見出し画像

同時代に生きる幸せ

 さて、今日20日のメインイベントといえば、木内昇さん著『火影に咲く』の文庫発売である。3年前にハードカバー版が出版されており、もちろん購入し、3度読了済。
「すでに持ってるのに、買う必要あるの?」って言う方も多いだろうが、巻末の解説が楽しみなのと、文庫版発刊に際し、著者が気になっていたところを修正したり……ということがあるので。あと、なんといっても文庫はどこへでも持っていきやすいから。

 今回、解説しているのはエッセイストで書評家の藤田香織さん。初っ端から「長い間、時代小説というジャンルに興味がもてなかった」という“不穏な”出だしだったが、そんな彼女がどうやって興味を持ち、木内さんの作品に浸かっていったかが書かれている。そして、ラストの一文──。

「作家・木内昇が存在する時代に生きる幸運を、じっくりと噛みしめて欲しい」

 シビれた。いや、「まさに自分の気持ちを表してくれた」と頭を垂れた。

 バブルがはじけ、経済不況があり、東日本大震災に見舞われ、放射能におののく。その後も、常に大地震や火山の噴火、豪雨災害を警戒し、そしてここにきて、新型コロナウイルスという“未知の生物”に振り回される。

 昭和の終わりから平成、令和とわたり、社会的には決して“いい時代”とは言えないことばかり。そしてそんな困難に、先頭に立って立ち向かっていくべき日本政府は、責任のなすり合い、足の引っ張り合いばかりで、一国をリードしていく気がまったくなく、国民を置き去りにし続けている。
 この日本を牽引しているのは、間違いなく政治家以外の国民である。

 藤田さんの言うとおり、自分にとって木内さんの作品と出会えたことは幸運以外の何物でもない。そして、まだまだこれからも彼女の作品を堪能していけるという幸せ──。

 彼女だけではない。映像作家、ミュージシャン、芸人、スポーツ選手……いわゆる“文化”的活動で、心を豊かにしてくれる人々。そして、いまは仕事としての関わりとなっているが、もちろん“最大級の敬意”を持つファンとして、その想いを隠しながら接しているボクサーたち──。ちょっと時代が違ったら、試合を見ることも、取材することもできなかったと考えると、やっぱりこれも“運命”なのだと思う。

 そういう奇跡に感謝し、その心を常に頭の片隅に置いて──。

ボクシングの取材活動に使わせていただきます。ご協力、よろしくお願いいたします。