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カクヤス独自のビジネスモデルに見るリターナブルびんの課題と可能性とは

「なんでも酒やカクヤス」ブランドでおなじみの、飲食店と一般家庭への酒類等の販売を行う株式会社カクヤスでは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指して、リターナブルびんの普及やCO₂排出量削減に向けて積極的な活動を展開しています。
びんリユースのシステムは、多くのプレイヤーが協力し合うことで成り立っています。リターナブルびん製造、充填、販売、回収、洗浄というサイクルの中で、カクヤスでは販売と回収を独自のビジネスモデルで行っています。
私たち日本ガラスびん協会でも、リターナブルびん入り商品の販売のみならず、自社でリターナブルびんの回収まで行っているカクヤスの取り組みに注目し、今夏に開催した『しよう!再使用!リターナブルびんラップチャレンジ』へのご協力をお願いしたところ、快くお引き受けいただきました。
今回は、株式会社カクヤスの取締役の徳村健さん(以降、徳村)と株式会社カクヤスグループのサステナビリティ推進課長の五十川里子さん(以降、五十川)に、リターナブルびんに関する取り組みと想い、さらに取り組みを通して見えてきた課題や可能性について伺いました。


カクヤスグループのサステナビリティ推進課長の五十川里子さん

カクヤスの強みは、直接お客様に商品を届けるビジネスモデル

―カクヤスが取り組まれているサステナビリティ活動について教えてください。

(五十川)
私たちカクヤスグループでは、今年の2月に持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けてマテリアリティ(重点課題)を特定し、優先して取り組んでいくテーマを6つ設定しました。

カクヤスが優先して取り組む6つのテーマ

そのひとつが環境です。カクヤスは配達を商いとしておりますので、温室効果ガス排出量削減への取り組みは使命であると自覚しています。また、お酒や飲料をはじめとした食料品を多く扱っておりますので、容器の資源循環への取り組みも積極的に行っています。

私たちはラストワンマイルと呼んでいますが、当社の拠点からお客様宅の玄関先まですべて自社で配達しています。これは、配達だけでなく、お客様宅から資源を回収できることを意味しており、私たちカクヤスグループの大きな強みだと思っています。

(徳村)
配達から回収まで行うことを私たちは2Way型サービスと呼んでおり、このカクヤス特有の“回収できること”を活かした資源循環の取り組みは、私たちにしかできない強みだと気付いたのです。回収自体は1921年の創業以来、ずっと行ってきたことですが、サステナビリティという視点でとらえた時、回収という業務にかつてない価値が生まれたのです。同時に、回収することの意義を多くのお客様にご理解いただく必要もあると感じ、マテリアリティのひとつに取り上げたのです。

―カクヤスのお客様の、リターナブルびんへの理解や意識はどうでしょうか?

(五十川)
お客様には、リターナブルびんや樽詰商品といったリターナブル容器を認識してもらうこと、さらにリターナブル容器は回収して再使用することで資源循環に貢献できるということを、チラシやwebで説明しています。しかし、リターナブル容器というものがまだまだ浸透していないことに課題を感じています。

私たちのお客様は、飲食店と一般家庭ですが、飲食店では、創業時からの取り組みの中で配達と同時にリターナブル容器の回収をする流れは当たり前になっています。その一方で、一般家庭では、リターナブルびんを返却すると預り金が戻ってくるびんリユースの仕組み自体をご存じない方が多くいらっしゃいます。
また、あるチャリティーイベントでリターナブルびん入りのジュースなどを販売した際には、お子さんはもとより、20代の若い方でも栓抜きの使い方を知らない方がいらっしゃり、衝撃を受けました。
私たちとしてはお酒の文化継承という面でも、リターナブルびん入り商品の販売はこれからも強化していきたいと強く思った出来事でした。

株式会社カクヤスの取締役の徳村健さん

―カクヤスが考えている理想的なサステナビリティの姿とは?

(五十川)
資源循環の領域で申し上げるなら、やはり私たちが販売しているリターナブル容器入りの商品を可能な限り100%回収できるようになることです。「販売して回収する」ことは、カクヤスの原点でもあるので。

―サステナビリティへの取り組みの一環としてLoopにも参画されています

(徳村)
現在、Loopにはさまざまな企業が参画しています。
アメリカのスタートアップ企業であるテラサイクルが立ち上げ、『捨てるという概念を捨てよう』という理念を提唱。商品の入った容器は企業の財産と再定義し、使い終わったらメーカーに返却して再使用する、循環型ショッピングプラットフォームです。

私たちはこの理念に共感すると共に、参画することで日用品などの飲料以外のジャンル、カクヤスがケアできていない部分にも積極的に関わっていきたいと考えました。Loopに参画している、回収可能な容器を積極的に開発しているメーカーや企業とのつながりを築き、容器の洗浄方法や回収しやすい容器など、彼らと一緒に考え、身の回りの商品に回収可能な容器を浸透させていくことで、少しでも循環型社会に貢献していきたいと考えています。

●カクヤスのLoop参画に関するリリースはこちら

予想以上の反響に驚いた
『しよう!再使用!リターナブルびんラップチャレンジ』

―先日ご協力いただいた、SO BLUE ACTIONの一環である『しよう!再使用!リターナブルびんラップチャレンジ』についても教えてください

(五十川)
私たちカクヤスグループでは、チラシの配布やキャンペーンなどでさまざまなアプローチを試みていますが、リーチできるのは自社のお客様に限られています。

これまで、今回の企画の舞台である銭湯に納品に行くことはできても、銭湯を利用するお客様コミュニティにはアプローチできておりませんでした。
私たちが接することができないコミュニティ、特に若い人々がリターナブルびんに対してどのような反応をするのか知りたいと思いましたし、リターナブルびんを知ってもらうために音楽を軸にするという企画の面白さに強く惹かれました。

そして何より、私たちだけが資源循環を訴えるのではなく、同じ想いを持った人々がチームになってびんリユースの文化を再び広げていくことに大きな意義を感じたので、二つ返事で参加を決めました。

●『しよう!再使用!リターナブルびんラップチャレンジに』ついてはこちら


―参加してみた感想を教えてください。

(五十川)
「予想以上にリターナブルびんが返ってきた」というのが正直な感想です。アプローチが面白かったからですかね。銭湯のコミュニティ、特に若い人たちが興味を持つようなラップソングというコンテンツを利用して、リターナブルびんの価値を訴求するという試みは私たちだけでは思いつきません。とても参考になりましたし、今後もこうした取り組みを日本ガラスびん協会さんに期待したいと思いました。

SO BLUE ACTIONでつながり、広がる
循環型社会の実現を目指す仲間たち

―今年の10月から、富士ボトリングの『足柄聖河』の販売を始めています

(五十川)
先ほどの『しよう!再使用!リターナブルびんラップチャレンジ』に協力させていただいことがきっかけです。

(徳村)
富士ボトリングさんも独自で販売・回収をされておりましたが、その部分で、私たちの2Way型サービスが貢献できると思ったのです。

また、今はインバウンドで海外の方が多く日本にいらっしゃいます。そうした中で、おそらくネガティブな意味での「日本はPETボトルが多い」という声も聞こえてきますので、富士ボトリングさんと一緒に事業を展開することで、少しでも日本のびんリユース文化を取り戻したいと考えています。

ちなみに、先日開催された「FOOD STYLE Japan 2024」内、飲食店向けの酒類総合展示会「KAKUYASU DEXPO in FOOD STYLE Japan」でも、リターナブルびんと『足柄聖河』を紹介しています。

●カクヤスでの『足柄聖河』販売についてのリリースはこちら
●KAKUYASU DEXPO in FOOD STYLE Japanのリリースはこちら

●日本ガラスびん協会note 富士ボトリングの記事はこちら

―今後の展開として考えていることはありますか?

(徳村)
来年は大阪・関西万国博覧会がありますし、関東や九州には今後もインバウンドのお客様が多くいらっしゃると思います。
そうした状況下で、ホテルはもちろん、飲食店や外資系企業にも、リターナブルびん入りの『足柄聖河』は非常に相性が良いと考えておりますので、既存のお客様を含め広くお話をしていきたいと考えています。

また、最近ではガラスびん工場や空きびん回収企業を見学させていただきました。循環型社会の実現を目指す中で、その根本を担っている企業のことを理解し、これから共に歩みながら何ができるかを学ぶ良い機会となりました。

社風が加速させる
循環型社会の実現に向けたカクヤスの挑戦

―新しいことへのチャレンジに抵抗はないのでしょうか?

(五十川)
カクヤスグループには、積極的にチャレンジしようという社風があります。

環境テーマでは、廃食用油回収にもチャレンジしています。
飲食店はもちろんですが、一般家庭からも回収し、SAF燃料(航空燃料)として再利用することでCO₂排出量の削減に貢献したいと考えています。
廃食用油の再利用に関しては政府の推奨もありますし、世界的にもカーボンニュートラルに向けた必須課題と位置付けられています。この流れに、私たちカクヤスの特徴である回収を活用すれば、飲食店のみならず、一般家庭からも広く廃食用油の回収ができると思ったのです。

●カクヤスでの食用廃食用油回収サービスのリリースはこちら
●経済産業省 エネルギー庁のSAFについての記事はこちら

(徳村)
この廃食用油回収は6月から始めたのですが、予想を超えて、多くのお客様から回収できています。
まだまだ大きな数にはなっておりませんが、環境への意識が高い方が一定数いらっしゃることがわかったのは大きな成果だと思っています。

また、飲食店ではSDGsへの取り組みの幅が限られていますので、フードロス対策、プラスチック使用量削減の次の取り組みとして、廃食用油回収はとても喜ばれています。

(五十川)
他にも、コロナ禍で家飲みが広まったこともあり、家飲みのお供にびんビールを選んでいただくために『晩酌放浪歌~名曲と瓶ビールと~』という番組も始めました。

●カクヤスの『晩酌放浪歌~名曲と瓶ビールと~』のリリースはこちら

見えてきた
リターナブルびんの可能性と課題

―リターナブルびんを拡大させていく上での課題は感じていますか?

(徳村)
リターナブルびんの形状や規格を共通化しないと、経済性が保てないことは課題です。ガラスびんはデザインの自由度が魅力ですが、リユースという観点ではネックになってしまいます。同じ形状や規格でさまざまな商品にリユースできるラインナップを増やさなければならないと感じています。

―今後、日本ガラスびん協会に期待することを教えてください

(五十川)
ラップチャレンジのような、私たちにはアプローチできないお客様への取り組みを、今後も一緒にやりたいですね。今回は豊島区でしたが、エリアの拡張や別のエリアなど、活動をさらに広げていけたら良いなと思っています。

(徳村)
日本ガラスびん協会さんと知り合えたことで、新たにさまざまな企業とのつながりができました。循環型社会の実現を目指す仲間をこれからも増やし、さまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています。


株式会社カクヤス 取締役 徳村健さん
株式会社カクヤスグループ サステナビリティ推進課長 五十川里子さん