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大学教養教育における体育・スポーツ教育観

私は大学教養教育における体育・スポーツ教育には,大学審議会の「21世紀答申」で示された「学問のすそ野を広げ,様々な角度から物事を見ることができる能力や,自主的・総合的に考え,的確に判断する能力,豊かな人間性を養い,自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標を果たす要素を非常に多く含んでいると考えています.

スポーツは必ず複数の人間が様々な役割を担いながら携わるものです.そのためスポーツをするということは,必ず誰かと関わることとなります.スポーツの楽しみ方や,上手になるための方法は人それぞれに違いがあり,ましてや大学の講義におけるスポーツとなれば,これまで競技してきた種目が違う者同士で活動することもあり得ます.楽しみたくて受講している学生や得意だからと受講している学生,運動が苦手だけど必要単位取得のために受講している学生もいるでしょう.そして講義自体も,自身が專門とする競技以外の競技の実践や座学を通して,これまでには得られなかったスポーツ観や競技力向上のヒントを得られる可能性があります.

スポーツには相互作用を促す場面が比較的多くあります.講義時間内では他人とのコミュニケーションが比較的生まれやすい環境下にもあります.こうした環境下に考え方や価値観が違う者が集まり,同じ空間・雰囲気を共有して互いに意見や協力を得ながら受講する事は,物事の捉え方の多様性を知る事,物事を多面的・多角的にとらえることを促す機会となり得ると考える事ができます.

また人の学習では,知識・情報をそれぞれの人が,それぞれ過去に得た経験や情報を組み合わせ統合しながら個人内で体系化していく必要があります.そのためには,物事の法則性を見出すことや,事実を詳細に説明できるようにならなければなりません.

スポーツでは,実際に自身の体を使いながら知見(教科書にある内容)を用いて実験する事ができます.例えば,様々な条件下での最大酸素摂取量を測定し(身長と最大酸素摂取量,腹囲と最大酸素摂取量など),その結果から法則性を見出すことなどがあります.

自身で仮説を立て,自ら被験者として運動しつつ測定し,また周りの学生のデータも集めて分析するのです.これにより,物事の原因と結果の関係を理解しながら学習し,専門的知識としてのスポーツ生理学の知見を実践を通しながらより深く理解することに役立てられると考えられます.

また,さらにこの結果から得た情報を自身の競技活動に活用するために,様々な先行研究を閲覧して考察を行えば,その作業は幅広く学問領域の知識を援用する必要があるため,複合的・総合的な学びを得る事ができるでしょう.

このように,体育・スポーツ教育は専門的知識を複合的に応用しながら活動ができるという点で,大学教養教育において非常に意義のあるものであると考えています.

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