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フインランド語探偵ハンナ 第23回

 Päivää(パイヴァー)!こんにちは!
 もうすぐ父の日。こう言うと、日本の皆さんは「あれ?」と思うでしょうね。実は、フィンランドの父の日は11月の第2日曜日なの。スウェーデンなど、他の北欧の国でも同じ日が父の日になっているわ。ちなみに、フィンランド語で「父の日」はIsänpäivä(イサンパイヴァ)と言うのよ。
 さて、今日もフィンランド語の謎を解明しなくちゃ。ハンナならどんな難題も解決できるんだから!

23回目の依頼人は、北欧の教育を研究する大学院生のカナさん。約1年ぶりの登場よ。

🔎Case #23 :『数え方で数が違う?!』

ハンナ:こんにちは、久しぶりね。元気だった?
カナ:はい!ずいぶんご無沙汰してしまいましたね。昨年度、何とか修士論文を提出して、博士課程に入学できました。今はフィンランド語の勉強も続けながら、研究に明け暮れる日々です…発表の準備とか、結構大変で。
ハンナ:忙しいでしょうけど、充実しているようで良かったわ。それで、今日はどんなご依頼かしら?
カナ:研究のために、フィンランド語で書かれた論文を読むことが前よりさらに増えました。この前は教育にかかる費用についての論文を読んだんですけど、数字について引っかかったことがあって。
大きな数字の表現は、英語から入ってきた外来語が使われていますよね。例えば「100万」の単位なら、英語のmillionとフィンランド語のmiljoona(ミリヨーナ)は単語が似ています。ですが私が疑問に思ったのは、biljoona(ビリヨーナ)です。これは英語のbillion「10億」の単位に当たるんじゃないでしょうか?でも、内容的にはもっと大きな数のような気がするんです。もしかして論文にミスがあるのかな、と思ったり…ハンナさん、この謎が解けますか?

ハンナ:トタ、トタ*1…わかったわ!
謎を解くカギは「数え方の違い」よ!

第23回分イラストsmall

カナ:…数え方、ですか?
ハンナ:カナさん、あなたは英語がすごくできるのよね。そういう人がよく勘違いするのがこのbiljoonaなの。これはね、「1兆」という意味なのよ。だから論文のミスではないと思うわ。
カナ:え?!外来語なのに、全然違う数じゃないですか!
ハンナ:実は、数え方には「ショートスケール」と「ロングスケール」というものがあるの。これは命数法という、数字を命名する際のルールよ。ちょっと難しいから細かい説明は置いといて、ショートスケールとロングスケールの数え方を比べてみるわね。

第23回文中図表
ハンナ:ヨーロッパの英語圏ではショートスケールを採用していて、billionは10億、trillionは1兆なんだけど、英語以外の言語ではロングスケールを採用していることが多いの。フィンランド語もそうで、biljoonaは1兆、triljoonaは100京を意味するわ。
カナ:へえ~、同じ語源を持つ単語でも位置がずれて、違う数字を意味するんですね。
ハンナ:そう。世界の中では英語が共通語というイメージがあるかも知れないけど、ヨーロッパの命数法では、英語が採用するショートスケールはむしろ少数派なのよ。
カナ:数え方によって数が全然違うなんて、考えたこともありませんでした。ちょっとの不注意が誤解を招くこともあるけど、そんなミスをなるべく減らして、もっとフィンランド語力を高めたいな。ハンナさん、ありがとうございました!

 謎は解決!次はどんな依頼が舞い込んでくるかしら?次回もお楽しみに!

*1 トタ(tota):日本語の「えーっと」に当たる語tuota(トゥオタ)のくだけた発音



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