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ジョゼ・スパーズは何処まで行く?

 11月20日。まさかの出来事が起こった。昨シーズン、チームをCL決勝まで導いた指揮官、マウリシオ・ポチェッティーノの電撃解任が発表されたのだ。
 今シーズンのスパーズは、ジャッククラークを含む4選手を新たに補強。開幕戦は、新顔であるエンドンベレにゴールが生まれ、3-1で見事勝利。まさに順風満帆な船出を切ったかのように思えた。


 だが、昨シーズン終盤から続く「勝負弱さ」は今年も随所に見られた。リーグ戦12試合を消化し3勝5分4敗と勝ち星を伸ばせず低迷。主将であるウーゴ・ロリスを初めとする主力も怪我で離脱した。さらにCLでは、ドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンに2-7で大敗するなどチーム状況は不振に陥った。
 元指揮官は「クラブをいきなり短期間で急成長できることはできないし、時間を短縮することもできない」と語り続け、時間を要する発言をしていたが、これに我慢ができなくなったのはクラブ側だった。レヴィ会長が「苦渋の決断」と表現したように、これまでチームを築き上げた功労者を”解任”という最悪な形で別れを告げることとなったのだ。

 そんな中、クラブが新たに指揮官として招聘したのが、”スペシャル・ワン”こと、ジョゼ・モウリーニョであった。かつて、同じロンドン市内の強豪であるチェルシーや、名門マンチェスターユナイテッドの指揮を務めた経歴を持つ。チェルシー時代は8つのタイトルをクラブにもたらした男がスパーズ再建のミッションを任されたのだ。

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 モウリーニョは、これまでリールのコーチングスタッフとして働いていた、ヌノ・サントスとジョアン・サクラメントを引き抜いた。これでスタッフ陣営は整い、後は選手をどう起用するか。そんな中行なわれた、ウェストハムとのロンドンダービーは多くのサッカーファンが注目した試合となった。

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 多くのファンが見守る中で、モウリーニョが抜擢した11人はこのメンバーだった。フォーメーションは前節のシェフィールド戦と同じ4-2-3-1だが、大きく変わった所は、ボランチのコンビであった。前節は、CBで出場したエリック・ダイアーが一列前のポジションで起用。また、推進力のあるムサ・シソコで無く、技巧派かつ中盤でリズムを作れるハリー・ウィンクスを抜擢した。

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 前半からボールを握り試合をコントロールしたのはアウェイのスパーズ。デイビスがCBと並んでビルドアップに参加し、オーリエとソンフンミンが幅を取る「非対称」の形で攻撃を組み立てた。
 スパーズのビルドアップ隊が3人いるのに対し、ウェストハムも同数で奪いに行こうとするが、前にプレスをかければ、ウィンクスとダイアーにボールを繋がれる。かといって、中央を蓋すればサイドを経由されてしまう。実際、幅の選手を気にした結果、縦にボールを入れることができるシーンは多く見られた。この結果、スパーズは押し込み続け前半2点のリードを奪って見せた。

 後半に入りカウンターからエースケインのゴールも生まれ3点とリードを広げた。しかし、今シーズンとの課題とも言える試合の締め方の悪さは見られた。終盤3回ネットを揺らされ、その内の1回はオフサイドでノーゴールになったもののウェストハムの逆襲を受ける形となった。この部分の改善は、モウリーニョの手腕に託されるはずだ。

 かつて「戦術家」と謳われた男の腕前は伊達ではなかった。ポチェが率いていた時に比べ、選手の役割が明確化されたようにも見える。それが、あのビルドアップの配置一つでそう見えるのだから、本当に対したものだと感じた。
 また、現有戦力やアカデミーから上がってきた選手に対して辛辣な態度を貫くのが、かつてのモウリーニョであった。だがそんな彼が「今の戦力にとても満足している」と語るのだから、これは驚き意外の何物でも無い。
 そして、明日にはCLの舞台にモウリーニョが返り咲くこととなる。勝てばグループステージ突破が決まる大切なこの試合で、ホームのサポーターの前でモウリーニョがお披露目となる。ジョゼ・スパーズは何処まで行くのか。今後に目が離せない。

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余談

 今回、久々にスパーズの記事を書いたのだが、まさか、久々に書く内容が「モウリーニョがスパーズの指揮官に!」とは夢にも思ってなかった。

 ぶっちゃけたことを言うが筆者は、あまりモウリーニョのことを好意的に思ってない。むしろ、苦手な部類に入るタイプである。ここまで大きく評価することを書いて何を言うとと思われるが、過去にあったような「大人気ない」ことや、「悪者役に徹するような働き」は一切好ましく思ってなかった。
 また、筆者はポチェッティーノ信者でもあり、「彼に限界がある」のではなく、「チームの現有戦力に限界がある」と考えていた。そのため、チームの新たな監督としてスパーズに来ることも快く思ってない部分はあった。

 ただ、初陣を見て心が動いたのも事実。停滞感が募っていたビルドアップの部分をアレだけ整理出来たのだ。ウェストハムが酷かったと言われればそれまでなのだが、まだこのチームは始動したばかりである。相手に応じてフレキシブルに戦えるようになれば、チームの再建は目指せる。全ては彼の腕にかかっているため、これ以上は強く言えない立場だ。

 ここから大事な連戦が続く。オリンピアコス戦の後は、ボーンマスとの直接対決があり、そこから中3日でマンチェスターユナイテッドとの一戦。モウリーニョにとっては、約1年振りのオールド・トラフォードでの試合だ。
良くも悪くも我々のスパーズファンにとって、今の指揮官はモウリーニョなのは変わらない。彼が率いるチームが何処まで行くのか。見届けて行こうと思う。

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