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Looking Back - 2018年。エルズベルグに初挑戦した石戸谷蓮、当時のインタビューを振り返る

2015年の矢野和都以来、3年ぶりとなった日本人選手のエルズベルグ参戦。石戸谷蓮は、5年計画の最初の挑戦を終えた。順位は141位。4時間の制限時間で到達したチェックポイントは14で、矢野と同じ。結果だけを見れば、完走はほど遠く見えるが、石戸谷は、完走への手応えを充分につかんだと話す。「世界で最も注目されているオフロードレース。だからそこに参戦する意味ある」。石戸谷が見たものは、何か。

Interview : 石戸谷蓮
Text : Hisashi Haruki


-- 初めて現地に行き、そしてレースをしたわけですが、最初に何を感じましたか。

蓮 ビギナーらしい情報の不足を感じました。現地に行ったら、まずコースの下見ができると思っていたんですが、公式にはほとんどの場所が立ち入り禁止で、ほぼ下見はできなかった。でも、トップライダーたちのインスタとかに、コースウォーキングの様子がアップされているし、どうなっているんだろう? って感じでした。後から、何度も参加しているライダーたちの話を聞くと、実は、裏口的に入れる場所があって、そこから入って下見してる。公式には禁止されているはずなんですけど、みんなやってますね。ああいうレースなので、ラインを知っているのと知らないのとでは、時には大きな差になりますから、できるだけ見ておきたいですよ。そのほかにも、知っておけばもっと簡単にレースを進めることができる、っていう情報がありますから、まあ、1年目としてはこれはしょうがないかな。はじまったら一気に物事が進んでいくのがこういうイベントですから、情報収集はやはり重要だと思いました。

-- 1週間程度の短期間の遠征スケジュールでした。体調の管理はうまくできましたか。

蓮 一般的なライダーの参考になることも重要な目的なので、最低限の経費、休暇での参戦を想定していますからスケジュールはできるだけ短くしています。時差も7時間あるし、移動のストレスもあるので気を使いました。体調管理で最も重要なのは睡眠と食事です。いつも通りの食事をすることが重要なので、和食をたくさん持っていきました。自分でも料理はするんですが、取材で同行してくれたジャンキーさんも料理が上手なので助かりましたし、現地の食事も美味しくて身体に合っていたのは分かりました。全体として体調はうまく調整できたと思います。

-- バイクの準備。

蓮 Beta RR2Tを、ベータモータージャパンの門永さんにお願いして、イタリアの本社を通じて、Bosioffroad(イタリアのBetaディーラー)で準備していただくことができました。。まったく問題なかったですね。タイヤはIRCのVE33s GEKKOTAで、これもエルズベルグにベストマッチでした。ヨーロッパのライダーは、とにかくエアボリュームを重要視してますね。クッション性と、エアボリュームによるグリップを意識していて、だから140サイズ以外ほとんど使っていないようです。日本ではブロックの高さを大事にするライダーが多いですが、エルズベルグでは泥がまったくないので、そこはどうでもいいみたいですね。それよりロックでのグリップ。FIMタイヤで、カチ開けしてブロック飛ばしてもあんまり気にしないって感じです。


-- プロローグの戦略。


蓮 初めてなので、1本目はゆっくり走って下見をして、2本目で勝負する、っていうプランでした。実際、超ハイスピードな区間で、突然、180度ターンが出てきて、それがつづら折れになって続いているようなところでも、コースマークがターンの直前にひとつだけある、っていう感じなので、コースを憶えていないまず攻められないと思いました。全開でストレートを飛ばしていった後に、突然フルブレーキングで180度ターンですから…。で、2本目に攻めようとしていたんですが、2本目、スタートしたらコースが超荒れてて、それでも何度も吹っ飛ばされそうになって攻めましたけど、結果は200位ぐらいで、決勝は4列目スタート。次は、プロローグのスピードつけないとダメですね。今年、コディ・ウェッブがやっぱり2本目でスパートしてクラッシュしましたが、しょうがないと思います。大きな石もたくさん落ちてて、フロントがはじかれてハンドルから手が離れちゃったり…。でもびびって攻めなかったら決勝でフロントロー取れないですよ。コメトン・ハーカーが、2本目でジョセップ・ガルシアのタイムを抜いてましたよね。ガルシアより速いって、なんなんだ! って(笑)

-- 難易度と完走の可能性。

蓮 チェックポイント14までは、自分では走れない、走破が難しい、っていうセクションはなかったです。日本のライダーの多くがそう感じるんじゃないかな? ただ、スピードと、休まずに攻め続ける体力がもっと必要だと思いました。スピードが足りなくて、結局タイムアウトになる。スタート順が遅かったので、渋滞でタイムロスするのもありますね。でも、セクションの難易度はそれほどではない。重要なのは、スピードのいるヒルクライムと、ヒルクライムでのリカバリーの早さだと思います。セクションは、大体、ヒルクライムですね。エクストリームっぽいところは、カールズダイナーぐらいだと思います。ヒルクライムで失敗した時に、リカバリーしやすい体勢でストップする技術が大事ですね。バイクをぶんなげて破綻をきたしてしまうと、大きくタイムロスする。でも、登れないって、判断した瞬間に、リカバリーしやすいように持っていくことで、タイムロス、体力のロスを軽減する。上手なライダーはそこが違いますね。あと、ヘルプしてくれそうなところに飛び込んでいくのもテクニックのひとつだと思います。

-- 日本のライダーは上手い?

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