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女性とモータースポーツ - ビクトリア・ヘットの場合 No.210より

ブリティッシュ・コロンビア(カナダ)出身、モントリオール在住。両親が経営する農場に育つ。現在はHusqvarnaモーターサイクル・カナダのマーケティング部門で重役を務める傍ら、エンデューロライディングを楽しむ日々。既婚。カナダ女性代表チームとしてISDEに3度出場。2010年メキシコ大会と2012年ドイツ大会でブロンズメダル、2014年アルゼンチン大会ではシルバーメダルを獲得した。カナダのEAST地区とWEST地区の総合で競われるエンデューロ選手権でチャンピオンになったほか、ブリティッシュコロンビア選手権では、男子のエキスパートクラスで度々3位入賞する実力。旧姓・ヘット(Hett)。

Victoria Hubacek
ヴィクトリア・ヘット


 5歳の誕生日に、両親がYAMAHAのPW50をプレゼントしてくれたのがバイクライフの始まりです。でも当時は、そんなに夢中になったわけではなくて、大好きなポニーのぬいぐるみとPW50は同じぐらいの存在でした(笑)。
 だからレースに出るようになったのも遅くて、初めてのレースは11歳の時です。地元、ブリティッシュコロンビアのハーリングアイランドで行われているヘアアンドハウンド。湿地で川渡りが多いコースで、何度もラインを間違えてスタックしたことを憶えています。この年は、このレースに1回出ただけでした。翌年、初めてエンデューロに出ました。サスカッチエンデューロという、カナダでは歴史のあるイベントですが、長くてタフなことでも知られるレースです。当時は12歳でしたが 。その後、成長してからまたこのレースに出るようになりましたが、やっぱりタフなレースでしたよ。その険しいトレイルは、今でも残っているそうです。
 ブリティッシュコロンビアは自然が豊かな土地で 、トレイルライディングにも最高です。私が一番好きなのは、両親に連れられて走っていたトレイルです。バーノンというところにある、バードルフとベッカーレイク。同じブリティッシュコロンビアのナラマタ村にあるペンティクトンというトレイルもいいですよ。これは私が作った30kmぐらいの短いトレイルですが、モントリオールに引っ越すまでの数年間、そこでは何度かレースも開催したんです。  私の父親はレースの開催もしていて、中でも1990年頃に始めた、ヘアスクランブルとクロスカントリーレース(Squealin' Pig Hare ScramblesとBig Rooster Cross Country)は、私にとっても一番好きなイベントです。両親は、10年をかけてバーノンにモーターサイクルのためのトレイル網を整備しました。現在は、弟を含めた私の友人たちが運営している地元のモーターサイクルクラブや、近隣のクラブが協力してトレイルを維持するために働いています。地元のライダーたちは、そのおかげで楽しくライディングできているんですよ。
 "The Squealin’ Pig Hare Scrambles"というレースの名前、変わっているでしょう? これは、母が、参加者に美味しい「豚のロースト」をふるまっていたことからつけられた名前なんです。母は、料理にするための豚を農場に買いに行くのですが、彼女が近づくと、豚たちは柵の中を走り回って、鳴きわめいて(squealing)いたそうです。料理にされるのが怖かったのかな? 
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 一番思い出に残っているレースは、ISDEですね。2010年のメキシコと2012年のドイツ大会。メキシコでは体調が悪く、リタイア寸前の状態が続きました。身体的にきつかったのですが、自分にとって真のテストになったと思います。特に精神力を試されたという点で…。ドイツは、父が一緒に来てくれた唯一のISDEでした。カナダの代表チームの一員として世界のライダーたちと一緒に走っているところを父に見てもらえて本当に嬉しかったし、誇りに思っています。おそらく彼もそう思ってくれているはずです。父は癌のために他界しました。2014年のアルゼンチン大会の前です。姿は見えなくなりましたが、彼は今でも私のことを近くで見てくれています。
 女性にとってのモータースポーツが、男性よりも困難な道だとは思っていません。男でも女でも、努力することでこのスポーツを通じて成長することができるし、自分なりの成果を得ることができると思います。
 私はむしろ女性であることはプラスだと思っていますが、


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