【神奈川のこと7】鎌倉山の防空ゴウ(鎌倉市)

終戦の日なので、戦争にまつわることを書く。

小学生の頃、鎌倉山の防空壕は遊び場の一つだった。

それは若松と笛田のバス停の間、笛田公園へと続く道に入る左側にあった。

「空シュウのための防空ゴウ」という言葉の響きは、怖さと好奇心がない交ぜになって、小学生の男子の気持ちをワクワクさせるには、十分であった。

「昨日は防空ゴウで遊んだんだぜ」というのは、俺たちは怖いもの知らずなんだということの表れのようで、家でもクラスでも自慢気に話した。

いつもは入口付近でしか遊んでなかったが、ある日、奥まで入ってみようということになった。

そして、懐中電灯を持ってめいめい集まった。

ある奴が、道しるべとなるタコ糸を持ってきた。

こういう奴は大人になってもいるもんで、普段は割と無口なんだけど、同窓会の実行委員会や教会の委員会なんかで、ちょっとした気遣いで、みんなを助けてくれる、いい奴だ。

さあこれで、俄然、本格的な探検となったのだ。

外に見張り番を一人置いて、懐中電灯で中を照らしながら、身をかがめて進む。ゲジゲジなんかがいるんだけど、へっちゃらだ。小学生にとっては友達みたいなもんだ。

しばらくすると、二股に分かれた。「おっ!」と驚きの声が漏れる。でもタコ糸を入口からずっと引っ張って来ているから帰り道に困ることはない。本格的な探検隊となっているのだ。

二股の左側の道を選び、進んだ。もしかすると、白骨化した死体があるかもしれない。

そこで探検は終わった。

タコ糸が終わってしまった。

でも満足であった。

未知の世界を探検した充実感があった。そして、ちょっとだけ強くなれた気がした。

センソウデナクナラレタカタガタノメイフクヲイノリモクトウヲササゲル





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