記憶にないのに、できてること
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記憶にないのに、できてること

びんこ/長谷川敏子

「イタタタ……」
できたてのフライドポテトを口に放り込んだ途端、舌の左側に痛みが走った。
先日まで悩みのタネだった歯痛が治ったと思ったら、今度は口内炎ができたのだった。どうやら、その口内炎の患部にフライドポテトの塩が触れてしまったようだ。

「傷口に塩じゃ、痛いわな……」
おいしいものを食べることがなによりも好きなのに、これではどうしようもない。
だからといって、せっかく頼んだアツアツのフライドポテトを諦めるのも悔しいので、口内炎があるのとは反対側、右側の口を使って、そうっとポテトを食べた。

歯痛にしても口内炎にしても、私の場合には生活リズムが崩れるとできやすい。
思い返せば、10月後半頃に久しぶりの出張があり、その後は公私ともに何かと忙しくて、ずっとどこかへ出かけている。
日中はもちろん、夜もようやく自由に外食できるようになったものだから、行きたくとも行けなかった店へ次々と足を運び、
夜遅くまで飲んだくれては帰ってくるという日々を過ごしていた。

とはいえ、以前のように終電まで飲んでいるわけではない。午後9時か10時頃には帰宅しているのだが、酔っ払ってすっかりいい気分なのである。
「お酒、弱くなったのかなぁ……」
終電どころか明け方まで飲み歩いていたのは、若気の至りだったのか、それとも体力があり余っていたのだろうか。

深夜まで飲み歩くことがなくなって、よかったと思うことはいくつかある。
まず、二日酔いがなくなったこと。これは単に、遅くまで飲まない分、酒量も減ったからだと思う。
そしてもうひとつよかったことは、肌の調子が悪くならないことだ。

子どもの頃にはアトピー肌で悩まされたくせに、ズボラな性分なものだから、大人になってもまともに肌の手入れをしていなかった。だから、すぐに肌が荒れる。
特に、酔っ払って帰宅すると、化粧も落とさずにそのままベッドに突っ伏して眠ってしまっていた。飲んだ翌朝の肌荒れは、寝ている間にタイムマシンに乗って何十年も後に来て、おばあちゃんになった自分を見ているんじゃないかと思うくらい、ひどいものだった。


しかし今は、外から帰ると必ず手を洗い、ついでにメイクも落とす。メイクを落としたついでに、化粧水をつける。
それがコロナ禍になってからの習慣になっている。
それを酔っ払っていても自然にやっているから、肌荒れはしなくなった。
……ということらしい。

「らしい」というのは、覚えていないからである。
手を洗ったことも、メイクを落としたことも、化粧水をつけたことも、翌朝起きると何も覚えていない。
ただ、顔を拭いたと思しきタオルと、フタの開いた化粧水の瓶が、
ベッドサイドの小さなテーブルに置きっぱなしになっているのである。

「習慣って、こういうことをいうんだなぁ」

何も考えていないのに、身体が勝手に動く。しかも、良い方に。仕事もこんなふうに、いつの間にか勝手にできるようにならないもんかねぇ。肌荒れがなくなった自分の顔を鏡で見ながら、ボソッとつぶやいた。

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びんこ/長谷川敏子
東京在住のライター。山形→沖縄のテレビ&ラジオ局→東京。書く&司会も。得意分野は沖縄・酒・食・ビジネス系など。「いろんな自分があっていい」なのでnoteのテーマは絞らず、徒然に書きます。仕事内容はホームページをどうぞ。 https://www.binco-hasegawa.jp/