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エッセイ158.食う寝るところ住むところ(2)家族が回遊


朝起きると、とんでもないところに腕があって、痺れていたりします。

夫に指摘を受けて初めてわかったのですが、私は大変に寝相が悪いです。
しかも、寝ている間、いろんなところに行きます。

独身時代、自分の部屋でシングル布団に寝ていたときは、
ちゃんと一組の布団の中に大人しく収まっていたのに。

結婚してから、例のグレーの巨大ソファベッドで寝るようになり、
自由を満喫し始めたのか、ますます行動が自由に。

朝起きると、夫の足が目の前にあるので、

どこに寝ているのよ〜!?

違います、自分が反対向きに寝ていたのでした。
最初は川の字に寝ているのに、子供と私だけあちこち移動します。

こんな感じでした。

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ありえないところに頭が行っているため、目が覚めて

ここはどこっ?

になることもありました。


葛西臨海公園の水族館に行って、まぐろの回遊を見ながら
夫がしみじみと言ったのです。

元気いっぱいぐるぐる回っているね。
寝ている時の君たちみたいだ・・・


一方夫は、ビシッと毛布を体に巻き付け、
寝に入ったときと、位置を変えずに起きるという特技があります。
よく見る夫の寝姿なのですが、これはあれみたい。


・・ツタンカーメンのミイラ?
こんなにきちんと寝なくたっていいのに。

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夫が、自分の寝方がお行儀のいい理由を言います。

「それは私が、きちんとタック・インされて寝る習慣があったから」

だというのです。


英語で「寝かしつける」を、tuck in と言います。

I’ll tack you in, let’s go bed.
さあ、寝ようかね。

と言う具合に。

タックは、布地などを何かの間に挟み込むことらしいです。
辞書には、たくしこむ、押し込む、挟み込む、詰め込む、などとあります。

スカートやパンツのタックというのもありますし、
ズボンにシャツをたくしこむのにも、この言葉を使います。

タック・・・たっくし・こむ? 
覚えやすいですね!

で、なぜに、子供を、どこにたくしこむかというと、ベッドです。

ベッドって、まず一番下にシーツ。
それからその上に、もう一枚シーツを敷いて、
その上に毛布、寒ければ掛け布団をかけますよね。
ベッドをメイクする、ベッドメークする、というのは、
その、かけた全ての夜具をびしーっと、
ベッドマットレスの下にたくし込んだ状態だそうです。

たくしこみ方には、なんとか式と、ホスピタル式のやりかたがあり、

私はホスピタルスタイルも上手なのである

と、夫が自慢します。

こちらです。
https://youtu.be/B2XapEvV8xI



そしてなるほど、朝起きた時、たくし込まないで出かけてしまうと、
それぞれの私室であるところのベッドルームが、
なんとなくだらしな〜〜い、万年床になるのでした。

日本に導入されたベッドでは、日本のふとんをそのまま置いてあるか、
垂れる部分を長くしてあり、たくしこみはほとんどなされないようです。

初めてホテルに行って、びしっとメイクされているベッドを見て、

掛け布団がない・・

と、呆然とする人、というのが、昔はいらっしゃいました。

さて、夜ともなると、このびしっとメイクされたベッドに子供を入れ、
(壁と反対の方の一辺をよいしょと引っ張って、取る)
そのあと、またびしっと、上のシーツごと、
全体を、マットレスの下にたくしこみます。
(たぶん?)

このように子供をbetween sheetsにびしっと入れ込み、
よいしょよいしょとたくしこむのはなんのためかというと、

小さい子供が、ベッドから落っこちない用心でしょ。

と、小さい時から そうやってたくしこまれてきた夫が、
なんとなくあやふやなことを言います。

「とにかくだね、僕のスリーピングのマナーがいいのは、
赤ん坊の時から、きちんとタックイン、されていたからですよ。
君方とは修行が違うね、修行が」

妙に鼻の穴をふくらませ、いばる夫なのでした。


さて夫の寝姿を見るとつい思い出すことがあります。

「子供の発見」以前の中世ヨーロッパでは、
「スウォドリング」という大変に残酷な風習がありました。

生まれたばかりの赤ちゃんを、布でぐるぐる巻きにしてしまうのです。
子供はろくに声も出せず、おむつもありません。
布も高価なので、そうそう取り替えません。
ただし、静かですので、大人は仕事に集中できます。
現代も古い乳児院や孤児院の門などにある幼児キリスト像も、
これをされているのが多いそうです。
表向きは、「こうしないと脚が曲がってしまうから」だったのですが、
極限まで赤ん坊の世話をしないのが普通であった16世紀までのヨーロッパでは、
このスウォドリングのために、新生児の40〜70%が亡くなってしまったそうですから、本当に恐ろしいですね。




夫はお行儀良くタオルケットなどを巻き付け、スウォドリング着用か、
巨大ミノムシ状態になって朝を迎えることが多いです。


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私はといえば、夫婦の布団の間にいつも20cmぐらい、隙間があるのですが、
夜中に暑いとそこに落っこちて、体を畳で冷やしていることがあります。
そのあと、無意識ですが、夫の布団の上にドタンバタンと登っていき、大の字になるらしいです。

昨夜も、

ハロー、申し訳ないけど、自分の布団に戻ってもらえませんか?

と丁寧に頼まれて、半覚醒状態でまた、ドタンバタンと自分の布団にもどったのでした。


続きます。



スウォドリングされている赤ちゃんたち。ひどいですよねー😱

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