立てたリサーチクエスチョンの評価を考えてみる
研究活動を行なっていく上では、先行研究を収集し、研究課題を見出し、リサーチクエスチョンを立てていくことが重要ですね。
ここでは有益な研究を実施していくための、立てたリサーチクエスチョンの評価に関する私の考え方をまとめてみたいと思います。
また私の専門のコーチング学に当てはめて述べていきます。
(コーチング学はスポーツ現場における指導に関わる学問領域です。)
では早速。
リサーチクエスチョンを精査する上で、個人的なイメージでは
”明らかにされようとしている知見の指導現場にとっての必要度+明らかにすることの難解さ=本当に必要な研究”
このような式を考えています。
これは以下の書籍の内容を元に私なりに改変したものです。
この式は、評価点が高いほど必要な研究として実施するべきものと判断するものです。
ここで一度コーチング学の定義を振り返りましょう。
コーチング学研究は「スポーツの練習と指導に関する理論」「練習と指導に関する一般理論」の構築を行うものでした。
ではそのコーチング学研究の成果が蓄積された結果として得られる効果としてはどのようなものになるでしょうか。
ここでは私なりに
「現場でのより良い指導法の確立によるスポーツ指導者の支援、ならびに効果的な指導による結果としてアスリートのパフォーマンス向上と身体的健康、心理的幸福感の獲得」
と仮定してみました。
これを踏まえ、先に記した式を解説してみます。
まず、左辺の初めの”明らかにされようとしている知見の指導現場にとっての必要度”についてです。
ここでは、このリサーチクエスチョンによって明かされる結果がどのくらい現場にとって必要なものであるかを仮定します。
これはあくまでも見込みです。
この必要度を算出するために以下の②点の工程を踏みます。
①立てたリサーチ・クエスチョンに対して想定できるだけ複数のパターンの仮説を立てる
②立てた仮説は立証されることでどのくらい現場にとって有用な知見(必要性の高さ)になるのか、エビデンスや現場の視点を踏まえて点数化(評価)する
※点数化は任意。1〜10で点数化するのが分かりやすいでしょうか。
ここで算出された点数が左辺の”明らかにされようとしている知見の指導現場にとっての必要度”に入ります。
次に、”明らかにすることの難解さ”です。
ここでは、このリサーチクエスチョンを明らかにしていくことに対する難解さ・難易度です。
明らかにすることが難しければ難しいほど、研究で立証することに大きな意義があると考えられます。
また、立証が容易であれば、現場の指導の中で答えを導き出せるかもしれません。
研究として取り組むことの意義の評価としても考えることが出来るでしょう。
この工程では次の点数化を行います。
③リサーチクエスチョンを立証する上での研究実施の難しさ(費やす時間・費用・労力・人的資源…)を点数化する
※点数化は任意。1〜10がおすすめ。難しければ高い得点。
ここで算出された点数が左辺の”明らかにすることの難解さ”に入ります。
ここまで点数化すれば、次に総合評価です。
●②も③も高評価
→現場にとって有用な研究になる見込みが高く、かつ本格的な研究でないと明らかに出来ない。
◆②が高評価で③が低評価
→現場にとって有用なリサーチクエスチョンだが、明らかにするのが容易。
現場の指導の中で答えを見出せるかもしれない。
■②が低評価で③が高評価
→現場にとって有用とは考えられず、研究実施も難易度が高い。
▲②も③も低評価
→現場にとって有用とは考えられないが、研究実施は容易である。
これを参考に、②も③も高評価であるリサーチクエスチョンであれば優先的に研究を進めようと考えます。
現場にとって有用な研究になる見込みがあり、立証に非常に難易度があるならば、研究として取り組むべき課題であると考えることが出来そうです。
また、先の②や③の得点が低い場合は、評価をそのままに決めず、第三者の専門的知識のある者に再評価を求めると良いでしょう。
自身の仮説に対する評価が妥当かどうかを再確認する必要があります。
もしかしたら、自分自身が気づいていない研究価値が存在している可能性もありますし、研究実施における難易度の想定が甘い可能性も否めません。
高評価の場合も再評価を求めても良いかもしれませんね。
このようにして、リサーチクエスチョンを評価していくことで、研究の場に立つ者として実施すべきである研究テーマを選別していく一つの基準を作ることが出来ます。
この基準を参考にして現場で有益となる研究を考えていくと良いでしょう。
良い研究を実施していくには、研究デザインに対する評価を行なっておくことも大切です。
その参考としてこの考え方を活用していただければ幸いです。
引用参考文献
安宅(2010)イシューからはじめよ.英治出版.
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