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「自由を扱う」をテーマにした練習の実践録(その2)

この記事では、「自由を扱う」をテーマにした練習の実施の様子についてまとめてみたいと思います。

1日目

練習開始前に、この3日間の練習のテーマとして「自由を扱う」ことを掲げていることを選手に伝えました。主体性をキーワードに、練習は選手自身のもの、自分を上手くできるのも自分自身であることといった話をし、練習メニューを伝えて練習開始しました。また、2日目は紅白戦をするので、紅白戦に備え試合を意識して取り組むようにアドバイスしました。初日は練習の方針とテーマ、それぞれのメニューを伝え、意識するポイントのみ説明して細かく指摘することなどは控えることにしていました。練習中に気づいたことなども、その場で指摘するのではなく、練習の終了時にフィードバックすることとし、練習中はほとんど介入しないこととしました。
理由としては、主体性を尊重し自由度のある練習を方針として伝えていたため、指摘を途中で入れるのは自由度の妨げになると思われるからです。コーチの立場からすると指摘したくなることでも、選手はチャンレンジの最中の一つなのかもしれません。選手側からすれば、自分のやり方が確立していない中で自由度のある練習をするということは、それなりの試行錯誤が必要となります。そうした試行錯誤の機会があるからこそ、考えることにつながると考えられるので、とにかく初日は介入せずによく観察し、フィードバックするべき内容をピックアップすることと、翌日以降の練習についてどのように繋げていくかを考えていました。

9:00〜 ウォーミングアップ

30分の時間を使ってウォーミングアップするよう指示しました。
また、暑熱対策としてユニフォームではなく半ズボンのジャージでアップしても良いこととしました。
アップの様子を観察していると、黙々と自分なりに体を動かしている選手、仲の良い選手同士で協力してトレーニングしている選手、おしゃべりをしながらリラックスした様子で走っている選手、ただおしゃべりしている選手など行動はバラバラでした。
ただおしゃべりしているだけの選手に対しては、本来であれば注意をするべきところかもしれませんが、今日はとにかく介入しない日として観察にとどめました。怪我のリスクも伴いますが、よく観察し様子を伺い続けようと判断しました。
私は選手のアップするそばで、観察しながら、同級生のストレッチを手伝ったりしました。

9:30〜キャッチボール・ペッパー

練習メニュー間のメリハリについても特に指示することなく様子を見ていました。私の視点では緊張感が少し不足するような様子でしたが、ここでも介入はしませんでした。

10:00〜ドリルノック・内外連携

ドリルノックの開始前に、メニューのやり方について説明したのちに次の話をしました。
「制約のある時間の中でいかに質の高い練習を行うか。時間が短い中で今までと同じ練習の効果を得るには工夫が必要。短い時間の練習でも満足度もあり技術習得に効果があると言える練習を行えるようになれば,今までより合理的・効率的・経済的に練習を行えるようになれる。」
「練習中に何かあれば話し合いに時間を費やしても構わない。上手くなるためのことであれば、どのようにやっても良い。早いペースで数多く練習しても良いし、一球一球大事にするためにゆっくりやっても良い。」
「時間を上手く使って練習しなさい」

2時間という時間が充実するものならOKだよと私の評価基準を示し、話し合いに時間を使うのもよし、教えあいに時間を使うもよし、ひたすら数をこなすのもよしで、練習をスタートさせました。

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練習の内容については既に投稿した記事を参照していただければと思います。それぞれのグループの様子を観察していると、

●活気はイマイチ
●創意工夫というより初めてのメニューに刺激を受けているだけの様子

といった様子が感じられました。
ここでも、練習中に介入することはなく、観察に徹しました。
観察していると、なんとなく練習の意図を感じ取ってはいるが、”自分なり”にこうしたい、ああしたいという主張をして良いのかどうか様子を見ている雰囲気があるようでした。ここで介入しても良いのかもしれませんが、あくまでも「自由を扱う」がテーマであり、自由を扱う難しさを感じることも大事なことだと思っていたので、ミーティングで話す内容として控えるのみとしました。
外野手はメニューを特別に指示はしていませんでしたが、上級生が率先してメニューを組んでいました。下級生の面倒を見ていた選手が主導していたので、過去の経験で得たリーダーシップと知識を活用している様子が伺えました。

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ドリルノックの後は、内外連携として全員でノックを行い、外野手のボール2つ・3つ・4つの連携を行いました。

11:00〜ミーティング

ここで、練習開始からの様子を踏まえて私から話をしました。
「今日のこれまでの練習を通してどれだけの成果を得たか?」
「何が得られたか具体的に挙げられるか?」
「充実感は感じられているか?あっさり終わった感覚になっていないか?」
「もし、成果を感じられていないようであれば、練習の取り組み方には改善が必要。その改善については、それぞれのグループで話し合っていく必要がる」
「明日紅白戦と説明していたが、その準備は出来たのか?」
といったように発問し、練習自体の評価についてはノックはもっと活気が出ても良いというくらいにとどめ、選手それぞれで自己内評価を促しました。

11:30〜打撃練習

打撃練習は自主参加制であること、明日紅白戦であることを踏まえて結果を出せるようにそれぞれに必要な練習をするように話しました。また、練習が不要な選手はここで切り上げて帰宅しても良いことを伝えました。また、帰宅することは悪いことではなく、休養も大切であること、練習を継続する選手は帰宅する選手を責めることは間違いであることを説明しました。帰宅することはサボったことであると解釈されることは間違いであると、しっかり説明していないと、意図的に休養を選択した選手の自由が妨げられます。練習のテーマは「自由を扱う」。その自由としての選択肢の一つであることを十分に説明することは丁寧に行いました。ただし、全ての選手に「今日の選択は明日の結果につながる。今日仮に練習していなくて明日の紅白戦で結果が出なかったとしても自己責任。練習をするかしないか、どんな練習をするのか、全て自分たちで決めていくため、当然結果に対する責任も負うことになる」と話しました。
実際にミーティング後には、半数以上の選手がグランドに残って練習を継続していました。またその半数以上の選手の中でも、フリー打撃に参加した選手もいればティー打撃を行う選手、空いたスペースで守備練習を継続する選手など、それぞれの選手の課題に合わせて練習に取り組んでいました。
しかし、フリー打撃に参加している選手は、ずっと同じゲージで打ち続けている選手が数名おり、打ちたいと思っている選手の順番が上手く回っていない様子が見られました。こちらはすぐに指摘するのではなく、明日の紅白戦後に紅白戦の結果と共に指摘することとし、この場でも介入はしませんでした。

12:30〜自主練習

自主練習にも多くの選手が残っていました。
そしてここで2年生の選手が私のもとに来て、練習の取り組み方について相談を受けました。その選手の様子では、こうした練習で手応えを感じている様子で、次の練習においての改善案などを話してくれました。こうした選手が初日から出てきたのは一つの私の手応えとなりました。その選手には、「自分なりの考えをしっかり持って取り組むことが大切。形にしていくために周りの選手を巻き込んでリードしていっても構わない。」とコメントしました。

初日の練習を終えてみて、練習の中身自体を問うとまだまだ物足りない部分はあれど、初日だからこそ選手自身も何を変化させていけば良いのかが掴めていなかったのだろうという様子であり、積極的に練習に取り組んでいる選手も伺えて手応えがありました。1日目は介入することなく気になる点をメモに控えておくのみとし、ミーティングにおいて時間をかけてメモをもとに発問し、投げかけ、またテーマと比較するとテーマに沿った取り組みだったのか省察するよう促すことに徹しました。これはフィードバックが2日目3日目に繋がっていくことを期待してのことです。

次の記事では2日目以降の様子をまとめます。

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