隠れたい腐女子と隠れない腐女子と隠れたくない腐女子

 昔々あるところに、隠れたい腐女子と隠れない腐女子がいました。

 この話もうブログで書いたんですけど、腐女子が隠れる隠れないという話は何度してもしたりないということはない。そしてこのマガジンは腐女子の間で起こるあらゆるいざこざと軋轢について延々と書いていくのが目的の文章でありこの物語はフィクションですが事実に基づいており、そして繰り返しになりますが腐女子が隠れる隠れないという話はしてもしてもし足りるということはないのだ。というわけでたぶんここでもしつこく扱うことでしょう。

 さて、隠れたい腐女子にもいろいろな子がいます。漫研に入ったら伝統的にホモ(あえてホモという言葉を使いますが)の話はかくれてするものだと言われて先輩と秘密を共有できるという多幸感にぞくぞくした腐女子。書店で大好きな少年漫画の「よくわかんないけど絵柄が違っていつもより大きい」漫画本を買ったら終始恋愛の漫画が載っていて頭がショートして「こんなのいけないことじゃないだろうか」と思った腐女子。楽しくホームページを運営していたらある日匿名大型掲示板に晒されて大量の悪意に晒されて死にたくなり、「誰もこんな目に合わないようにみんなに注意しなくてはならない、隠れなさいと言わなくてはならない」と思った腐女子。

 一方、隠れない腐女子にもいろいろな子がいます。クラスの男の子と男の子が仲良く遊んでいるとくすくす笑っている腐女子。嫌いな上司がBLの受だと考えることによって心の中で憂さ晴らしをしている腐女子。男の子も在籍している漫研で大きな声で男の子同士のすけべな話をし、男の子や、腐女子ではない女の子にもその話を「できてあたりまえ」かのように振る舞う腐女子。

 そして隠れたい腐女子と隠れない腐女子がインターネットで出会いました。

 隠れたい腐女子は「なんて常識がないんだろう、危機管理意識も足りない、わたしたちは気持ち悪いし、気持ち悪いと思われたら誰にどんなふうに言われてひどい目にあうかわからない、わたしの大事な秘密の園を踏み荒らさないで、マナーを守って」と思いました。

 隠れない腐女子は「こんなに楽しいのに、どうして気持ち悪いとか隠れろとか言うんだろう。BLなんてふつうの本屋で売ってるし、男の子が仲良くしてるのが可愛いって言うことの何がいけないの、みんなそういうの好きでしょ? 楽しいことはどんどんシェアしてしかるべきだよ」と思いました。

 かくして腐女子は学級会を毎月開いています。議論は平行線。隠れたい腐女子は自分があの子たちを叱って正してやらなくちゃと思い、また、わたしだけはあの子たちと違うと言っておかなきゃと思います。隠れない腐女子はなんでこの人たちこんなにぴりぴりしてるんだろう、意味わかんない、と思います。「萌え話は鍵垢で」「って言ってる注意喚起がオープンアカウントで流れてるけど」「公式はエゴサしてます、検索避けしましょう」「検索避けワードも捕捉されてるよ」「どうしてわからないの腐女子は隠れるべきなんだよ」「しつこいなあひとりで隠れてなよ」

 といったある日、とある公式が、腐女子に向かって大量のガソリンをぶっかけ、焚火をしました。

 必死で検索避けをして鍵垢にこもって呻いていた腐女子も、オープンアカウントで尊いbotになっていた腐女子も、仲良くバーベキューになりました。

 めでたしめでたし。


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