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【ベース】ミックスで気をつけていること10選

※便宜上「ベース」とつけましたが、ミックスなので曲全体の視点からになります。
無料配布しているパラデータを元にした、コラムです。



①リファレンス(参考音源)を聴く

ミックスを始める前に、必ずリファレンス音源を聴きます。

リファレンスは2種類用意。
⑴どんな時も必ず聴く曲
⑵ミックスする曲に応じて聴く曲


⑴の目的は、耳の状態を揃えること。聴こえ方の確認。スポーツでいうウォームアップ的なイメージ。誰かのオススメ曲ではなく、「自分が音の出方を把握している曲」を聴くのがオススメ。

僕の場合は、Haste The DayのWake Up The Sunを必ず鳴らしています。バランス感が好みなのは当然として、好きすぎて曲展開や各楽器の音色が頭に入っているから。

あとは、今回パラデータを配布したSouthern Crossもよく使います。自作で何か1曲、理想を追求したミックスを持っておくと便利。「ベース音量上げすぎたかな?」みたいなときに、比較参照できるので。


⑴を聴いた後に、「⑵ミックスする曲に応じて聴く曲」を聴きます。

例えばIntroとResistanceをミックスしていたときは、Dead Crownを⑵のリファレンスにしていました。

スネア(のルーム)がデカすぎてカッコ良かったので、自分でもやってみようと。


⑵はミックス全体だけでなく、こうした個別の楽器にも当てはまります。


複数のリファレンスを持っておくと、音の方向性を決めやすいです。例えば「スラップならこの曲!」「指弾きのトーンはこの曲!」みたいに。

DAWプロジェクトには各曲ごとの⑵を読み込んで、常に参照できるようにしています。

例えばSouthern Crossの冒頭は、Harem ScaremのNext Time Aroundを参照しながらやりました。


ここから先は、実際のミックス行程へ。


②DI側のボリュームは音程感で判断する

2系統混ぜるとき、DI(クリーンな低域)側をどれくらい出すか。基準にしているのは、「コード進行(ルート音)が分かるかどうか」です。

ベースレスのトラックを再生しながら、DI_WetをON/OFFしてみてください(Southern Crossのサビ39小節~が分かりやすいかと)。

ピッキングの輪郭は見えませんが、DI_Wetだけで「コード進行を伝える役割」は果たしています。


次にベースレスとDI_Wetを再生したまま、歪み側AMP_Wetを足します。ボリュームを0から徐々に上げていくと、バキバキ感が増していきますよね。逆に下げていくと、存在感がなくなっていきます。

DI_Wetに比べると、AMP_Wetのベストな音量感は、人それぞれだと思います。もちろん曲調や好みにもよる。

したがって、DI側は「ベースの音程が伝わるかどうか」を判断基準に。AMP側は、それぞれの好きな音量感にするのが手っ取り早いです。


ちなみにDI_Dry➞DI_WetでかけていたEQがこちら▼

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バッサリ高域を切ることで、こうした低域だけのトーンになります。※数値はあくまでもこの曲の場合なので、決して縛られないように!



③異弦間のバランスを整える

ベースの質感差(ムラ)は、以下ABを切り分けてとらえる。

A.異弦への移動が原因の質感差
B.プレイが原因の質感差


例えば、ドロップBチューニングでの異弦同音。
・5弦の8フレット
・4弦の1フレット
は同じ音(G)ですが、EQ感や抜けは違います。同じ音でも低い弦の方がロー強め。高音弦だとハイで勝る。

異弦同音で差があるわけですから、異音異弦ならなおさら。1弦の鳴りと5弦の鳴りは違いますし、他の弦もしかり。

つまりプレイがどれだけ正確でも、異弦への移動による質感差は、必然的に発生してしまいます

逆をいうと同じ弦内のフレージングであれば、なるべく練習で改善するべき。例えばブレイクダウンで0の連発にムラがあるなら、コンプじゃなくて右手で整える。


ミックス段階では「異弦への移動」がキーポイント。

特に高音弦側に移動時、低域の音量感が薄くなりがち。その場面をオートメーションなどで補正するだけで、曲全体のベース安定度はグッと上昇します。

コンプレッサーも、「異弦への移動による質感差」のために使います。

(ライブではステージングにより音暴れが出やすくなるので、それを防ぐ意味合いもありますが)

ともかく、「異弦への移動がもたらす影響/もたらした影響」を考えてプレイ/ミックスしてみましょう。



④エフェクトはトラックを分ける

音色が違ったり、ディレイやコーラスなどをかけたりする際はトラックごと分けます。

むろん「必ず分けるべき」ではなく。ただ自分は、パッと見の分かりやすさを重視しているので。

オートメーションを使って同じトラック上でプラグインをON/OFFしても良いのですが、インサートできるプラグイン数に限りがありますし。

トラック丸ごと分けるとボリューム調整が楽なのと、「やっぱりエフェクトやめよう」ってときも戻すのが簡単。

エフェクト箇所がどこか、すぐ分かります▼

effect位置



⑤トラックのルーティングに縛られない

④を作る際、無理にグループトラックへ送らなくても大丈夫です。

実際Southern Crossのエフェクトトラックはステレオアウト(マスタートラック)にそのまま送っています。ベースのグループチャンネルは経由していません。

(ステレオトラックをモノラルグループに送ると、モノラルになっちゃいますし)

選択肢としては、さらにステレオのベースグループチャンネルを作って、まとめるやり方もあります▼

グループチャンネル

しかしSouthern Crossはエフェクト音が1つだけなので、ステレオアウトのままミックスしました。

グループチャンネル自体も、僕はやりやすいので作っていますが、「こうしなければならない」という意味ではありません。あくまでも手段です。



⑥オートメーションの調整

ボリューム調整/コンプレッサー/EQなど各種調整を終えたら、オートメーションを書きます。

おもに、曲展開に合わせた細かいボリューム調整。

例えば「サビの間だけバッキングギターを少し下げる」「ブレイクダウンだけキックを大きくする」など。

その他フレーズによってはリバーブやディレイをかける量などを、オートメーションでコントロールします。

※ベースのパラデータをミックスエンジニアに送る場合は、オートメーションOFF推奨。プロジェクトごと渡す場合を除いて、WAVで送るとオートメーションがどうかかっているのか分からないため。


⑦マイクロオートメーションの使い方1

マイクロオートメーションとは、オートメーションを「瞬間的に」使うこと。

先の⑥でいうオートメーションは「曲展開ごと」のイメージですが、より瞬間的なタイミングで使用します。

例えばブレイクダウンやセクションの頭など、フレーズ頭だけアタック感(トランジェント)を増強したい場合。

マイクロオートメーションという言葉は、Jordan Valeriote(Silverstein, Coutnerparts, Intervals等のエンジニア)の解説動画から拝借しました


というわけで、マイクロオートメーションを分かりやすく施したサンプル音源を用意しました▼


ベース音にご注目。前半3まとまりがアタック感増強あり、後半3まとまりは無し。

このサンプルの、ベースだけ音源がこちら▼


ド頭、右手で強く弾いているのではありません。ベーストラックのボリュームを瞬間的に上げて、アタック感をプラスしています。


サンプル音源でのオートメーション▼

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頭だけ一瞬上げて、すぐ元に戻す形ですね。

グループチャンネルごと上げても良いですし、歪み側だけ上げてもOK。耳で聴いてイメージに近いように。何db上げるかも、数値に縛られずに耳で聴くこと。ライブでの演奏をイメージしてやると、自然にまとめやすいです。

サンプルでは分かりやすく思いっきり上げています(なのでちょい割れ気味です🙇)。実際は、ベースをここまで上げることは稀。強いて言えば、大きなブレイクダウンの入りなどでやるかも。


なおプラグインでも同じようなことができます。WavesのTrans-Xや、Stillwell AudioのTransient Monsterなど。

プラグインならオートメーションを書く手間が省けます。どちらでも良いと思いますが、ボリュームでマイクロオートメーション書くと、視覚的に分かるのがメリットですね。


Revised Standardsの音源では、プラグインでギターとベースのアタックを少しだけ増強しています。もっとアタック感が欲しいときは、「プラグイン+マイクロオートメーション」の合わせ技もオススメ。

(プラグイン内のパラメータでオートメーション書くのもありです!)

ちなみにマイクロオートメーションを書くときは、「Ctrl+C」と「Ctrl+V」を使うとスムーズにできます。「瞬間的に上げているオートーメーション部分」だけを選択して、コピペしていくと手早くできるかと。


上記のようなやり方でマイクロオートメーションの位置を揃えると、絶妙な「引っかかり感」が出ます。バンドサウンドの核となる「バッキングギター、ベース、キック」の3つでやるのがオススメです。

実際の例でいうと、Wage Warの2ndはおそらく多用していると思われます。1:32~のパート。1:38や1:42など、休符直後のギター音に注目すると分かりやすいはず。「引っかかり」を感じるので、Trans-X系使用かマイクロオートメーションを書いているのでは。



マイクロオートメーションの使い方2

ボリュームやプラグインではなく、EQのオートメーションを書くパターン。

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例えば「ブレイクダウンのときだけ、1.5kHz-2kHzあたりを3dbブースト」みたいな。

オススメは、EQ自体のオンオフ。つまり「どこでEQがかかるか」だけオートメーションで制御。そうすれば、「どれくらい上げるか」の調整はオートメーションをいじらずにできるので。


ブーストだけでなくカットにも使えます。個人的にはカットでの使用が多いですね。フィンガリングノイズが気になるときだけ、思いっきりハイをカットしたり。

オートーメーションを書かずとも、ダイナミックEQでも似たようなことができます。常に切りたい場合はダイナミックEQ、特定のフレーズ時だけ切りたい場合は、オートメーションを使うとスムーズかと。

※プラグインによってはオートメーションでON/OFFすると、ノイズが出るモノもあります。必ず確認を。



⑨他の楽器と合わせて確認する

曲にもよりますが、正直「ベースが単体で聴こえるパート」は珍しいですよね。

したがって、ベーストラックをソロで鳴らしてのミックス(音作り)はなるべく避ける。

特に「歪ませれば歪ませるほど、いざオケと混ぜたときに抜けてこない現象」には注意。単体で聴くと、歪んでいた方がカッコ良く聴こえがちですが。

「ベースが単体で聴こえるパート」は、別途トラックを分けてエフェクトをかけたり、もしくはオートメーションで対応していく方がスムーズ。


ちなみに他の楽器と帯域のかぶりが気になったら、FabFilterで確認しています。

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とはいえ最終的に聴いて良ければ、あまり気にしません。「かぶってるかどうか」よりも、「カッコ良いかどうか」の方が優先順位高いので。



⑩ミックス確認時は途中で止めない

ひと通りミックスがまとまったら、ファイルで書き出して確認へ。

紙とペンを用意して、曲を再生。気になった(修正したい)ことをリストアップ。紙はノートでも裏紙でも、何でもOK。

スマホは通知で気が散る可能性もあるゆえ、外出時以外は紙がオススメ。

リストも他人に見せないならば、自分で分かれば何でも良いです。例えばこんな感じ▼

・イントロのリードギター下げ
・0:52のベースグリッサンドちょい上げ
・サビのハモりコーラスにディレイ追加
・03:20のスネアにリバーブ追加

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修正したいポイントが見つかっても、途中で止めないこと

たとえば聴き始めてすぐ、「あ、キックの音量大きすぎた」となっても、ひとまずメモして聴き続ける。

もしかしたら曲後半のブレイクダウンでは、逆にキックが物足りなく感じるかもしれません。全体を通して聴くことで、より正確な判断を下せます。

セクションごとに「止めて⇄修正して」を繰り返していくと、逆にデコボコになってしまう危険性あり。

※もちろん特定のポイントだけを確認したい場合は別です。「例えばリバーブの余韻具合だけチェックしたい」のような。


リストアップし終えたら、ミックスに戻って修正&書き出し。また同じように再生しながらリストアップ。

この行程を繰り返して、リストアップがなくなった地点が、「ミックス完成」です。


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というわけで、以上10項目。
読んでいただきありがとうございます。

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レコーディング編、エディット編はこちらから▼


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