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セリエA 第38節 フィオレンティーナ vs ユベントス 〜テストの結果は?


セリエA最終節、フィオレンティーナとのアウェーマッチは0-2でフィオレンティーナの勝利。ユベントスは既に来季のCL出場権を手にしていたので、さまざまな意味合いのテストをしていたように思います。また、フィオレンティーナとしてもカンファレンスリーグの出場権を獲得することになり、久しぶりにヨーロッパの舞台に返り咲くことになりました。この試合のユベントスの動向とテストについて考えてみたいと思います。

ユベントスのテスト?

ユベントスの先発は、ペリン、デリフト、ボヌッチ、キエッリーニ、サンドロ、ベルナルデスキ、ミレッティ、ロカテッリ、ラビオ、ディバラ、ケーン。
どんな結果でも4位という順位は入れ替わらない状況だったため、フィオレンティーナ戦には様々な意味合いやテストを盛り込んできていたんだろうなと思いました。具体的には、キエッリーニ、ディバラ、ベルナルデスキについては今季限りで退団するもしくは退団濃厚であることから最終戦での出場機会を与えようという意図が見えました。ペリンにはリーグ戦での出場機会が少なかったところを補う形だったのではないでしょうか。ロカテッリとマッケニーは負傷明けのところに少しでも試合に出して実際のゲームで調整しようというところだろうと思います。ミレッティとアケは試合経験を積ませるという意味と、来季トップチームに残すのか、レンタルで経験を積ませるのかといったところの見極めの意味もあったかもしれません。ケーン、サンドロ、ルガーニは来季に向けてチームに残すのか、移籍させるのかという点を見極めるテストとなる試合になっていたのではないでしょうか。もしかしたら、ラビオとベルナルデスキも移籍候補としてのテストの対象だったかもしれません。

個人的には、ケーンとサンドロはテストには合格しなかったと見ています。ケーンについては、ユベントスのラインが低すぎて孤立していたという悪条件があったとはいえ、高いフィオレンティーナのディフェンスラインの裏を狙う動きもなく、目立った働きを見せることはできませんでした。かといって守備で貢献しているわけでもなく、レンタル移籍の期間延長や完全移籍はおそらくないでしょう。モラタの離脱などフォワードの数が足りなくなるケースでは残留もあるかもしれませんが。サンドロは攻撃性能でペッレグリーニ、デシーリオに上を行かれ、安定性を求められる守備面でも不調が続いていました。年齢からくるフィジカルの衰えの影響もあるでしょう。守備対応でも後手を踏んでピンチを招いてしまうことも何度もありました。適正な移籍金の提示があれば放出を認めるという記事もありましたが、納得の判断だと思います。ベルナルデスキについても、ドリブルでボールを運ぶ力は依然として素晴らしいものを持っていますが、パスの判断や周囲との連携の悪さも目立ってしまっており、契約延長をするなら減俸もやむなしといったところでしょう。ラビオについては、ケガなく試合に出続けたという一点において、少なくとも中盤の頼れるバックアッパーとしてチームに残しておく意味があると思います。

また、デリフトが右SBとして出場していましたが、ダニーロもケガが多くなっていることから右サイドバック兼3バックの右CBという、今季ダニーロが担っていた役割を試したのかもしれません。ただ、デリフトはCBの軸になる選手だと思っていたので、デリフトを SBに使っても真ん中を任せられる実力派のCB獲得が迫っているのかもしれません。

ライン下がりすぎ問題

さて、ユベントスはフィオレンティーナ相手にほぼ何もできずに敗れたわけですが、その原因はどこにあったのでしょうか。単純な話でディフェンスラインが下がりすぎ、チーム全体が低い位置に留まっていたからです。しかもポジティブトランジションでも動き出しが鈍く、ベルナルデスキやディバラがボールを受けても誰も上がってこない始末。点を取る気がありませんとでも言わんばかりの姿勢で、シーズン当初の状態に戻ってしまったかのようでした。その分フィオレンティーナも前がかりになっているのだから、ケーンあたりが一発裏を狙っても面白かったと思いますが、そんなシーンは見られず…。手厳しいスポーツ紙であれば、「動けないロートルは去れ」くらいは書いても不思議ではないほどに低いレベルのトランジションを見せてしまっていました。

また、ライン下がりすぎ問題は失点にも絡んできており、来季に向けて喫緊の課題となるでしょう。失点した場面では、クロスのクリアのこぼれ球を押し込まれた形になりましたが、その前にアンカーの選手にフリーでクロスを上げられたところに問題があるかもしれません。ロカテッリがマークにつくはずですが、距離が離れすぎていてマークにつききれませんでした。しかし、フィオレンティーナのアンカーの選手がポジションを取っていたのがハーフウェーラインから10m程度ユベントス陣内に入ったところでした。一方、ユベントスのディフェンスラインはペナルティエリア内にあり、中盤でミレッティとダブルボランチを組むロカテッリはディフェンスラインに合わせてペナルティエリアのすぐ外まで下がっていました。その状況下でハーフウェーライン付近まで下がって行った選手にマークにつくのは難しいでしょう。ディバラかケーンがマークについて然るべきだったかもしれません。ユベントスとしてはあの位置からクロスを上げられても対応できるという判断なのだろうと思いますが、クリアミスや味方や敵に当たってクリアボールが溢れることはあります。ユベントスの守備ブロックの位置を見て、マークに付かれない位置まで下がって精度の高いボールを入れたフィオレンティーナの上手さが出たシーンだったと思います。

来季に向けて

最低限の目標であるCL出場権を獲得することはできたものの、無冠でシーズンを終えたこともまた事実。厳しい結果をしっかりと受け止めて来季に向けた準備を進めていかなければなりません。2〜3月にかけて攻守の形を定めて行っていたところだったかと思いますが、キーマンだったロカテッリのケガで4月以降はまた形を変えなければいけなくなるなど、落ち着いてチームを構築する時間がなかった点は考慮すべきでしょう。特に中盤にケガ人が続出したことによってチームマネジメントはかなり難しくなったと思います。しかし、16-17シーズンでも4-2-3-1がうまく回っている中で変則的3-4-3を取り入れるなどアッレグリはシーズン途中でも方向転換を積極的に取り入れてくる監督です。結果として戦術の方向転換が不発に終わったという見方もできるでしょう。

メルカートに向けて様々な情報が乱れ飛んでいますが、まずは余剰戦力の売却が先決となりそうです。中盤の補強と前線のクオリティアップ、キエッリーニの代役探しなど課題は山積しています。ディマリアと一年契約を結んだという報道がありました。ディバラの代役と見ていいでしょう。前線にクオリティの高い選手を一枚迎え入れることが出来ました。さらに、ミレッティ、アケ、デヴィンターら面白い若手も育ってきています。現有戦力を鍛えつつ、必要なポイントに移籍で補強するという方向性がベストだと思います。今年のメルカートの情報も楽しみにしています。

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