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東京都の広さに比べたら、北海道はそれほど大きくはない話。

 物は言いよう、という言葉があります。意味は、特に説明する必要もないと思いますが、『言い方によってあらゆる物事は、いかようにも解釈が出来る』という意味です。いかようとは何用かと思われたなら、その好奇心をもってお調べいただければさいわいです。

 さて北海道。広大な面積を誇ることで有名ですが、測ってみるとそれほど大きくはないです。東京都に比べれば、あまりたいしたことはありません。しばしば北海道の人が、「函館から札幌経由して、帯広と釧路をめぐる旅を車で2泊3日? 北海道の広さ考えたことある?」と言いますが、まあ東京都の広さに比べたら、胸を張れるほどではないでしょう。

 物は言いようです。

 南鳥島や沖ノ鳥島までの旅程を考えれば、東京都の距離の長さに勝るものはありません。

 民間が自由に旅行できる場所を考慮してなお、母島までの道のりは北海道の右から左まで走破するよりも、遠く険しいものかもしれません。

 また長崎県。

 これは意外にある。北海道の次にある。さすがに北海道には及ばないものの、長崎県は存外にあります。あとに続く鹿児島県とはそれほど差がないものの、4番手につける沖縄県には、ダブルスコアをつけるほどです。昔、修学旅行で訪れた時、飛行機から見えた風景は、島国のそれとは思えない、砂場に穴ぼこを空けまくったような風景でした。

 そのランキングによると我がふるさとの鳥取県は、惜しくも実質最下位。人口も少なければ、通り過ぎる県でおなじみ、佐賀県の半分にも及びません。いやあ、狭小。鳥取県に訪れる明るい未来は、雲のない明け方の空くらいでしょうか。

 物は言いよう。

 北海道、次点の長崎県。実質最下位の鳥取県。

 都道府県の海岸線の長さは北海道が日本一ですが、群島を持つ長崎県が北海道に次いで2位。実質鳥取県は最下位ですが、実質です。海岸線を持たない県があるため、ゼロとは言い難いでしょう。

 とあるクイズゲームをしていた時、難問として海岸線の長さを問われ、4択の中から高知県と答えると、愛媛県が正解ですとブーを突きつけられました。そこで気になって調べて見たのですが、こういう一見すると取るに足らないような(物は言いよう)データを観測している人もいるのだなあと、世界の広さを実感しました。

 ですが鳥取県。

 まあまあ広い。東京都より広い。大阪府よりも広い。神奈川県や埼玉県、愛知県よりも広い。こうなってくると物は言いよう、あるいは考えようで、ピンと来る人は来る。

 鳥取県、まあまあ広い。県民一人あたりの面積は、まあまあ広い。北海道や岩手県、福島県には及ばないものの、佐賀県以上奈良県未満の県の面積に対して、あまりの人口の少なさに、一人あたりの面積は大きく……物は言いようで、人口密度はかなり低い。

 こうして3つの物の言いようで、物の見方はずいぶんと変わって見えます。ゆえにどんなことも一方的な言い方をすることは難しく、ちょっと待てよ、と考えてみることが、教養の醍醐味の一つ、教養を日々研鑽しておくことの大きな意義ではないでしょうか。

 さて本題。

 最近、栄養サプリメントを勧められました。

 テレビでもしばしば目にしたことがある、BS放送で野球中継を見ていると、「それしかCMないのか?」と感じるような、海由来のやつだったりするやつです。

「キミはやせぎすだから、こういうのを摂取して健康に気を付けたまへよ」

 と言われたのですが、あまりこういうものを、信用に足ると思ったことがありません。というのも、物は言いようで、こういう存在もまた、言いようによって存在が成り立っているのではないかと思うからです。

 グルコサミンが世から静かに消え去ってしばらく経ちました。なぜ消えたのかと言われれば、それは一言、『まったく効果がなかったから』です。膝の軟骨成分に良い! というCMが活発に行われましたが、一方でひそかに行われていた研究により、「なんの成果も得られませんでした!」という発表がなされると、たちまち多くの会社のホームページのラインナップからグルコサミンという文字は姿を消しました。

 これも、物は言いようだからです。

 たしかにグルコサミンによって軟骨成分は形成されているが、このグルコサミンは細胞が生み出すものを利用しており、経口摂取したものについては、なんら効果を得られるものではなかったのです。この結果はグルコサミン商品が世に出回るよりも以前に研究結果として発表されていましたが、物は言いようによって、日本では長らく流通していました。

 少し、物は言いようで、言い換えてみましょう。

 醤油や砂糖、塩などは、人をたちまち死に至らしめる劇物である!!

 と言うことが出来ます。そんなわけないじゃん、と思う心理の発端は、経験と知識とが、無意識のうちに働いているからでしょう。醤油を一気飲みすれば死ぬし、砂糖や塩を袋まるまる飲み込めば死ぬでしょう。これが、物は言いようの、言いようです。

 かといって、大鍋に醤油を一滴垂らしても、小麦粉と卵を練った生地に砂糖を一粒落としても、焼き鳥の先端に塩を一粒まぶしても、これでは意味がありません。小泉進次郎氏のような言いぶりになりますが、『効果を得るための適当な量があって初めて、効果が得られる』のです。

 しじみを山ほど集めたとしても、人間が得られる栄養素は、その可食部の1グラムほどでしょう。しじみには、ビタミンB12が多く含まれています。しじみ汁一杯で、成人が一日に摂取したほうがよい目安の、およそ1000%を得ることが出来ます。

 物は言いようで、しじみを山ほど集めても、たまご1個あれば事足ります。また人体は、過剰な摂取が行われた栄養素に対して、体外へ排出する機能があるため、1000%は無用の長物の塊とも言えます。そしてこのしじみが誇るビタミンB12が欠乏するとどうなるか。

 物は言いよう。なにも起きません。

 あらゆる食品にありふれすぎているので、適当に食事をしていれば一日に必要な摂取目安をあっさりとクリアできてしまうのです。これを欠乏させるには、徹底的な断食を行うしかありません。

 カンの良い人なら、「貧血になるのでは?」と思われるでしょうが、貧血が起きるほとんどのケースは鉄分不足であり、これをしじみで補おうとした場合、鍋一杯のしじみ(それも可食部分を選りすぐる)が必要になり、そのことを勘案すれば、おとなしく小鉢のホウレンソウや卵焼き、レバニラを食べたほうが、圧倒的に効率がよく手っ取り早いです。

 物は言いようで、しじみにはたしかに栄養素があります。ですがこれを大量に集めても、しじみはしじみ、1グラムしかありませんので、ほかのなにかの少量に匹敵する程度しか、得られることが出来ません。

 もっとも大切なことは、『どんなものがどれくらいあれば、どのような効果を得ることが出来うるか』という見地を持っておくことではないでしょうか。

 そもそもあのチャンス、よく聞くと物は言いようで、宣伝としてはなにも言っていないのです。

 ~~に良い! と医療的な効果をうたうと、様々な法律が絡んできます。なので、「これは効きそう!(なにに)」「濃い!(なにが)」「朝もスッキリですね、ダラダラがスカっと!(なんのなにが!)」という、物は言いようのCMを朝から晩まで放送しています。

 またさまざまな栄養素が含まれているといっても、どんな栄養素をどれくらい摂取すると、人体に対してどういう効果が表れるのか、という説明は一切なされません。物は言いようで、コロッケを割るとひき肉、ジャガイモ、たまご、玉ねぎ、小麦粉など、様々な栄養素を含んでいますが、これをしじみ同様に健康に良いという人も、まれでしょう。

 こうして言いようによって、物事は様々な面に対して自由に光を当て、一方で様々な面に影を落として覆い隠すことが出来ます。

 子供のころ、「何時何分何秒!?」と言ったあのセリフもまた、物は言いようで、「なにがどれだけあれば有用!?」と言えなくもないでしょう。

 鍋いっぱいのだし汁に味噌を1グラム入ってるからみそ汁とはならないように、ささがきごぼうと人参の炒め物にしょうゆを一滴垂らしたからきんぴらごぼうとはならないように、言いようの裏面に目を通してみるのも、しじみに対する信頼を、あえて高める行為なのではないでしょうか。

(※個人の感想です。効果・効能を疑うものではありません。)

 


グーグルマップで見る東京から日本の最東端までの大雑把なやつ』(物は言いよう、通信量注意)

日本の海岸線の長さランキング』(環境省はいろんなことを調べてる)

日本の人口密度の高さランキング』(国交省もいろんなことを調べてる)

簡単!栄養andカロリー計算!』(株式会社 栄養計算.com)

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