見出し画像

夥しい数でなければ

さぁ電子の皆さん
お仕事の時間です。
はりきっていきましょう。

今日の製作物は「明暗の縞々(しましま)」
スクリーンに美しい縞模様を描くのです。

貴方たちのお仕事は、
スクリーンのしかるべき位置に
エネルギーを供給し
しかるべき位置を光らせ
明暗の縞々の”明”の部分をつくることです。

どの位置を光らせるかは
スリットの支持にしたがってください。

1人ずつ順番に行ってくださいね。
大勢でスリットに押し掛けると
1人ひとりの査定ができませんから。

えぇそうです。
2つのスリットを通った後
強め合う位置ならどこでもかまいません。
ゆめゆめ、”暗”の位置には行かないように。

では始めてください。

・・・

うーん
コイツら、全然言うこと聞かないわね。
今どれくらい行ったかな。
200人はスクリーンに到達したかしら。

”暗”の位置はダメだって言ったでしょ。
縞々だって言ってるでしょう。
ポアソン分布やってる場合じゃないのよ。
そんなランダムな模様じゃなくて
縞々をつくるんだってば。

1,000人・・・5,000人は行ったかしら。
ようやく
ちゃんと言うこと聞く子が増えてきたわね。
いいお仕事してるわ。
あ、相変わらず間違えてる子もいるわね。

自由で、言うこと聞かない子が多いから
夥しい数の子を雇って
たくさんの子に働いてもらわないと
思い通りになんて行かないのよね。
数が多くなると、
指示に従う子も増えるんだけど。
少数精鋭なんて夢のまた夢だわ。

・・・

ピーッ
終了!

40,000人の電子の皆さん
全員お疲れさまでした。
貴方たちのおかげで
美しい明暗の縞々を作ることができました。
報酬は弾みます。

けれども残念なことに
スリットの指示に従ってない子もいました。
最初の方にお仕事した子に
多かったように思います。

特に”暗”の位置に行ってしまった子
報酬は少なくなります。
ご了承ください。

・・・

あれ?
どの子がきちんと指示に従って
どの子が従わなかったのか
もうわからない。

40,000人の電子たちの
見分けが全くつかない・・
みんな同じ顔なんだもの。
困ったわね、査定も成立しないわ。


※画像出典
https://www.hitachi.co.jp/rd/research/materials/quantum/doubleslit/index.html


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?