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EX帰寮の空気は人をメンヘラにする

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どうもこんにちは。びらきちと申します。
この記事は、エクストリーム帰寮 Advent Calender 2021の8日目の記事です。

エクストリーム帰寮とは、ぽとんと落とされた場所から、地図なし・財布なし・ヒッチハイクなしで京都大学の学生寮である熊野寮への生還を目指す、熊野寮祭の定番となりつつある企画です。

そんなエクストリーム帰寮、私は相棒のわーつと50キロコースに挑戦しました。最後の帰寮出発者として、琵琶湖の離島・沖島に飛ばされた組です。まあでもせっかくなので、今回はツイートしていない帰寮中の一幕をお届けしようかなと思います。

ちなみに、相棒であるわーつの記事は12月24日に公開されます。さらにこれとは別で帰寮の備忘録としてnoteを書いているので、お暇な方はこれも見ていただけると嬉しいです。それでは。

2021年11月27日、午後14時に、ようやく徒歩での帰寮がスタート。観光に来ていた方のご好意で沖島を脱出することができた我々は、山を抜けるまでに暴風雨に見舞われたり、15分ごとに雨と晴れが繰り返す琵琶湖沿岸の天気に翻弄されたりしながらも、そこそこ良いペースで歩き続けてきた。中間ポイントの琵琶湖大橋を通過し、草津イオンも過ぎれば、ようやく滋賀県で通過する最後の自治体・大津市に!

ここまでずっと歩いてきた琵琶湖沿岸のサイクリングロード、さざなみ街道は、サイクリングコースのくせに足元が良くなく、街灯もゼロというおしまい仕様であった。車怖いけど、チャリでビワイチするなら車道走る方が快適だと思う。
まあでも、変わらない景色に時々虚無になりながら、徐々に増す足の痛みを感じながらではあるが、なんやかんやこの非日常を楽しく感じる余裕があった。

この大津市、スタートから30キロ地点に至るまでは。

近江大橋を渡り(と思ってたけど近江大橋よりもう少し先の小さな橋だったぽい)、ようやく琵琶湖の西側に至った我々は、日付が変わる頃、ついに琵琶湖に別れを告げた。かれこれ10時間以上、琵琶湖が視界に居座っていたことになる。もうしばらくは見たくない。
それはさておき、京都に繋がる逢坂に向かうため、まずは約5キロ先の京阪のびわ湖浜大津駅を目指す。この5キロのつらいことつらいこと!

まず、寒さ。琵琶湖沿岸にいるときの気温は5度で、歩いていればさほど寒く感じなかったのだが、大津の市街地に入るころから冷え込んできた。体感3度ほどか。降ったり止んだりの雨で、まだ湿っている靴から体温が逃げていく。ここまで快調に飛ばしてきた私の足は、急激に動きが鈍くなっていた。

そして何よりつらかったのが、わーつのスマホにかかってきた、法学部の同期2人からの電話であった。ただの励ましの電話であれば私も元気になっていただろう。一応本人たちもそのつもりであったと思う。ただ、こいつら、完全に酔っ払っていたのである。

びわ湖浜大津を目指し始めてすぐのタイミングで電話をかけてきたこの2人、酔うとかなり面倒。自分にも酒が入ってる状態でウザいのに、30キロ以上歩いて体力限界、凍え切っている極限状態で酔っ払いの相手をする羽目になるなんて。しかもスマホを持っているのはわーつなので、電話の相手が何を言っているのかいまいち聞き取れない。だからもう、私は会話に参加するのを諦めた。ごめん、わーつ。1人で酔っ払い2人の相手をさせてしまって。

当人ら曰く「心配の電話」は、私にとって不快なBGMでしかなかった。

電話越しに響く笑い声が、疲れ切った私の精神までをも疲労させていく。やっと大津の市街地に入って足元は快適なはずなのに、びわ湖浜大津までの道のりが異様に遠く、長く感じる。思わず足を止めてしまいそうになる。

つらい、寒い、つらい。

ここで私は気付く。これまでの道中において私が精神を保てていたのは、わーつとの会話があったからこそなのだと。整備不良の道に愚痴をこぼしたり、ふざけた名前のキャンプ場にツッコミを入れたり。こうした何気ない会話のおかげで、私は気を紛らわせることができていたのだ!

わーつを酔っ払いに奪われ、疲労や歩く行為そのものに集中するしかなくなった状況で、身体以上に精神が参ってしまうのは当然の帰結であったと言えよう。
(1人で30キロ以上の帰寮に挑戦してちゃんと帰ってきている人、マジですごい。精神力どうなってんの)

通話が開始されてから1時間近くが経過していた。スマホからは好き勝手な笑い声が響き続けている。寒い。しんどい。もう無理。もう、限界。


「お願い!私だけを見て!!他の人と話さないで!!!!」


思わず、わーつにそう縋りつきたくなった。その場に座り込んで、もう電話を切ってくれと叫びそうになった。
なんやこれ、メンヘラ彼女か。このような考えに本気で至ってしまったことに、自分でも驚いている。私をよく知る人間はわかるだろうが、私はメンヘラとは程遠い人間だ。人間関係に制限をかける、行動を縛る言動なんかをするような人とはもうさよならバイバイ。
そんな人間が、文脈抜きに見ればメンヘラ彼女のそれでしかない発言をしてしまいかけたのだ。それほど、この30〜35キロ区間が過酷であったのだとご理解していただければ幸いである。

極限状態において、精神的に孤独になると、
人はメンヘラ化する。

これが帰寮で得た学びだ。メンヘラとは一生分かり合えんと思っていた私であるが、もしかしたらメンヘラにとって、恋人と離れていることは、極寒の中30キロ歩くのと同じくらい辛いことなのかもしれない。そうなのだとしたら、なんとしてでも相手を繋ぎ止めようとしてしまう気持ちも分かる、いや、エクストリーム帰寮の極限状態のなかで「分からせ」られた。

メンヘラに、少し、歩み寄れた気がする。

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