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【BI-TO #02】別荘がつなぐ島・鴻島(鴻島町内会・役員 上田豊延さん/中央自治区・広報 中島康徳さん)

日生港から定期船で15分。そこには「別荘の島」として知られる、鴻島という島があります。バブル景気とともに立ち並んだ別荘は、バブル崩壊で管理会社が倒産・撤退し、その多くが空き家に。しかしここ数年、別荘として蘇らせる人、民泊施設にする人などが現れ、島には少しずつ人が増えています。

そんな鴻島に生まれ育った上田豊延さんと、5年前に鴻島に拠点を持った中島康徳さんに、ありのままを聞いてきました。

当時建てられた別荘はその数なんと約350軒!

——中島さん、拠点について教えてください。
中島:僕は元々加古川に住んでいましたが、この自然を見て住民票を移してしまいました。幼い頃は山っ子だったので、海の近くに秘密基地が持てたらと夢見ていたんです。

ここでは、日曜の朝に船で真魚市に魚を買いに行って、戻って捌いた魚を朝ごはんに食べる。近いし、車じゃないから渋滞もない。ここでしか味わえない特別感です。

別荘の窓辺からの景色。遠くに見えるのは、日生の特産・牡蠣の養殖いかだ。

——どんな人がどんな活動をされてますか?
中島:地元の方だと、川淵さんが「あしたのM」というログハウスを運営されています。今は新たな拠点をオープンするために、昔あったレジャー施設の跡地で工事を進められていますね。

あとは中国出身のアイくんの民泊施設「天空の城」からの眺めも抜群です。彼は真面目で人柄も素敵なんですよ。他にも大人数でBBQができる「AXIA」さんなんかは、これからのシーズン最高に楽しめると思います。

そして実は僕も、自宅とは別にゲストハウスを整備中なんです。別荘を購入したいっていう方も、まずはぜひ遊びに来て欲しいですね。

川淵さんが進める新しい拠点

——島の人口増をどのように捉えていますか?
中島:僕は、いまのように微増していくのがいいと思っています。もともと住んでいる方々のペースを崩したくないですし、急激な人口増加は収集がつかなくなるので避けたいんですよね。上田さんのように、挨拶をしたら答えてくれる人がいるだけで嬉しいし、不義理をしたくないですね。これから新たに別荘を買う人と、いま、島にいる人とが助け合って、島の自然を守って行けたら最高ですよね。

——生まれも育ちも鴻島、という上田さん。バブルまでの暮らしを教えてください。
上田:
わしの親父の代に4世帯ほどが姫路の家島から鴻島に移り住んだのが、ここでの暮らしの始まりじゃな。今とは違って、島の高台にあった小学校に通うとった。

島出身の作曲家・岡千秋さんはひとつ下じゃで。おせ(おせ=岡山弁で、大人・年上という意味。)になって日生の製網会社で働いて、鴻島に戻ってから牡蠣の養殖業を始めたんじゃあ。

バブルの時は、開発業者が3・4社きて次々と別荘を建てたなぁ。その変化を肯定的に捉える人もおりゃあ、否定的に捉える人もおった。特に古い島民は不安がっとったな。

対岸から見える鴻島の別荘

——別荘が建って起きたことは?
上田:人が増えたから、ようやく水道を引いてもろた。いまは本土の貯水タンクから海底ケーブルで来よるわ。勤労奉仕で島の高台の濾過槽を掃除しょおった頃を思い返しゃあ、そりゃ楽になったわな。

それから、今もじゃけど最盛期はテレビ取材も多かった。わしもなんべんか出たけど、まさか今また昔の映像を見るとは思わなんだわ。笑

——上田さんや中島さんのように、程よく距離を保ちながらお互いを尊重することが、よりよい地域をつくり、人口を増やし発展することにつながるのだと感じます。別荘が立ち並ぶこの景色を、未来につなぎたいですね。

上田:鴻島は一時的には、まあ廃れた印象だったけえど、いままた新しい時代が来たと思う。わしは当時も今も、来るもの拒まず、去るもの追わずの精神じゃあ。中島さんのような人が来て、活性化するんならええんじゃないかと思うな。島のことで相談があったら聞くで。

上田豊延さん(左)
昭和50年から牡蠣養殖業を営み、3年前に引退。生まれも育ちも鴻島で、テレビ出演も多数。「取材はもう、こらえてくれぇ。笑」
中島康徳さん(右)
兵庫の企業に勤務するかたわら、鴻島に2つある自治会のうち中央自治区で、広報役を勤める。ドローンによる撮影や記事執筆も手がける。

瀬戸内海国立公園・鴻島
宿として生まれ変わった別荘からの眺望は、まさに最高。島内は急勾配な坂&ヘアピンカーブの連続なので、探検するならスニーカー・日焼け止め・帽子など持参がオススメ◎食料も忘れないように。アクセスは本誌MAPページの定期船時刻表を要チェック。


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この記事は、岡山県備前市の<人>と<文化>を見つめるローカルマガジン「BI-TO」に掲載されたものです。こちらからPDFもご覧いただけるのでぜひチェックください!

■目次
・ISSUE#02 いま、島と。
 -頭島:島とあかり
   島のあかりを子どもたちに繋ぎたい
 -別荘がつなぐ島・鴻島
 -風待ちの島・大多府島
・「大人のしゃべりBAR」開催レポート
・ZINEワークショップ開催レポート
・Do you know…?
 三石耐火煉瓦ビール/コチビール/山東水餃大王
・島さんぽMAP

2024年6月25日発行
発行:BIZEN CREATIVE FARM
南裕子(編集・執筆)
吉形紗綾(執筆・デザイン)
池田涼香(デザイン)
松﨑彩(デザイン)

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