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一つ一つに心を込めたオーダーガラスにこだわりを持つガラス工芸家“水木一成さん”

ガラス工芸の中でも吹きガラスという特別な技法で、札幌でご活躍されている
水木一成(みずきいっせい)さんにお話を伺いました。

水木一成さんプロフィール
出身地:北海道札幌市
活動地域:北海道、道外
経歴:1999年 小樽K's BLOWING入社 、2004年 長野SUWAガラスの里入社2011年 硝子工房GLOW設立
現在の職業および活動:吹きガラスという技法で、一つ一つに心を込めた手づくりのガラス作品を製作し、硝子工房GLOW内で販売。プレゼント・引き出物・各種記念品・店舗用食器など、お客様の希望に合わせたオーダーガラスの制作
座右の銘:「狭き門より入れ」

「自分の名前を掲げたギャラリーを持つこと」

Q. 水木さんが思い描くこれからの夢・ビジョンを教えてください。
水木一成さん(以下、水木):
もうすぐで独立して10年になるので、ガラス工芸で10年も続けられることに感謝しつつ、数年前からガラス工芸でご飯も食べていけてるので、次の目標としては自分の名前を掲げたギャラリーを持ちたいと思っています。どういう場所でやるのがいいのかなぁというのを、今いろいろ相談しているところで、構想はいくつかあります。

お土産じゃないガラス工芸なので、敢えて札幌でやっていて、基本はネットや口コミなどからのオーダーメイドで受注生産しています。
観光と結び付けないと、なかなかやっていけない業界でもあるので、小樽でやる方が多いのですが、旅行のついでに買っていただくようなものではなく、ガラス工芸に興味を持っていただきたい。
自分が子供の頃に描いた夢で今この仕事に就いているので、地元の子供達が将来の夢に「ガラス工芸家になりたい」と書いてもらえるような憧れになれたらいいなと思います。

「本当に喜んでもらえるものを作らないといけない」

Q.水木さんが作りたいものと、需要があるものは一致するのでしょうか?
水木:
作りたいものと、作ってほしいものは違いがあるので、そのバランスは必要ですね。季節のガラスや、仏壇仏具などの需要を頂いていて好評なので、それを本格的に形にしていきたいです。ペットブームでもあるので、ペットの手元供養の骨壺とかも依頼は多く、ウェディングの需要も結構あるので、まだまだ貢献できると思っています。
以前は自分が作りたいものを作るという思いが強かったが、最近は人のために作るということがいかに有難いことで、その辺が身に染みて分かってきたので、昔ほど自分が作りたいものを作るというより、本当に喜んでもらえるものを作らないといけないなと思います。若い頃は評価されないと、「この俺の良さが分からないセンスのなさ・・・」と思ったりもしてましたが、諸先輩からも色々と勉強させてもらって、こうして何年もガラスで食べていることは有難いことなんだなと思うようになりました。

あとは、事業としても成り立たせないといけないので、経営も考えていかないといけないなと。どうしても自己満足になりがちで、内にこもることも多いので、積極的に足を向けて勉強するようにしています。全くジャンルが違っても、成功されている方に学ぶことは多いので、そういう中でだんだんと考え方も変わってきました。

「人間性を磨くということを忘れずにものづくりをする」

Q.水木さんはどのような活動指針で、どのような活動をされているのでしょうか?
水木:
ガラスの中でも吹きガラスというジャンルをやっており、息を入れるということに魅力を感じて、息を入れる吹きガラスは特別なものだと思っています。これを今後も軸にして、こっち(心)側を磨かないといけないので、やはり内面を磨くことが一番大事と思ってます。あくまでも心を込めて作るということは、心をまず磨かないといけないので、しっかり人間性を磨くということを忘れずにものづくりをしています。

最初の頃は余裕がなくて作るのに精一杯で、心がこういうものに現れると気づかなかったけど、頼んでくれる方と心を通わせた時にすごくいい物が作れると分かってきました。贈答品や記念品が多いが、大事なシーンで使ってもらうことがほとんどで、ひな人形とか兜とかは一生大事にしてもらえるので。送り物も、結婚したご夫婦やご両親に渡したいという思いで、ほとんどの注文が誰かが誰かへの思いで注文くださいます。若い頃はそっちは考えずに、こんなにいい物ができているから喜んでもらえるだろうと思っていたけど、今はバックグラウンドや送り先の方の情報を色々と聞いて、その方を思い描いて作るようにしています。最近は受注をもらって作ることが多いので、その人のために作るというスタンスが一番喜んでもらえますね。誰の顔も思い浮かべずに作るよりも、あの人がこの人のために・・・という思いを組みながら作っています。

独立して3年は仕事が全然なくてきつかったですが、3年目以降ようやく生活できるようになり、いかにガラス工芸で食べていくことが当たり前じゃないということがわかりました。少しずついろんな勉強をするようになって、周りの人や家族の支えがあって続けられること、今があることを、最近になってようやく感謝できるようになりました。

「人と同じじゃ意味がない、自分の意志で決めたい」

Q.水木さんが「ガラス工芸家になりたい」という夢を持ったきっかけは何ですか?
水木:幼稚園の時に、『これ何?』と母に聞いたものが「ガラス工芸」で、デパートの上にあるクリスタルコーナーなどもすごく好きでした。
『ガラス工芸家になりたい』とか、随分変わったことを言う珍しい子だなと言われていたのを覚えています。
中学で進路を考える時に、子供の頃言ってたことを思い出して、よくよく考えたらカッコイイなと思ってガラス工芸家になろうと決めました。
弟とは違って、昔から人と違うことをしたがる子供ではありましたね。

記者:なぜ人と違うことを?
水木:「みんなが右に行くなら、じゃあ左に行く。みんなが小樽の観光地でやるのが当たり前だけど、じゃあ俺は観光地でやりません」と、いろんな場面でそれは出てますね。札幌でやると言った時も、多くの方に絶対無理とか、リスクしかないと反対されたけど、やりたいからやっただけで、自信も当然ありました。人と同じじゃ意味がないというのはちょっとあります。自分の意志で決めて、自分がいいと思っている方に行きたい、それだけです。

「子供の頃からオリジナリティにこだわる」

Q.「人と同じでは意味がない」と気づくことができた背景には、何があったのですか?
水木:
マイウェイみたいな、子供の頃からオリジナリティにものすごくこだわる子でした。例えば、漫画のドラゴンボールの絵が上手な人がいても、「それは鳥山明の作品を書いただけだろ!」と、どんなに上手でもすごくないと思ってて、自分のオリジナルのものを書いていた方がすごいと思っていました。

また、子供の頃に5人戦隊のなんとかレンジャーが好きで、僕は本当になりたいと思ってたから、なんとかレンジャーの鞄は持たなかったんです。友達は、仮面ライダーの絵の靴を履きたがるけど、僕は仮面ライダーが履いているのと同じような白いブーツを履きたいと、そんなことを考えている子供でした。

記者:ご両親も個性的なのでしょうか?
水木:どちらかというと父親がそういうタイプだったかもしれないですね。
テレビをつけない家で、ビートルズ、ローリンズストーン、マイケルジャクソンなどの洋楽をかけるのが日常でした。洋楽に触れるのが早かったのも父親の影響ですね。ガラス工芸の道に行くと言っても、どうぞどうぞという親ですからね。

「思いを込めないと存在価値がない」

Q.水木さんは、「人を喜ばせたい、感動させたい」というのがあるのでしょうか?
水木:それしかないですから、強みというか。100円ショップでも手作りのガラスは売ってるので、50倍値段のするガラスが50倍使いやすいわけではないので、何で喜んでもらうか?って言ったら、そういうところしかない。物が溢れてる時代にわざわざ手に取ってもらうとなると、今の時代にわざわざ手作りで作ってるわけですから、如何に思いを込めるか、思いを込めなかったら存在価値がないと思います。

記者:そこが息を入れる吹きガラスということですね。
水木:その人に向かって心が込められるかどうか、頼んだ人の思いやイメージがあった上で作品に取り組みます。そういう風に思って吹くのと吹かないのとでは、結果が違うと思うんですよね。だから、なるべくオーダーメイドにこだわりたいなと思います。これからは、ただ職人がブスっとした顔でただ黙って作るだけでは伝わらないと思います。

最初は作りたいものを作って、のんびり夫婦2人だけが食べていけたらいいと思ってたけど、最近経営者の勉強会などに参加するようになって、誰かを育てるということも視野に入れるようになり、8年間やっていく中で徐々に考え方が変わってきましたね。

お世話になってる経営者の方から、「人を雇ったり育てたりすることは、ただ技術を継承することだけでなく、自分の生き様を見せることが大事だよ」と教わり、一人のガラス職人としては、誰かを育てることをしないと完成しないのかもしれないと思うようになりました。

それで、作るだけの工房とは別に、自分でギャラリーを構えて、より多くの人に貢献できたらいいなと最近は思い始めたんですよね。更に、自分たちのステージが上がれば、喜んでくれる人も増えるでしょうし、今は視野が広がって、誰かを育てるということも考えてもいいのかなと考えるようになりました。

記者:ガラス工芸と共に、水木さんの内面の変化と進化がすごいですね。
以上でインタビューは終了です。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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水木さんの活動、連絡についてはこちらから↓↓

Facebook:https://www.facebook.com/issey.mizuki
札幌で吹きガラス体験 硝子工房GLOW
https://www.facebook.com/handmadeglassglow/

HP:https://www.glass-glow.jp

【編集後記】
今回、インタビューの記者を担当した廣瀬&岸川です。

人と違うオリジナリティに子供の頃からこだわりがあり、その強みを活かした水木さんだからこそ作れるオーダーメイドのガラス工芸なんだなと思いました。
心を込めて、思いを込めて息を吹き込むという、ガラス工芸の中でも特別なジャンルである“吹きガラス”の魅力を存分に感じさせていただきました。

今後の更なるご活躍を楽しみにしています。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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