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仏壇がやって来たお話

第二回世界平和文化祭が終わり、しばらくした頃のこと。

文化祭で大歓喜した私は、この思いをなんらかの具体的な形にしたいと思い始めていた。と、そんな報恩感謝の思いで祈りをささげていたその時、御本尊様を御安置している仏壇が気になった。

それは、学生寮を出て一人暮らしを始めた時に、創価学会員さんからいただいた、何の飾り気もない小さなお厨子だった。そのお厨子を見ていて、不意にこう思った。

文化祭でこれだけの功徳をいただいておいて、御本尊様をご安置する仏壇がこれでは、あまりに申し訳ない!

そこで、題目をあげながら、立派な仏壇を買うことを決意した。毎月の収入は少なかったが、倹約すれば、月一万ぐらいは残せそうかなという見当で、貯金をすることにした。と同時に、どうか立派な仏壇を手に入れさせてくださいと、真剣な祈りを開始した。

そして数ヶ月、手元にささやかながら数万が貯まった。

ヨシ、仏壇店に行こう!

私は、意気揚々と仏壇店に行った。しかし、フツーの仏壇でも、学生である私なんぞがおいそれと手を出せる金額ではないという現実に打ちのめされただけだった。私はあまりに無知だった。仏壇の相場価格を、全く知らなかった。私は店頭で途方に暮れた。

その私の様子を店主が見ていたのであろう。失意に暮れる私の姿に、同情してくださったのかもしれない。店主は私に言葉をかけてくれた。学生さんが、無理して仏壇を買うものではないよと。

そして、思いがけなくも、店主は一つの提案をしてくれた。

今しがた、仏壇の納品に行って、下取った古い仏壇を持って帰ってきたところなんだ。その仏壇を、よかったら君が使わないかい?お代はいらないよ。ついでに、君の自宅まで運んであげよう。

思いもよらない申し出である。どんな仏壇かはわからなかったが、私の方に断る理由はどこにもなかった。

そして我が部屋に仏壇が来た。黒塗りで箱型の、決して大きくはないが、それまでのお厨子だけの仏壇と比べれば、たいそう立派な仏壇だった。仏具も全部揃っている。当時、私の周囲の学生部員に、ここまで立派な仏壇を持っているメンバーはいなかった。思いもかけず、中古ではあったが、祈ったとおりの仏壇が、私の部屋にやってきたのだ。

その夜、私は心からの報恩感謝の題目をあげた。

仏壇が歩いて来た。懸命に報恩感謝の祈りをささげたら、仏壇の方からやって来た。御本蔵様、ありがとうございます!

祈るほどに、涙がとめどもなく溢れてきた。

これはそういうお話。仏壇に足がはえて、自らやって来たというお話。

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