が他の要素やイメージと結びついて出来た集合体になる。
映画における詩的表現は、ほとんど目に見えない形で行い、観客に悟られないようにする。
イメージ系統は、外部イメージ、内部イメージのどちらかにより作られる。
外部イメージは映画外でも象徴的な意味を既に持つ。
内部イメージは映画の外で象徴的なイメージを持つ場合と持たない場合があるが、新しい適切な意味をその映画だけに与える。

タイトル

映画タイトルはマーケティングの主眼。コピーライティングを学んだ方ならば題名の重要性は承知しておられる事でしょう。
傑出したタイトルは複数の要素を同時に言い表している事が多く、ストーリー中の強固なものを示す。
例えば「ジョーズ」このタイトルには自然界が舞台で自然対人間、アクション冒険という事が含まれている。
しかし当然ながらタイトルのみがマーケティングの検討材料ではない。

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