風景よそのままであれ

ひび割れたプランターの内の地表では
コスモスとサルビアと雑草が生存競争中
無関心な風はその生命の群落を軽く薙いで
オオタニワタリの葉先から垂れ下がる雫をも振り落とす
空き家のコンクリートの壁の鉄筋が剥き出しになっている昼間
「風景よそのままであれ」
と脳内で復唱した
目の前の映像は高画質かつ滑らか
だけど巻き戻しや一時停止はできない
二度とつかまえることができない瞬間がさらに細切れになって
トックリキワタの綿毛のように吹き散らされた夕方 ふたたび
「風景よそのままであれ」
と心から希った

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