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「ホップステップだうん!」 Vol.196

今号の内容
・巻頭写真 「オンラインミーティング練習会」 江連麻紀
・続「技法以前」168 向谷地生良 「同期の世界- 非一貫性から一貫性へ」
・ 第1回 「あつまれ BaseCampの森~!」
・ギャンブル依存の研究 しついさいはて
・福祉職のための<経営学> 058 向谷地宣明 「存在と時間」
・ぱぴぷぺぽ通信(すずきゆうこ)「見あげてごらん」


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北海道の浦河町でうまれた「当事者研究」の輪が全国に広まってきていますが、昨今全国では新型コロナウィルスの感染拡大予防から、様々な活動の自粛が求められ、当事者の自助活動もまた新たな苦労と直面する事態となっています。

そのような状況のなかで、web会議ツール(ZOOM)を活用し、改めて当事者研究を通した繋がりを再確認し、今後の当事者研究ネットワークへの思いを分かち合う機会を作ろうと、有志の方々にご協力いただき、オンラインミーティングのシステム練習会が行われました。

ミスターべてるの早坂潔さんの開会の言葉からはじまり、べてるの家のスタッフとメンバーは歌と踊り、研究発表をしました。途中、メンバーの松本さんの歌声で向谷地生良さんの声が聞こえなくなり、パソコンの画面からもべてるの家の空気感を感じられました。

練習会に参加した方から「全国の当事者研究をしている知らない団体とも知り合える機会になりそうでうれしい。」「べてるまつりや、全国当事者研究交流会に参加したくてもできなかった方たちもこれからは参加できるようになるかもしれないね。」という感想がありました。

タイムラグやミュートのオンラインならではの苦労もありましたが、オンラインの可能性を感じられた時間でした。べてるの家では今後もオンライン研修を重ねて、つながる計画を検討しています。

向谷地生良さんは「ZOOMだけじゃなく、ネットを使った交流にチャレンジして、成果をよせてもらえたら。」と言われていました。

今後の当事者研究の新しいつながりや広がりが楽しみです。

(写真/江連麻紀)

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続「技法以前」168 向谷地生良

「同期の世界- 非一貫性から一貫性へ」


「この世界は同期という現象の中で営まれている」

この命題に捉えられてから、私たちが「対話」として理解している人と人との関係、コミュニケーションも、広くは複雑系科学や量子論の世界ともつながる壮大な領域の一部と化すのです。その文脈から考えると、カウンセリングや心理療法は、基本的に操作的な営みですが、対話は極めて生命的な営みということができます。

その対話を考える時に私がイメージするのは、雪に埋まった車をみんなで押すとき、または、大きな岩を動かすときです。ただ闇雲に押しても車や岩は動きません。むしろ、お互いの力が干渉しあって、動かないこともあります。しかし、立ち位置を確認し、力の入れ方やタイミングを計り、声をかけあい、リズムが生まれることで、一人一人の力が増幅されて、重いものを動かすことができるのです。昔、労働の現場で謳われた民謡などは、コヒーレンスを生み出すために工夫されたものと言えます。

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これに近いのが、レーザー光線です。私たちが普段見ている光は、光線が四方八方に散らばるように拡散していて「非干渉性」のインコヒーレンスと呼ばれる状態になっています。それに対して、レーザー光線は、同じ方向に向かうため「可干渉性」のコヒーレンスと呼ばれる状態をつくりだし非常に強力な光線を発します。

最近、同期現象で面白かったのは、昨年11月に「 NHK視点・論点」で取り上げられていた大阪大学の研究者(中野珠実准教授)による「まばたきの意外な役割」という放送です。(NHK視点。論点ホームページ参照)内容を要約すると、まず、「人間はなぜ、瞬きをするのか」と聞かれたら、多くの人は「目を保護するため」と答えると思います。人間は、3秒に1回無意識のうちに瞬きをしているそうですが、なぜ人は瞬きをするのかは、分かっていないそうです。そこで、大阪大学で「瞬きの研究」がはじまりました。

研究で、分かったことがあります。それは、1)人の精神状態によって瞬きの発生頻度は大きく変化すること。2)ゲームやパソコン作業など視覚作業をしているとき、瞬きの発生は抑制される。3)人前で緊張して話すときや難しい問題を解いているとき、瞬きの回数は増加する。4)疲れているときや退屈しているときも瞬きの回数は増加する、というものです。

そこで、「瞬きが何らかの脳の情報処理との関係で生じている可能性」を想定し、「同じ映像を見ているときには、皆が同じタイミングで瞬きをするのではないか」と考え研究計画を練り、そこで、世界的に有名なイギリスのコメディアン「Mr.Bean」の映画を観てもらいました。「映画を見ている時の瞬きのタイミングが揃っているか」を調べたところ、すると、「瞬きのタイミングは、0.6秒以内いう短い時間差で同期して発生している」ことがわかったそうです。特に「人々の瞬きが揃って生じるのは、主人公の動作の切れ目や繰り返しのシーンなど、映像の暗黙裡の句読点で生じている」ことがわかったのです。

このように、私たちの生体は、さまざまな同期のネットワークの中に活かされているのです。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。

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第1回 【あつまれ BaseCampの森~!】

わたしたちは「就労継続支援B型BaseCamp」(https://base.or.jp/)です。
東京都豊島区で、当事者研究を大事にしながら、はたらいたり活動しています。

今回からわたしたちの活動や仲間を紹介していきます~!
第1回目は、BaseCampメンバーちひろさんとその作品(詩、イラスト)を紹介いたします。

《BaseCampメンバーの自己紹介》
ベースキャンプメンバーのちひろです。
ちーちゃんとか気軽に呼んでください。
自己病名は『ちーちゃんは時間アレルギー、今日も幻聴さんがきこえる。』です。
私は、統合失調症です。
時間アレルギーとは、時間がときどき苦しくなるという症状です。
幻聴さんもきこえます。
詩や踊ったり、表現することがすきです。よろしくお願いします。

《詩》
『午後13:00』
精神科の閉鎖病棟に入院してる時 ときどきお母さんはきてくれた。
13:00になるとどんどんわくわくしてきて、NHKののど自慢を見ながらわくわくしていた。
ナースステーションに電話がくる。
お母さんが下に着いた合図だ。
お母さんがエレベーターから上がってきてお母さんに会える。
初めて病棟で会った時は泣きそうになった。

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《BaseCampからのお知らせ》
・BaseCampでは、さまざまなイベントを開催することを仕事にしてきました。今、集まってのイベントが難しいなか「オンラインイベント」を開催しております。次回は5月23日開催予定です。詳しくはホームページをご覧くださいませ。(https://base.or.jp/)
オンラインイベントの大海におそるおそる飛び出したBaseCampをよろしくお願いいたします。
・NPO法人BASEの会員募集について
就労継続支援B型BaseCampを運営するNPO法人BASEでは会員を募集しております。ぜひよろしくお願いいたします。
https://npobase.peatix.com via
・YOUTUBEチャンネル開設しました!
https://www.youtube.com/channel/UCl4RVUo2XwzfZRPIxxQ7m4g
今後ライブ配信なども積極的に行えたらと思っております。チャンネル登録をお願いいたします。

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