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2019-20 プレミアリーグ 第17節 VSウルヴァーハンプトン 試合結果~強者の基本は結果論?~

ウルヴス1-2トッテナム

得点者(トッテナム)
前半8分 27ルーカス・モウラ
後半46分 5ヤン・フェルトンゲン

得点者(ウルヴス)
後半22分 37アダマ・トラオレ

スタメン

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交代
後半44分 27ルーカス・モウラ→クリスティアン・エリクセン
後半47分 7ソンフンミン→21ファン・フォイス
後半47分 20デレ・アリ→8ハリー・ウィンクス

リザーブ
GK
41ホワイトマン
MF
18ロ・チェルソ
29スキップ
FW
19セセニョン

 Jリーグが終わったため、リハビリとして何かしらのレビューを書きたいと思った筆者。土曜日観に行った入れ替え戦のことを書くか、それともトッテナムの試合を書くかでかなり迷っていた。両方書いても良かったのだが、筆者にも本業があるので、そこは手を抜けない。
 というわけで、Twitterで募集をかけた所、「ウルヴスvsトッテナムのことを書いて欲しい」という声が微妙に多かったのでコチラを書くことになった。あと一票ズレてたら両方書くとこになってたぜ!

 それでは早速レビューへ。

 ジョゼ・モウリーニョが就任して以降、好調を維持スするトッテナム。2桁順位まで沈んでいたが、モウリーニョが指揮を取ってからのリーグ戦は、3勝1敗と勝ち越し、8位にまで順位を上げた。
 今節は7位ウルヴスとの直接対決。勝てば上位進出が見えてくる大事な一戦は、劇的な幕切れを迎えることとなった。


 結果だけ見れば、リヴァプールに次いで2番目に負けが少ないウルヴス相手に土をつけられたことはすごく大きい。さらに、アウェイの地で勝ち点3を掴んだとすれば、かなり高い評価はできる。
 しかし、内容まで見てみると、多くの課題が生まれた。終始圧倒され、何度も押し込まれる苦しい展開を強いられたのも、トッテナムに次の手立てが無かったからであろう。
 基本的に4バックが多いプレミアリーグだが、ウルヴスのような3-4-2-1を採用してくる相手には、今後も手を焼きそうだと感じた。
 「いや、フロンターレだけじゃなくて、お前らもかい!」とツッコんでしまったのはここだけの話。

スパーズの可変型プレッシング

 前半開始8分にルーカス・モウラが、ニア上に突き刺すスーパーゴールで幸先よく先制に成功。それまでは両チームバタバタした試合の入りをみせていたが、それなりに落ち着いてくるとウルヴスが優勢にゲームを進めていく。
 それには、トッテナムの可変型プレッシングと、その穴を突いたウルヴスの配置が見られた。まずは、スパーズの可変型プレッシングについて説明していこう。

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 これまでのスパーズは、アリとケインが前に並んだ4-4-2の守備ベースを採用していたが、この試合は4-1-2-3のような配置だった。両ウィングのルーカス、ソンとケインがウルヴスのスリーバックを牽制し、シソコが1つ上がってIH気味のポジションでジョアン・モウチーニョ番を任されていた。アリもIHのような位置でネヴェスを見ながらプレーをし、ダイアーがアンカー気味で後方で構えるという布陣だ。
 この配置から、「前からしっかりハメていく」という強い意志を感じられたが、ウルヴスにとってはどうってこと無かった。むしろ、好都合と言えただろう。
 スリーバックからスタートするビルドアップが詰まっても、GKのルイ・パトリシオを経由し、スリーバックがピッチの幅一杯に開いて受け直せば良いだけで有り、相手が中途半端な立ち位置になれば、楔をどんどん供給していた。その時、使っていたのが、中盤で構えたダイアーの両脇である。

絞って開いてよーいドン

 トッテナムの前線がマンツーマン気味のディフェンスに対し、ウルヴスは後方で組み立てる際、前線の選手がフリーな場所を見つけながら、流動的にポジションを入れ替え、応戦していた。その中でウルヴスは2つのターゲットを中心に狙っていたと思われる。その結果、トッテナムのディフェンスを撹乱することに成功した。

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 ウルヴスが狙った1つ目のターゲットは、「ダイアーの両脇」だった。まず前提として、トッテナムが前から奪いに行こうとするものの、パスコースを限定することが出来ていなかったということが挙げられる。その結果、意図も簡単に縦へとボールを付けることが出来ていたのだが、そこを上手く突いていたのが、ジョタとドナーティーである。
 ジョタがダイアーの脇に下がって受ければ、ドナーティーも内側に位置取るような動きを見せていた。トッテナムはこの2人を終始捕まえきれず、サイドに経由されたり、スピードアップした選手を止めることが出来なかった。そのままズルズルと押し込まれる展開になっていき、シュートの雨霰を浴びることとなる。
 そして、2つ目のターゲットが「ヤンが構える左サイド」だった。
 今のウルヴスのストロングポイントは間違い無く右サイドだ。試合を通して、ドナーティが内側に入り、トラオレは自然と外に押し出され、タッチライン際でボールを受けることが多かった。そこから、ヤンとの1on1に持ち込み、ポケモントレーナー並に何度も勝負をしかけていた。
 フットボールはフットボールでも、別のフットボールプレーヤーのような肉体と、圧倒的なスピードを兼ね備えるトラオレは何度も大外を疾走。その姿はまるで、ラグビーのウイングプレーヤーのようであった。
 そんな、スピード1番!の選手に対し、サイズが売りのヤンが「よーいドン」の勝負に持ち込まれたら、明らかに分が悪い。なんとか対応しきるシーンは見られたが、基本的には振り回され続け、クロスまで運ばれていた。

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 この日のウルヴスの右サイドからの攻撃は43%で1番多い数字を叩き出しており、やはりトッテナムの左サイドが集中砲火を受けていたことが数字でも分かる。(まぁオーリエのサイドも、ジョニーとジョタの入れ替えで振り回せれていたが…。)

越えられない5バックとカウンター

 続いてトッテナムの攻撃が上手くいかなかったことについて解説する。
 ウルヴスの守備配置は5-4-1。WBがスリーバックに吸収されブロックを形勢する形だ。
 一方、トッテナムのボール保持の配置は、左右非対称の3-4-3である。これについては前のnoteで詳しく書いたので読んでいただきたい。

 このウルヴスとトッテナムの配置を噛み合わせてみると

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 このような布陣となる。

 普段はハーフスペースでフリーになることが多い、アリとルーカスにはウルブスのストッパーであるデントンケルとサイスが対応していた。

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 試合を通して、アリとルカースに楔が入るようシーンはあったが、トラップした瞬間に後ろからガツンと身体をぶつけられ、なかなか前を向かせて貰えない。しかも、前を向かせ無い所か持ち場を離れてまでボールを奪いに行こうとしていた。更にトッテナムの攻撃のオプションでもある、トビーによるサイドチェンジも想定の範疇であった。幅を取るソニーとオーリエもウルヴスのWBのマークに遭い、フリーで裏へと抜け出すシーンはあまり見られなかった。
 そのため、後半に入ってからは攻撃の形を模索していたのだ。
 そんなトッテナムに対し、ボールを奪ってから、素早いトランジションでゴールに向かうのは、ウルヴスのお得意なパターン。このカウンターで何度もゴールを脅かされ続けた。試合を見ている身からすると、心臓が幾つあっても足りなかったと言える。実際、失点シーンもルーカスがロストしてからのカウンターだった。DFはズルズルと下がりながら対応し、最後はこの日大活躍のトラオレに強烈なシュートを叩き込まれた。

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 幸先良く先制点を奪ったシーンは、ルーカスの個人技にウルヴスのDF陣が圧倒されていたが、時間が経つに連れ、思うように仕事をさせていなかったのは流石の一言である。
 トッテナムとしては、こうなる展開になるとかなり厳しかった。試合を通して、この守備網をかいくぐるプランが見られなかったのが残念である。

まとめ

 次のプランを見出せず、後半44分にルーカスを下げてエリクセンを投入。するとわずか2分後に、彼のコーナーキックをフェルトンゲンがフリーで合わせて勝ち越しに成功した。

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 友達と通話しながら試合を見ていた筆者は、この劇的ゴールに発狂。恐らく、友人の鼓膜にまで響くぐら大きな声を出していたと思う(本当にごめんなさい)。
 筆者が喜ぶのもそのはずだ。上記でも書いたように、この試合は紛れもなくウルヴスのゲームであった。先制点を奪われ、出鼻を挫かれるも、相手のウィークポイントを狙い続け、後半の半ばで同点に追いつく。後は逆転するだけだったが、この日与えた2本目のコーナキックで勝ち越しを許したのだ。
 そういった意味では、トッテナムが「強さ」を見せたと言っても良いのかもしれない。得点時と試合終了時に、普段は冷静沈着なモウリーニョが喜びを爆発をさせたのを見ると、「この勝利の価値」が十分に伝わってくる。
 こういう難しい試合を制してこそ、ビッグ6に入るクラブといったところだろう。

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 この勝利で、トッテナムは5位にまで順位を上げた。次節は4位チェルシーと再び直接対決だ。モウリーニョにとっては古巣との一戦。さらに、現在チェルシーで指揮を執っているのは、当時の教え子であるフランク・ランパードだ。
 古くからプレミアリーグを見ている人にとっては、思わず「エモい」というワードを発してしまうくらい胸熱な勝負となりそうだ。そんな師弟対決は、どちらに軍配が上がるのか。次の試合も目が離せない。

COYS!!!

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