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人生100年時代を生き抜くためのお金の話【レオス・キャピタルワークス 藤野英人氏×仲木威雄氏×ベター・プレイス代表 森本】

ベター・プレイスでは、「ビジネスを通じて、子育て世代と子どもたちが希望を持てる社会をつくる。」という企業理念を実現していくために、人々が「お金の心配なく」、「自分らしく働ける」社会を創っていくにはどうしたらいいのか、弊社代表取締役である森本が経営者および著名人の方と話し合うYouTube番組を開設しています。
 
今回は、全国で100万人以上が利用している投資信託「ひふみ」シリーズを運用するレオス・キャピタルワークス株式会社の創業者である藤野英人さんと、弊社顧問でもあり、レオス・キャピタルワークスではチーフリスナーとして参画している仲木威雄さん、森本とのスペシャル鼎談の様子をお伝えします。

藤野英人氏
レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役 会長兼社長 
ひふみシリーズ最高投資責任者
 
仲木威雄氏
レオス・キャピタルワークス株式会社 チーフリスナー
ベター・プレイス顧問
 
森本新士
株式会社ベター・プレイス 代表取締役社長

実は日本人は仕事が嫌い!?日本人が「投資」に良いイメージを持てない根本的理由

森本:今回のテーマは「人生100年時代を生き抜くためのお金の話」です。長い人生を生き抜くには「お金」は必要不可欠です。そこでお金のプロである藤野さん、仲木さんに幅広くお話をうかがえたらと思います。

さっそくですが、現在の日本における金融観について、おふたりのご意見をお聞かせください。

仲木:金融というと、多くの方が金融リテラシーの低さや金融教育の問題を俎上に上げます。しかし、わたしは金融の教育というより、教育そのものについて深く思うところがあります。

金融教育で「投資とは」と学ぶより以前に、子どもたちの教育として「働くことの楽しさや仕事をして報酬を得ることへの感謝、その充足感」。こうした気持ちを体験させることが大事だと思います。この辺りについて、藤野さん、いかがでしょうか?
 
藤野:世界的な人材会社のワークライフバランスについての国際調査によると、日本人の「仕事満足度」は世界最低水準でした。さらに、世界の約30か国を対象に「自分の会社は世界で信頼されているか」を聞くと、「信頼されている」と答える人はほぼ半数で、30か国中で1,2を争うくらい低いわけです。日本人の最大の問題は、実は仕事嫌い、会社を信頼していないことです。
 
では、これがなぜ投資に影響するのか、と言うとですね。投資をして、会社を応援して日本を良くしましょうと訴えても、半分以上の人が首をかしげてしまう。なぜなら会社を良くするという考え方がなく、会社が嫌いだからです。資本主義を支える「資本」とは、会社にお金を集めることですが、この根幹が揺らいでいることが、実は大きな問題です。私たちは「仕事」「お金」「投資」について、もっと深く考える必要があると思います。
 
さらに、世界で一番投資のイメージが悪いのも日本です。損する、難しい、騙されるなどのネガティブな言葉ばかりが出てきます。一方で世界では、インベストメント(投資)は儲かる、楽しい、大事なもの、というポジティブワードが並ぶのです。
 
私たちは投資について話をする際に、人生、働く意味や会社とは何かということを、議論しないといけないと思いますね。
 
森本:日本人は長らくエコノミック・アニマルなどと呼ばれて、ひたすら働いてきましたし、それは働くのが好きだからこそだったと思うのですが、今は仕事が嫌いという考えが強いんですね。なぜこのように転換していったのでしょうか?
 
藤野:日本人は今でも勤勉です。しかし、楽しくやるとか工夫するという考え方があまりない。それは子どもの頃から我慢と根性が刷り込まれているからです。その上に30年も続いているデフレ経済が覆いかぶさり、ここ30年ほどは賃金がほとんどあがっていない。仕事は嫌いだけれども、我慢と根性があるからやり続けているような状態になっているのが今の日本です。
 
我慢と根性を持たないでうまくやっているような人はずるいという空気感みたいなものもありますね。そうすると工夫と付加価値で勝負するような人は叩かれてしまいがちで、それがなかなか日本でGAFAのようなベンチャー企業が出てこなかった背景のひとつかなと思います。

金融の魅力をすべての人に。「ファイナンシャル・インクルージョン」とは

森本:では、藤野さんがお考えになっている「ファイナンシャル・インクルージョン」について、詳しく教えていただけますか?
 
藤野:「ファイナンシャル・インクルージョン」は漢字にすると金融包摂、包摂はぐるっと包み込むという意味ですね。シンプルに言うと、金融の魅力を隅々にまでお届けすること。本来金融は、お金持ちの人も、お金がそれほどない人も、誰もが平等に使える大きな武器です。それを一部の人たちが独占している状態は本来の姿ではないから変えていこう!というのが、もともと僕らが会社を作った大きな意味合いです。
 
だから、一部の人だけでなく普通の庶民の人、むしろお金に困っている人たちが金融の武器を持つことによって、貧しい状態から脱却する。もしくは、将来お金が必要な若い人にその武器をお届けするのが僕らの仕事です。
 
僕たちがこだわっているのは個人のお客様です。幅広い、様々なお客様に投資をしていただいて、金融の魅力を感じられる社会を作りたい。つまりそれがファイナンシャル・インクルージョンです。
 
森本:誰もが使えるものが「ファイナンシャル・インクルージョン」の一つの定義だとおっしゃいましたが、誰もが使って一人ひとりが面白くなって、「にこっ」とした笑顔がでたら最高ですよね。
 
藤野:それが「ベター・プレイス」じゃないですか。よりベターな場所を作っていく。「ベター・プレイス」は目標であって、資本を動かして流すという意味の「レオス・キャピタルワークス」は方法ですが、繋がりがあると思いますね。
 
最近、当社の会議の中で、私たちが目指すものは「More than money」(お金以上の何かがを出せることが大事)という話になりました。では「More than money」の何が大事なのか。50歳をこえた私が言うのは恥ずかしかったけれど、言いましたよ。それは「LOVE」だと。
 
社会を良くしたい、お客様を良くしたい、会社を良くしたい。それに対していろんなエネルギーを放射していくことが大事で。単純にお金が集まるだけなら、何の価値も生みません。付加価値を生むために「More than money」が大事で、その中核が「LOVE」なんです。

福祉業界の人の幸せを願って作られた「はぐくみ基金」

仲木:森本さんのベター・プレイスや「はぐくみ基金」も、森本さんの「LOVE」がかなり注入されてできあがったのではないですか?

森本:「はぐくみ基金」はもともと、福祉分野で働いている方の退職金制度がなくなるというご相談を受けて、何かそれに変わるものを作ろうと考えたことがきっかけです。「はぐくみ基金」をやっているだけで、そこで働いている人のお金が積み立てられて、結果幸せになれる制度ができたらいいなと考えたんですね。

設立した当初、僕自身も説明会を行っていました。福岡の説明会で、保育園の栄養士の方が、シングルマザーでお金に余裕がないとおっしゃる。「だったら1,000円からでも積立をしませんか。振り返った時に、お金が溜まっている実感があると思います」とお話ししました。数年後に再会する機会がありまして、「積立ずっとしています、あの時森本さんに言われて、やってよかった」と言っていただいたことは、今でも忘れられません。

保育や介護は世の中に欠かせない仕事だけれど、経済的には苦しい。「はぐくみ基金」でもなんでもいいのですが、振り返ったときにお金が貯まっていて、やっていてよかったなと思っていただけるように、福祉業界関係者300万人のうち、最低でも100万人の方にはお届けしたいと思っています。

世界経済は成長する。そして日本に投資し、企業を一緒に育てていくことも重要

仲木:ひふみ投信にしても、はぐくみ基金にしても、資産形成のお手伝いをしているわけです。ところが、今はウクライナや感染症の影響もあり、物価は上がって株式市場は下がっているため、不安を感じている人もいるでしょう。世界経済について、ぜひ藤野さんから、現状をどう見ているのかをお話をしていただけたらと思うのですが。
 
藤野:短期的に見ると株式は確かに予測不可能です。戦争があったり爆発的な感染症が流行したり、振り回される面はあります。しかし、一番予測が難しいのは1〜3年後であり、5〜10年のスパンで見るといろいろわかることがあります。
 
今、スマホの通信ネットワークが4Gから5Gに切り替わっています。どれくらいかはわかりませんが、5〜10年の間には、6Gになっているでしょう。10年後には、通信速度が10倍ほど速くなる、それに伴って新しいサービスや商品が出てくるのはほぼ確実です。短期的な未来はわからないけれども、長期的にみたら確実に進化していくので、目線を遠くして長いところを見つめると、方向性が見えてくることも多い。
 
お金のことについては一喜一憂しないで、積立投資をしながら10年後を見るのが一番成功しやすいと思います。もちろん私は半年、1年後のことを考えますし予想もします。でもそれ以上に大事なのは10年ほどの未来について努力を続けるということです。
 
森本:世界経済が成長すれば、それによって成長の果実をとって豊かになるということはイメージできます。しかし日本はもう30年以上も給与があがっていませんし、日本にいたら成長の果実に預かれないのでは、という感覚を持つ人もいるのではと思います。
 
たとえば東京なら、どんどんビルがたっていて成長しているのが感じられるかもしれない。でも地方は商店街がシャッター通りになっていく様子を見て、経済の成長を感じづらい。藤野さん、こうした金融や経済成長の実感を持ちづらい方々に伝えたいことはありませんか?
 
藤野:ふたつあります。ひとつは「世界は成長します」ということです。自分の資産を日本だけでなく世界に投資するべきだし、ひふみでも勧めています。世界を良くすることは、日本も良くなるということだからです。でも、同時に日本に投資することもとても大事です。なぜなら、今まで日本が成長しなかったのは、日本人が日本に投資をしなかったからです。僕らがこの国に投資をしないとなると、悪くなる一方です。お金を回すことは一番の成長条件ですから、日本に投資することによって、日本をきちんと成長させましょうということです。
 
もうひとつは、これまでの20年と次の20年はだいぶ変わりそうだということです。その理由は、新時代のずば抜けて優秀な若い経営者がでてきているということ。大谷翔平さんや藤井聡太さんのようなすごい若者が経営者にも出てきていますし、そうした若い経営者たちが昭和型の起業から脱却し、新しい価値観で面白い会社を作っていくと思います。日本に投資するというのは、そうした企業を一緒に育てていくことです。日本は良くなる兆候があるということを、ぜひお伝えしたいですね。

勝つか負けるかではなく、「勝つか学ぶか」と考える

森本:今お話に出た、大谷翔平さんや藤井聡太さんは天才だと思いますが、同時にすごい努力をしていると思うんですね。我慢と根性も相当やっているけれども、わくわくして楽しむことが、彼らの中には同居しているように思えます。では、40代後半から50代の人たちが楽しくワクワクしながら、我慢と根性の世界と今後どう折り合いをつけていくのがよいと思われますか?

藤野:僕は二通りのタイプがいると思っていて、もっとも多いのが「失望最小化戦略」をとっている人。失望したくない、失敗したくないので、たとえば転職などはしない、動かない人ですね。こういう人たちが増えてきたことが、結果的に日本が苦しくなってきた大きな要因だと思います。

一方で「希望最大化戦略」のタイプもいます。うまくいかないかもしれないけど、希望を最大化して、「やってみよう」と動く人です。中高年も若者も、希望最大化戦略の人たちが増えたら、世の中はめちゃめちゃ良くなると思うんです。

ここでぜひ魔法のコトバを覚えてください。

「勝つか負けるか」ではなく「勝つか学ぶか」です。

勝負で考えると、挑戦し続ければ当然ながら負けることもあるでしょう。しかし、痛みがあっても、学びがあれば次の成功に近づきます。すると人生の幅も広がるし、人としての幅もできるし、経験も増えます。そうした「希望最大化戦略」の人が増えれば日本の未来はだいぶ明るくなるでしょう。

投資は、お金を増やすサイクルではなくて、未来に向かってエネルギーを注入し、そして未来からお返しをもらうことです。だから投資は、株式だけではありません。自己投資、教育投資、設備投資、いろいろあって、ぜひ皆さんにどれでもいいからチャレンジしていただきたいと思います。


▼レオス・キャピタルワークスが運営するnote「ひふみラボ note」 


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