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「蝶か蛾か」


©️billy


 熱にうなされて目覚める、踊ることができなくなった夢を見たんだ、それは羽根をもがれて地を這う蝶か蛾か、どちらにも見えたけれど、どちらでもない。

〝羽根がなければ蝶も蛾も大差はない〟

 そう、以外かどうかは別にして、私たちは蛾を嫌い蝶を好む、薄汚なきと儚き美をそこに照らし合わせる、そうだろうか、そうも違うものだろうか、少なくともその二種は私たちヒトよりずっと純粋で動物的だ、間違いなくヒトより美しいものだ、なぜそれが分からないのだろう?

 唖々、そして自らを美化することにだけは長けてしまった不様な生き物が眠い眼をこすりながら俯き加減にとぼとぼと何処かへ向かう、マンションの最上階からそれを見ている私は役にも立たない神の視座にて、「頑張っている」ヒトを見下ろす。いつもよりも苦く感じるタバコの味が、妙に朝の乾燥した空に合う。

 この瞬間も美しく優しくもあり、誰からも恨みを買わなかった聖人が殺されてしまったのだろう、ニュースはそんなのが大好きだ。
 バイバイ、ここから消えゆくヒトたちよ、私はここから貴女たちに煙を吐いて地上から追い出してあげるよ、この世界でいちばん美しくて役に立たない、最低限のヒトとして。

 さあ、早く夜を用意して。 
 用があるのは楽しいことだけ、楽しくないことに興味なんてないわ、ワクワクドキドキするスリル、それ以外はどうでもいいの。

artwork and words by billy.

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