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都市のBGM

こんにちは福原です。現在10月23日日曜日午後5時30分、池之上にある喫茶店で書いています。タバコが吸えてBGMのない喫茶店。少ないんだ音楽のかからない喫茶店って。前はクラシックとか海外のラジオが流れていたけど、いつからか音楽は消え、聞こえるのは古い換気扇の音、新聞をめくる音、そして近くの踏切の音だけ。ディスってるわけでは全然ないんだけど、この大きな喫煙室みたいな空間が好きだ。Wi-Fiも隣のローソンから飛んでくるのを使えばいい。


地べた音楽祭でDJでした。超最高でした。

BGMで思い出したことがあったのもう少しだけ書くと、20代の中頃、僕は新宿の歌舞伎町にある古い映画館でアルバイトをしていた。そこはシネコンのようなピカピカの内装でもなく完全入れ替え制でもなく、ロビーに音楽が流れることもなかった。いや、実際はうっすら流れていたのかもしれない。けれど扉から漏れて聞こえる映画の音、お客さんの靴音、話し声、歌舞伎町の喧騒に掻き消されていたはずだ。僕はそれらの「音」に囲まれて受付でぼんやり外を眺めたり、チラシを並べたり、本を読んだりするのが大好きだった。日本全国のオールドスクールな映画館で働いていた(いる)人はわかると思うけど、本を読むのはもちろん私物を持ち込むことはご法度。僕も周りもなんどとなくそのことで怒られた。それでも制服のポケットに入るものは何でも詰め込んだ。文庫本はジャケットの内ポケットに入れるのにちょうどよかったのだ。

開演前のアナウンスを終えて扉を閉める。予告編が終わり一瞬の静寂ののちに本編が始まる。物販の売り上げのチェックやポップコーンの仕込みを終えてカウンターに戻り、本の続きを開く。終わった映画の前売り券かチラシの切れ端がしおり代りだった。

映画が終わる15分ほど前になると外へと続くガラスの扉を開ける。すると街の喧騒がロビーに響く。エンドロールを合図に片一方の扉を開けると今度は場内の音がロビーに響く。それは壮大な交響曲の時もあればピアノと歌だけのシンプルなもの、時には環境音や無音の作品もあった。全てが終わって拍手が聞こえることもあった。次の回の予告が始まるまでの15分間、物語と現実は溶け合うことなく混ざりあう。その音の中に身を置くのがたまらなく好きだった。そして都市にBGMはいらないなと思うのだ。

豊橋吹奏楽団の演奏会。楽団員の皆さんの物語を演劇にしました!

池之上の喫茶店が閉まってしまい下北沢はウェンディーズへ。現在午後7時40分。店内ではモダンジャズがかかっている。

地べた音楽祭のことや三重・豊橋と続いたさんぴんの話はまた今度。どれも素晴らしい時間をありがとうございました。書きたいことは山ほどある。けれど書けば書くほどに人生に意味を見出してしまいそう。なので今回はこの辺で。



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https://note.com/beyond_it_all/m/me96780b246d6


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