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日本語教師日記151.雑談(2)生徒に教えてもらう料理

続きです。

雑談を一切せずに、1時間それだけ。
詰め詰めでレッスンをしたら、その分早く上手になるのでは。
・・・とは、考えたこともありません。

それなら、ジムで一人で走っているのと同じではないでしょうか。
やはり、何事も緩急があり、できれば面白いに越したことはありません。

また脳は筋肉ではないので、疲れてしまうと吸収も悪くなるように思います。
一休みの繰り返しが、いいのではないかなと思っています。

けれど、休めないタイプの人もいます。

会社や家庭で、日本語の上達を迫られているとか、
転職のため日本語を流暢に話せるようにならねばと焦っている。
上達が思った通りにいかないことの原因を教材に求めて、
いろいろ新しいものを手に入れて、消耗している人などです。
気持ちの上で血流が悪くなっているというか。
見ていても辛そうで、お気の毒です。
そういうみなさんにはとても、
昨日のような駄話のできる雰囲気を作れません。
力不足を感じます。

それから、オンラインレッスンにも関わらず
(いや、だからこそかな?)、画面をオフにする人がたまにいます。

「顔を見せるのが恥ずかしい」「勉強に、顔は要りません」
など、理由はそれぞれあるそうです。

でもね、それでは授業はできません。
コミュニケーションには、非言語的表現もまたとても大事です。
顔を見ないと、どこのどの辺でつっかかっているか、ほぼ解りません。

顔を見ていれば、

「あ、今、なぜここは「じゃない」じゃなくて「くない」
なんだろうと思ったでしょう?

と、すぐに察知して、復習に入れます。

また、黙っていると、接続が切れている場合もあります。

しーん・・

「もしもし?」

しーん・・

「聞こえていますか?」

しーん・・

「もしもし?」

「いますけど!」😤

なんていうことが、実際にありました。

何より私は、日本語の「ら行」と、
「語中に位置する【ん】と、語尾の【ん】、
それも開口のままのそれと、両唇音のそれとの区別」については、
本当にしつこく、厳密に指導しています。

というのは舌の位置により、読んでいて、違う発音になります。
「婚約」と言ったつもりで、「こんにゃく」と言ってしまうなどです。

英語の「n」は、舌端が硬口蓋にくっつきます。
(他の言語を知らないので、英語を例に挙げます)
ですので、日本語になった外国語をカタカナで書く練習をすると、
最初のうちは「レッスン」は「レスヌ」、「ワイン」を「ワイヌ」
と書く人が大変多いです。
信じられないと思いますが、日本語教師なら誰でも知っていることです。

その辺をクリアしないと、日本語らしい発音になりません。
それが、顔を見せてもらえないと、できませんから、
「そんなことを言わないでカメラをつけてください」と、交渉します。
絶対嫌ですと言っていた方は、各々、
1回から5回ぐらいの間に、レッスンをやめました。
残念です。

長い前置きになってしまいました。

さて、脱線しているときに、いいことを教えてもらうことがよくあります。
新しい学習ツールを見つけたとか、こんな面白いガジェットがあるとか。

一番よくあるのが、簡単でおいしいレシピです。

こんなのはいかがですか?

・・・・

「先生はカボチャが好きですか?」

「大好きです。おかずでもおやつ系でも、なんでも」

「では、このレシピを試してください。

まず、小さいカボチャを横に二つに切ります。
タネをスプーンで取って、そこにベーコンの細切りを詰めます。
その上に、切り口全体に・・・・茶色の砂糖は、日本語でなんと言いますか?」

「ブラウンシュガーかな。作り方によって、三温糖とかてんさい糖とか・・
いろいろありますが、ブラウンシュガーでもいいと思います」

「じゃその、ブラウンシュガーを全体に振って、
オーブンで1時間ぐらい焼きます」

「なにそれ、美味しそうですね。おかずですか? スイーツとして食べるの?」

「どちらとも言えますね」

「オーブンの温度は? 」

「わかりません、調べます」

「レシピの名前はなんというの?」

「それもわかりません」

「そうですか。じゃあ私も調べてみますね。

パンプキン・ウィズ・ベーコン・アンド・ブラウンシュガー・・

で、出たりして。

Pumpkin with bacon and brown sugar…. っと・・・」

それをしたら、たくさん出てきて、生徒が教えてくれたのはこれです。

「みんな、わからなくて、適当にキーワード検索しているんですね、きっと。
あなたのお家では、なんと呼んでいるの?」

「やっぱり、pumpkin with bacon and brown sugarです」

「あはは、それしかないよね」

話したいことがあると、たとえ間違いだらけであっても、
生徒は一生懸命話してくれることが多いです。
お料理好きの人とはレシピのやりとり、
子供生徒くんたちには、今お勧めの旬のアニメについてとか。

雑談の功徳は、私もしょっちゅういただいている、という話でした。


サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。