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米国企業のDXへの取り組み動向❸

連載「米国企業のDXへの取り組み動向」の第2回目では、米国の大手家電量販店であるベストバイのDXに関する取り組みや業績の変化について簡潔にまとめてみました。

今回は、スニーカーやスポーツウェアなどスポーツ関連商品を扱うメーカー、ナイキのDXに関する取り組みを他の記事を参考にしながら整理していきたいと思います。

ナイキ

同社は2017年に、コンシューマー・ダイレクト・オフェンスというDX戦略を策定しました。

この戦略の中核として、イノベーションスピード顧客との直接的な繋がりというテーマを位置づけ、これら3つを従来の2倍にするというトリプル・ダブルいうコンセプトを発信しています。

本ブログでは、顧客との直接的な繋がりというテーマを取り上げていきます。

D2CとOMO

ナイキの取り組みをご紹介する前に、DXに関連するマーケティング戦略の中で、D2C(Direct To Consumer)OMO(Online Merges with Offline)という2つの大きなトレンドを整理しておきましょう。

D2C(消費者直接取引)とは、メーカーが他社の小売り店舗のような中間流通業者を通さずに、自社のオンラインショップやアプリを通じてプロダクトを直接的に販売することを指します。

とはいっても、ファッション、スポーツ、家電といった物理的なプロダクトを提供しているメーカーの一部は、オンラインサイトだけでなく、物理的な直営店も兼営しています。

このようなカテゴリのプロダクトに対して、多くの消費者は最終的な購買の意思決定をする前に、やはり実物を見たり触れたりしたいからでしょう。

従来の物理的な店舗における対面販売がブリック&モルタルと呼ばれるのに対し、オフラインとオンライン店舗の双方を運営するビジネスモデルはクリック&モルタル(クリックはオンライン、モルタルはオフライン)と呼ばれています。

一方OMOとは、オフラインとオンラインのチャネルやタッチポイントを融合し、優れた顧客経験を生成していこうという考え方です。

従来のO2O(Online To Offline)が、オンラインからオフラインへ、反対にオフラインからオンラインへ消費者を誘導しようとする提供者側の視点であったのに対し、OMOは顧客経験という消費者側の視点といえるでしょう。

ナイキが運営する2種類のOMO店舗

ナイキは、デジタル上の顧客経験とリアルの店舗経験を融合させた2種類のOMO店舗、ナイキ・ライブハウス・オブ・イノベーションを運営しています。

これらは、ナイキプラスという会員向けにデザインされたもので、同社が提供するアプリと店舗が連携して機能する仕組みになっているようです。

ナイキ・ライブは、店舗エリアの顧客データを徹底的に活用するコンセプトショップ(ブランドからのメッセージや感性を1つのコンセプトにまとめ、それに沿った品揃えを行う店舗)であり、米国内を中心に展開されているようですが、日本では2019年に渋谷店をオープンしています。

アプリと店舗を連携した主な特徴として、以下のようなものがあります。

■商品のバーコードをアプリで読み込むことにより、オンラインとオフライン双方の在庫状況を確認することができる
■商品のバーコードをアプリで読み込むことにより、色やサイズなど詳細な商品情報を知ることができる
■アプリで購入または試着予約した商品を店舗で受け取ったり、取り置きしてもらったりすることができる
■メンバーが店舗内または店舗近くにいる場合、アプリにパーソナライズ化された各種特典が表示される
■フィッティングした結果を記録することで、次回の購買時に役立てることができる
■チャットを通じて、スタッフ(ナイキストアアスリート)に質問や意見を述べることができる

また、オンラインとオフラインの双方から得られた顧客データは、非常に短いサイクルでの在庫の最適化に役立てられているようです。

一方、ハウス・オブ・イノベーションは同社のフラッグシップショップ(ブランドを象徴する中核的な店舗)であり、現在のところニューヨーク、上海、パリにて店舗を構えています。

こちらは、予約をすることで店舗内の専門スタイリストから個別のアドバイスや提案を受けたり、店舗内の様々なブース(例.オリジナルシューズの制作、スポーツアトラクション、展示品)を楽しんだりすることができるようです。

業績の改善

このように、同社はDX戦略の焦点である顧客経験の生成(例.D2CとOMO)、プロダクトの革新(例.新しいテクノロジーを活用したシューズや顧客との共創)、オペレーションの変革(例.プロダクトライフサイクルの短縮や在庫の最適化)を行ってきます。

2016年末に50.8ドルであった株価は、2020年末には141.5ドル(4年間で約2.8倍)にまで伸びています。

また同期間中、デジタルに関連する売上高は約75%増加し、全体の約30%を占めるようになったそうです。


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