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「価値の定義」を知りたくて。学び直しの大学院進学と起業を通して見つけたサービスデザイナーとしての未来〜High Standard Interview #14〜

社内の新しい取り組みとして始まった「マイ・ハイスタンダード」。これは困難な状況下でも、高いクオリティやマインドセットを保ちながらリーダーシップを発揮したメンバーや事例を全社に紹介する取り組みです。
四半期ごとに各事業部のマネージャーからの推薦を集め、CEOを交えた会議を通じて数名が選出されています。第4回目(2022年4月-6月選出)は、3名のメンバーが表彰されました。

彼、彼女らがどのようなマインドで日々業務に取り組んでいるのか。High Standard Interviewシリーズとして「ハイスタンダード=高い基準」の源流にあるものを深掘りしていきます。
前回の関口さんに続いて登場するのは、Workspace事業においてworkhubの導入プロジェクトを推進する他、顧客体験の追求に取り組むカスタマーエクスペリエンスチーム(以下、CX)の藤丸さんです。

藤丸 紘樹(3rd Place Project/Enterprise CX-A)

金沢工業大学卒業後、新卒で専門商社へ入社。その後、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科に入学し、サービスデザインの分野をテーマに研究。「価値の定義」を軸にした事業の継続性に関する研究内容を実践すべく、自らも地方創生コンサルティングを事業化し、のちに譲渡。株式会社富士通北陸システムズ(2021年に吸収合併し、現・富士通株式会社)では大手クラウドサービスのプリセールスなどを担当。ビットキーではWorkspace事業の大型案件を中心に、ユニットリーダーとして、workhubの導入前後のサポートに従事。難易度の高いコワーキングオフィス案件でのworkhub導入プロジェクトを完遂し、今回の「マイ・ハイスタンダード」として選出・表彰された。

大学院での学びと自身の価値観にマッチした場所

── 藤丸さんの入社前の経歴を教えてください。

大学卒業後、新卒でアパレルなどを扱う専門商社に入社しました。
実はその後、専門商社を退職し、大学院に進学しています。大学院では研究内容を軸に学友らと起業も経験しました。卒業後は富士通北陸システムズ(当時)を経て、ビットキーと出会ったという流れです。

── 社会人経験を経てから、大学院に入学。学び直すという決断をしたのはなぜでしょうか?

専門商社では古着も扱っていたのですが、「なぜブランドや時期でモノの価値が変わるんだろう?」と不思議に思ったことがきっかけでした。その理由を当時の同僚たちに聞いてみましたが、誰も説明できなかったんですよね。モノの価値の定義を知りたい、学術的に学びたい、という気持ちが日に日に強くなって、大学院に進学することにしたんです。

── 会社を辞めてでも学ぶことを選んだわけですね。

そうですね。この行動は僕の性格的特徴も影響していると思います。振り返ってみれば、昔から好奇心旺盛で、幼少期の頃は図鑑を読んで調べるのが大好きな子どもでした。納得がいくまで追求したいという、ある種凝り性というか、知識欲が強いところがあります。
大学院に進学してからは、アルバイトと課題で日々いっぱいいっぱいだったので、睡眠時間を削りながら頑張りました(笑)。

── 大学院では「価値の定義」をどう学ばれましたか?

価値は受け取り手であるお客様の評価によって決定される、と学びました。サービスや製品の提供側は価値の提案しかできず、「受け取り側に決定権がある」ということです。
例えば、高級ブランドの製品は品質やストーリーをユーザーに伝え、製品を受け取った時の体験をイメージさせます。その体験がユーザーにとって金額を払うほど価値があるのならば購入に至ります。

ユーザーに「価値がある」と評価させるように体験を設計して、継続的に提供するための事業体制や運用を構築することは、サービスデザインと呼ばれる分野の考え方です。

── なるほど。大学院ではサービスデザインの研究をもとに起業も経験されたのですね。

はい。地域の農作物を荒らす害獣問題を解決すべく、今ほどジャンルが確立されていない「ジビエ」のブランド化に取り組みました。
もともとサービスデザインは地域課題、地方創生の手法として相性が良いと言われています。そこから、地域の課題や資産を掘り起こし、体験を設計し、事業化する、というサービスデザインの実践ケースとして当時取り組みました。

ポテンシャルのある事業でしたが、当時は自分のビジネススキルやITスキルが及ばず、結果として事業譲渡に至りました。0→1はできたのですが、1→10や10→100にする能力を僕は持ち合わせてなかったんですね。
その後、富士通北陸システムズに入社したのは、システムやオペレーションを自分自身で設計できるようになりたかったからです。自身の不足した部分を強化できる環境だと思いました。

── そこからなぜビットキーに入社したのでしょうか?

前職の同僚は優秀な人ばかりでしたが、大手企業のグループ会社ということもあって、自社でのビジネス開発ができないところがネックでした。自社で市場にインパクトを与えられるような、社会的に意義がある製品の事業開発に携わりたいという思いが強くなって。
ちょうどそのタイミングでビットキーからスカウトのメッセージをいただき、面談に臨みました。面談では、自分が重要視していた価値観に共鳴するようなことを言われて驚きました。

── 何があったのでしょうか?

先程も話した起業時に、「中小企業をコネクトして、大企業と同等に市場インパクトのあるサービスを作りたい」ということを目標に掲げて活動していたんですね。そうしたら、ビットキーのミッションが「テクノロジーの力で、あらゆるものを安全で便利で気持ちよく『つなげる』」だと言うんです。「コネクトする、共創する」という点でミッションが似ている!と思い、驚きを隠せませんでした。

さらに、僕が学んでいたサービスデザインは「価値」を基準に事業を作っていくというもの。ビットキーも「価値」がすべての源流にあると聞いて、本当に自分の大事にしていることに近しいなと感じました。
大切にしている価値観がここまでマッチしたら、きっと仕事も楽しいだろう。そう思って、入社を決めました。

── 実際に入社してみていかがですか?

大変なことはたくさんありましたが、総じてすごく面白いですね。社員全員が企画職のように製品や事業のアイデアを出し合って、実践するところまで任せてもらっている。このカルチャーが自分の肌に合うなと思っています。

お客様の目線に立つために、実際にコワーキングオフィスで接客も

── 現在はどういったお仕事を担当していますか?

Workspace事業でworkhub導入に関する新規プロジェクトの立ち上げや、workhub導入の前後におけるサポートを一貫して担当しています。一般的に「3rd place」と呼ばれる、自宅でもオフィスでもない「第三の場所」へworkhubを導入するユニットリーダーを任せてもらっています。

── 今回、ハイスタンダードとして選出されましたが、どういった点が評価されたのでしょうか?

新規性が高く大規模なコワーキングオフィスへの導入を、開発期日までに無事に完了させたという点を評価いただいたようです。
今回のプロジェクトでは複雑な決済サイクルに耐えうるシステムの導入が必要でした。そこで、会計や経理を猛勉強してニーズを拾い上げ、施設運用に必要なお客様側の業務フローをとにかくドキュメント化していきました。

── どんなことを大切にして業務に取り組みましたか?

「これで本当に稼働するのか?」と疑う姿勢です。前職で学んだ、「自身が提供するシステムは誰よりも自身が信用してはいけない」という考えを忘れず、可能な限り不具合要因を取り除くよう努めました。私が担う領域は幅広いですが、お客様と直接的に接するポジションでもあるため、「顧客体験を保証する」「最後の砦となる」意識が大事だと思っています。業務フローを洗い出した結果、その数は550個にも及びました。

── 550個もですか。

はい。プロジェクトの見えないところをなくすのがCXの仕事なので、徹底しました。すべて可視化した結果、この期日では無理だ、となったこともありましたね。

── 無理なスケジュールだと判明したとき、どのような行動に移すのですか?

まずはプロダクトチームに相談します。前提としてプロダクトチームは常に柔軟に動いてくれますが、どうしても厳しいときはやはりあります。
その際は、現実ラインを出した上で、お客様に相談をします。相談の結果、どうしても間に合わせてほしいとなれば、社内リソースを確保できないか経営陣に相談するといった流れです。そういった形で、感覚的に「できます」と言ってなんとなくプロジェクトを進めるのではなく、お客様との約束を果たせるように先手を打って行動していきます。

── なるほど、タスクから逆算してプロジェクト進行をすると。しかし、どうやってそこまでの数のタスクを可視化できたのでしょうか?

お客様への丁寧なヒアリングももちろん大事ですが、なによりも同じ目線に立つようにしました。コワーキングオフィスを運営されている事業者さんは登場人物が多いんです。コワーキングオフィスを自社運用するとなれば、法人側だけでも事業主・バックオフィス・現場の運営担当が存在します。それぞれの立場によって捉える「価値」は違うので、自ら体験しなくては深く理解することは不可能です。

例えば、事業主であれば複数の施設運用ができる分断されていない単一システムであるため、「管理コストの低さ」つまり「安さ」に価値が置かれています。バックオフィスから見てみると、システムが分断されていないことで売上の算出から請求生成まで一括でできるといった「運用コストの低さ」が重要なんです。要するに「早さ」に価値があるんですね。
また、現場の運営担当にとっては、セキュリティ管理、会員管理、契約管理などが1つのシステムで賄えるため「運用が楽」という点に価値があったりします。さらにエンドユーザーは、システム上の操作だけで施設を利用できるため、有人による毎回の面倒な手続きが不要なため「早くて、楽」が価値だったりするんです。

運営ご担当者さんが行う会員様の接客を経験すべく、何度も現場へ足を運びましたね。「ここが使いづらいです」と直接言ってもらって、それをメモしたり。同じ目線で動いてみることは、「エスノグラフィ」というサービスデザインでよく用いられている潜入調査方法でもあります。

便利以上の価値を届けられる、サービスデザイナーになりたい

── workhubの導入担当として、日頃から何を心がけていますか?

workhubをご利用されるすべての方の体験が、より便利で気持ちのよいものになるのかを常に意識することです。物理的な移動の導線や、workhub画面のクリック数、画面の見やすさなど、自分の脳内に細やかにイメージできるまで考え抜くようにしています。

大学院の研究で学んだことですが、価値とはシステム提供側である我々が定義できるものではないんです。我々は価値につながる提案ができるだけであって、「価値がある」と定義するのは、その体験の受け手側だけ。価値を感じていただくために僕ができるのは、ひたすら体験性を高めていくことなんです。

── より良い体験を提供することが、ユーザーの価値につながっていくと。今後workhubをどのようにアップデートしていきたいと考えていますか?

「便利」以上の価値を届けられるようにしたいですね。現在のworkhubは、業務がしやすくなったり、使いやすくなったり、日々の体験を向上させるにとどまっています。でも本当は、業務自体をなくすとか、全然違う業務にするとか、「感動」を与えるところまでいきたいんです。

一例ですが固定電話があった時代には、文書を送るためのソリューションとしてFAXという機能がありました。でも、今はほとんどがメールに置き換わっていますよね。こうでなくてはならない、というような固定概念をなくす。当たり前を変える。そういったことがビットキーで実現できたらと思っています。

そもそもビットキーで提供する「体験」は、新規性の強いプロダクト開発が伴います。ほとんどの企業では、システム導入する際に、不具合が少ないことや使い勝手、安全性などを検証する「システム品質評価」を行いますが、ビットキーのプロダクトは、世の中にあるシステム品質評価に全く当てはまらないことがあるんです。そこが面白いところでもある。
表面上必要な機能を提供するのではなく、お客様が真に実現したいこと、「本当はこうなってほしい」という想像を叶えられるプロダクトを提供したいです。ビットキーの提供する体験なら、驚きと感動を与えられるはずです。

── 藤丸さんの今後のキャリアプランを教えてください。

将来的に目指したいと思っているのは、ビットキーにおける「サービスデザイナー」です。サービスデザイナーとは、お客様に理想的な体験を提供するために事業設計ができる人のこと。現在の仕事の延長線上にあるポジションかなと思っています。
僕自身、「感動を与えるほどの体験を作りたい」という思いが強い人間です。Workspace領域に限定した考えは特にないので、タイミングがきたらビットキーが手がけるあらゆる体験に携わっていけたらと思っています。

現在、プロとしてサービスデザイナーを担う人は世の中に多くはいません。なぜなら「体験」の提供を第一優先にした組織づくりをしている企業は世の中にあまりないからです。しかし、ビットキーは「体験」を主眼に置いている会社なので、「プロのサービスデザイナー」を体現できると思っています。大事にしたい価値観や大学院での学びを思う存分生かしながら、自分らしい活躍ができたら嬉しいです。

◆編集部より

今回のインタビューは、驚きの連続でした。なぜなら、藤丸さんの「学び直しで大学院へ」「起業と事業譲渡を経験」という、独自でありながら稀有なご経歴に初めて触れたからです。同じ会社で働く同僚ではあるものの、チームや担当領域が異なるため、日常でのコミュニケーションだけではもしかしたらここまでは知り得なかったかもしれません。普段から前向きなエネルギーが溢れる藤丸さんですが、その根源にあるのは、好奇心を軸に多くの学びと経験を積んで来られたから故のしなやかさなのだと思わず膝を打つインタビューでした。ビットキーというフィールドで、藤丸さんが追求される「価値」がどんな輝きを放つのか、ますます目が離せなくなりそうです。

※このページの情報は掲載日時点のものです。

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構成・編集 / 写真 / 図 ビットキーnote編集部
取材・執筆 早坂みさと

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