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旅する日本語2019

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旅する日本語をまとめました。エッセイとショートといろいろ趣向を凝らして書いたものです。
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記事一覧

夏休み、田代島、クロネコ #旅する日本語 #涼み客

ボーナスをもらったので会社を辞めた。 そこそこ経験を積んだから、秋になったら転職だ。 今は夏休みを満喫しよう。 私の住まいから4時間。 宮城県は通称猫島、田代島に来た。 猫がたくさんいる…と思ったが、あれれ? 猫も夏休みなんだろうか…。 猫神社に行こうと歩くと、視界の端に黒いものが見えた。 駐車場の車の下に黒猫が寝ていた。涼んでいるのだ。 私が、 「にゃーん」 と話しかけると、猫は私を一瞥。 猫の目の色が、実家にいたモモにそっくり! 私はゆっくり近づく。猫は逃げな

インド人の前で、レモンを歌った話 #旅する日本語 #心細し

私がインドのアーユルヴェーダクリニックに入院してる時のことです。 私を含め、10人の患者さんと、テラスでだべっていました。 ※私はgoogle翻訳で英語を変換しつつです。 インド人の患者さんから、ふいに、 「日本では、どんな歌が流行っているの?」 と言う質問をされました。 私はスマホで、米津玄師のレモンを検索、動動画を流そうとしました。 すると、インド人の別の患者さんが、私に向かって、 「歌ってくれ」 と言うのです…!! 私は、歌が得意ではありません。 しか

成田発、8:50の便にて #旅する日本語 #途立つ

今年の4月、成田空港から、インドに向かって旅の途についたときのことです。 私は、思わぬところで、「インドに行けるかどうか瀬戸際」に立ったのです。 出発の日、私は、格安航空券を予約できるサイトを使って予約した飛行機に乗るために、3時間弱早く空港に着きました。 初めてのインド…… 初めての、アーユルヴェーダ…… 私は、英語があまりできません。 しかし、Google翻訳はあるから大丈夫。 不安と期待する気持ちとともに、成田空港に行きました。 しかしです。 タイまでの乗

福岡、六月柿、Airbnb #旅する日本語 #六月柿

私が習い事のために成田から福岡へ行っていたときの宿泊先は、行きつけのAirbnb。 家主は40代の男性で、数年前に家主は離婚をしており、娘さんがいるが、生まれた孫には会ったことがないそうだ。 彼は3LDKという、一人暮らしには広い分譲マンションの空き部屋を、Airbnbとして提供し、いつも、2、3人女の子が宿泊していた。とても気さくな男性で、ある日、馬券が当たったから皆にうなぎをご馳走するよ、と言った。 彼は鰻丼の副菜に、トマトを1人当たり1/2個分用意した。トマト多い

春のお彼岸 東北の場合 #和煦 #旅する日本語 #実話

東北の春はおそい。 日差しは暖かいが、お彼岸だと言うのに、雪は残ったままだ。 祖父のお墓参りに、少し雪の残った墓地を歩く。 祖父はとても私を可愛がってくれてた。 将棋を教えてくれたり、白鳥を見に連れて行ってくれたり。 「今度は、秋に来ようかな」 お参りを終え、私は母に話しかける。 山の斜面にある墓地だから、紅葉が美しいだろう。冬もいいけれど、墓地が雪に埋まると聞いている。 冬なら近くの湖に来る白鳥が見れるのに…。 「やめたほうがいいわよ」 母が止めた。 「どうして

姉と後追いと私 #旅する日本語 #麗らか

両親に連れられて北海道の姉夫婦の家に初めて行くことになった。 正直、あまり気がすすまない…。 私は姉が苦手だ。 小さいころに、姉が出かけるのに付いて行こうとして邪険にされていたからだ。それ以来、姉にあまり近づかなくなった。 初めての北海道は美味しいものがたくさんあり、姉夫婦のことを考えなければ楽しく感じていた。 うららかな春のある日、訪れた姉の家は赤ちゃんナイズされていた。マット、おもちゃ、etc. 姉の後追いをする甥っ子を見ていると、小さい頃の私もこんな感じだった

インド万福記 #旅する日本語 #万福

私は今年のGWにインドに行き、アーユルヴェーダクリニックに入院しました。 その時、3食、満腹になるまで食べていました。単純に量が多いのです。 そして、朝夕とチャイを飲んでいました。 私はカフェインをとるとお通じが良くなるので、もりもり食べてもお通じが良かったので快適ボディでした。1日2回きっちり出ていました。 しかも私は南インド料理が好きなので、食事をすごく楽しみました。 先生方や、インド人の患者さんに、「インドの食事が口に合うかどうか」すごく心配されていたのですが

今はもうない沢 #旅する日本語 #大童

飛行機で1時間、車で2時間、見渡す田んぼと点在する民家。 夏休みは祖父の家に行くのが定番だった。 ゲームはないが、祖父は山を持っていた。 祖父は沢蟹を取ろうと言う。 車で1時間、祖父の山に到着。 しばらく歩くと沢だ。 僕は沢に手を突っ込む。ヒヤリとした水の感触。 僕は沢に入る。魚を追いかけたり、苔に足を取られたりと大童だった。 祖父は、手のひらほどの石をひっくり返す。小さなカニがいた。 祖父が掴んでバケツに入れる。それを見て、僕も一緒にカニをとった。 その日の夕飯