後編カバー

NHK 教育とユニバーサルメディアについて本気で考えてみた(後編)

前回の記事では、インクルーシブデザインに関する取り組みの紹介を行いました。今回の記事では、後編として、そこから私達は何に気づき、これからどうしていきたいのかについてご紹介します。

4. プロジェクトをやってみて気付いたこととこれからのこと

障害者と健常者が混在する場の緊張感
これまで何度も場作りを行ってきた僕が今回一番驚いたのは、障害を持つ人と、そうでない人が混在する場の、あまりにも高い緊張感でした。今まで接したことのない人たちと接することへの緊張、なにか言葉を発すると人を傷つけてしまうんじゃないか、自分がどうしていいか分からない、そんな緊張感だったと思います。

障害者を無意識に社会から排除してしまっている構造
「共創」という言葉が、昨今よく使われるようになっていますが、今回のプロジェクトを通して、改めて、「共創」の意味合いについて考えさせられました。今回で言えば、言葉で何かを話しても聞こえない人がいる。ビジュアルで何かを伝えようとしても見えない人がいる。そんな人たちと、どうコミュニケーションを取っていくか。

コミュニケーションは、同質的な人たちだけでコミュニケーションをとったほうが短期的には効率的だし、面倒臭くないのでしょう。でも、その意識が、自分と違う人(今回で言えば、障害者)とのコミュニケーションにかける時間を惜しませて、その場から排除してしまう。それが結果的にサービス提供者の態度にもあらわれるし、社会全体もそうなってしまっている。

つまり、「社会的に特定の人が排除されてしまう」構図とは、それを誰かが望んでいる場合はもちろんですが、多くの場合は無意識にその構造が生まれてしまっているのではないでしょうか。

※ 写真:ポストイットひとつとっても、視覚障害者は読めないし、書けない。

インクルーシブデザインが、「Inclusive(包括的)」である意味

したがって、インクルーシブデザインの本質とは、アウトプットとしての成果物(Product / Service)が、多くの人が使えるようになるものになっているという意味合いと同時に、先程の構造自体を生まないようにするために、あえて手間ひまのかかる「共創」をしていくことにあるのだろうと思います。

つまり、プロセスをともにしない限り、アウトプットだけでは、本当の意味での「インクルーシブ」は達成できないのかもしれません。

※ 写真:音でコミュニケーションがとれなくとも聴覚障害者と企画を詰めていく

障害者という極端なユーザーから発想するアイディアの可能性

今回、最終的に8つのアイディアが出ましたが、「障害者」という極端なニーズから発想したアイディアは、「障害者」の枠を飛び出たものになりました。

例えば、聴覚障害者は音が聞こえないため、音ではなく振動でコミュニケーションが取れないかというアイディアは、実は、言語理解レベルがまだ高くない子どもたちにも使えるアプリケーションになったり。

また、弱視の人はスローな動きならば目でその動きを追えるため、むしろ「圧倒的にスローであること」を強みにできないかというアイディアは、健常者が楽しめるだけでなく、高齢者でも使えるコンテンツになったり。

視覚障害、聴覚障害に関わらず、障害を持っている方たちのニーズは、子供や高齢者世代の課題を解決するヒントにもなり得ます。

※ 写真:弱視の人が見やすいものは、子供や高齢者にも見やすい可能性が高い

5. BIOTOPE と インクルーシブデザインのこれから

BIOTOPEとして、いや、僕個人として、インクルーシブデザインとは、人も価値観も多様化していく世の中で、次の時代に必要な営みなのだと思いました。世界で分断が叫ばれる中、その先を見出す取り組みと言ってもいいかもしれません。

BIOTOPEはこれから、経営戦略とサービスをつなげ全体をビジョンストーリーとして描いていける強みと、エンジニアリングとデザインの力でアイディアをすぐに形にできるプロトタイピング力、更に多様な人々のリアリティーに触れて企画を進めていくファシリテーション力、これらを駆使して、インクルーシブデザインに関する取り組みを加速していきたいと思っています。

以下は、例えばこんな取り組みにインクルーシブデザインの可能性があるのでは、という、僕たちの仮説です。

地域やまちの新しいビジョンを描き、それを実現するラボコミュニティの推進

例えば、「世界で一番視覚障害者が行きやすい町」があったとしたら。
他にも、LGBT、車椅子の方、聴覚障害者等、多様な人が暮らすまちを目指して、都市開発をしていきたい企業や行政がビジョンを掲げ、興味をもった民間企業やNPO、市民が集まり、皆でそのビジョンを実現していく。そのために関係者が関わり合う場をファシリテートし、プロトタイプや実験を重ねるラボを運営する、そういった営みを形にしていきたいです。

※ BIOTOPE の参考事例:TOKYU CORPORATION  社とのデザイン思考による都市開発ビジョン策定プロジェクト

障害を持った人たちのサポートを行うNPOなどによる、プロダクト開発

NPOの世界で経営をされている方々は、当事者の課題やニーズを一番よく知っていて様々な取り組みをされているにも関わらず、プロダクトとなると企画まで手がかけられない、という状況にある場合も多いです。NPOの皆さんが持っている知見を活かし、潜在ニーズのあぶり出しから具体的なプロダクト企画への落とし込みまでを、ご一緒できたら嬉しいです。

※ BIOTOPE の参考事例:PENTEL 社との次世代のスマート文具開発プロジェクト

介護施設、障害者施設、病院などにおける、あたらしい体験のデザイン

障害に限らず、様々なハンディキャップを抱える人達が過ごす空間。どうやったらサービス提供者側も、受給者側も、皆にとってより良いものにできるだろうか。そんな悩みをお持ちの方と、施設での体験デザインはもちろん、全体のブランディングに取り組みたいです。

上記に限らず、今回いただいた機会から、もっと様々なみなさんとお会いできることを楽しみにしています!

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企業や組織をひとつの生命体ととらえ一人ひとりの妄想や想いに熱を吹き込む”共創型戦略デザインファーム”のBIOTOPEです。 こちらのnoteではスタッフブログとして社内外での取り組みを随時発信していきます。
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