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ラジオとは聴覚のみで作られた特別な世界

皆さんはラジオをきくことがありますでしょうか?

私はたま~にあります。布団から出るのが億劫な朝、やることがあったはずなのにいつの間にか過ぎていた休日の夕方、眠いけど寝たくないけど寝なければならない夜…など、せわしない毎日に、ふと現れる、ゆっくりと時が流れる、そんなときに私はラジオをききたくなります。

その瞬間はいつ現れるだろうか。私の場合は、時間に余裕があって、心に余裕がないとき、だと思います。誰かの声がきこえる、それがとても心地良いのです。話している内容をじっくり聞くことももちろんありますが、途中から ”誰かが話している” そのことだけでも、自分の世界と外の世界が確かにつながっているんだと実感します。

私がラジオを知ったのは小学生のときです。どこかにでかけるとき、車内はいつも音楽がかけられていましたが、その日はたまたまCDの調子が悪かったのか、仕方なしに母がラジオをつかたのがきっかけでした。

私の初めてのラジオはごくごく普通の音楽番組でした。パーソナリティさんがゲストにバンドをしている方たちを呼び、色々とお話をして、曲紹介に移る。パーソナリティさんのファンなわけでも、バンドのファンなわけでもありませんでした。しかし、私はひたすらに彼らの話に耳を傾けていました。私が知らない人たちが私が知らない世界で、私と同じように話していることがとても奇妙でおかしく感じました。

次にきいたラジオは女性パーソナリティによる恋愛番組でした。恋愛相談をもちかけるリスナーさんのお便りを元に、番組は進行していきます。女性パーソナリティさんは面白おかしく、いい意味で適当に返していました。今思い返してみても、すごく真剣にお返事していたことは思い出せません。ただ、「私は応援してます。頑張ってね」と冗談交じりに言う彼女に救われた人はきっと何十人もいるんだろうな、と想像することはできました。

元より、音楽が好きだった私は音楽番組を中心にラジオが大好きになりました。中学生になり、クリスマスプレゼントにウォークマンをもらい、周りがパズドラにはまっているなか、私はひたすらにラジオをきいていました。

高校生になってからはスマホを買ってもらい、声優さんのラジオをきくようになりました。キャラクターを通してではない、声優さんの生の声をきくのは、着ぐるみの中をのぞいているようなワクワクでいっぱいになりました。

大学受験時には夜中の1時にやっている元気いっぱいのラジオをきいて、勉強していました。「こんな夜中まで頑張っている受験生のみんな、お疲れ様!ちゃんと寝るんだぞ」という言葉は今でも覚えています。

ラジオは声のみです。表情で訴えかけることも、リアクションを見せることもできません。視覚的な情報が一切ない。だからこそ、目の前で起きている1分1秒、変化していく世界を楽しくも消耗しながら生きている私たちにとって、聴覚だけで作られたラジオという世界は、一種の現実から隔離された特別な世界なのかもしれません。