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いんよう/居候の二人を紹介(初)

 今日は、うちに一緒に住んでいる幼い二人について話そうと思う。この話しを明確にするのはなにげに初。

 二人は、一歳違いの男の子である。
 それぞれ誰とも血が繋がっていない、孤児であり、親を知らない。物心わかるようになってきた年頃で、私に託された。一定の経済力をもっているのでどうかと。

 二人ともよく発育し、とくに弟はよく食べてよく動かないので体格がふくよかで比較2倍は体重・体積がある。

 兄のほうは、おしゃれなイケメンである。

 黒が好きで、いつも黒っぽい格好をしている。つんとすまして、窓辺で遠くを見ていることが多い、詩人である。いつも物思いにふけっている。おとなしく寡黙だが、実際は透き通った良い声をしている。
 つんとすましているのは、実は照れ隠しである。
 私にも、誰に対しても、とくに弟に対して遠慮がちである。おやつを欲しがらない。お腹が空いていても何も言わず我慢していることがある。シャイで、恥ずかしがり屋である。であるが、ときどき弟のちょっかいについ手を出して遊んでしまうことがあり、そんな時決まってすぐに、そのことを自覚して止め、照れてそっぽ向く。本当は遊びたい、本当はまだ子供なのだ。
 洗顔を欠かさず、お風呂好きで、清潔である。
 頭がよく成績優秀。エドガー・アラン・ポーの短編ミステリが好き。youtubeは東方や、「アリスシャッハと魔法の楽団」あたりが好きみたい。

 私と彼の間には、一定の緊張感がいつも漂っている。

 たまに無言で私が作業している部屋に来て、書棚の私の本を無断でとって読み、そのうちいつのまにか私のベッドで寝ていることがある。その寝顔を見たいならば、それまでに気づいたことを悟られるのは厳禁ね。彼は、本当は寂しがり屋さんなのだ。そして彼は、愛することを知っている。そう感じる。私は人を愛することが苦手なので、それにあまり応えてあげれていない。できれば溺愛してあげたい。彼もそれを本当は欲しているのではないか。そう感じる。でも、できない。私と彼の間には、一定の緊張感がいつも漂っている。

 弟のほうは、体が大きいことは既に述べた。

 その体にさらに大きめのサイズでだぼっとした、いつも白っぽい格好をしている。というかあまり選ばない。
 いつもリビングの絨毯の上でごろんとしている。ずぼらでだらしない。リビングは他にTVとゲーム機たち(映画鑑賞もこれで)、低い木製カフェテーブルと濃い色のベルベット生地のソファがある居心地の良い空間だ。彼はゲームは遊ぶが上手くないようで、それ以上にyoutubeでゲーム実況を見るのが好き。このあたり。

 面白いものを探す嗅覚はすぐれたもので、それは大変私にも役に立っている。

 彼は整理というものができない。遊んだ後や食事の後の片付けもできないし、勉強も好きではない。どのように学べば良いかが分かっていない。成績はまあまあではある。言わないとやるべきことをやらない。私はいつも文句をぐちぐちいいながら、私が片付けたり、手伝ってやるが、彼は私にそうやって構われるだけで嬉しいのか、喜んでいる風で、反省の色を見せない。そして彼は私の嫌いな、おしゃべりさんである。間が悪くなければ彼は何かと喋っていて、それは独り言であったり、私と会話したがったり、兄に話しかけたり。可哀想ではあるが私も兄も喋るのが極端に嫌いなので軽くあしらうばかりできちんと取り合わないのであるが、彼は全くめげずにおしゃべりを繰り返す。私たちが嫌がっている、という気持ちにはまったく感度が無いようだ(そこに彼の感受性があるならば私たちは相当ひどいことをしていると思う)。

 思考と口が直結しているタイプ

 たまにいると思うが、思考と口が直結しているタイプ。頭に思ったこと、考えていることをそのまま全て口に吐き出す人。私にとってそれは考えられない行為であるが…。おそらく体の造り自体が違くて、回路が直結しているのだろう。しかし、変なことを考えて言ってしまったりしないのであろうか?不思議なのであるがその口から出てくる言葉は下賤なものは、あまり無い。純粋でシンプルである。一応フィルタリングしているのだろうか?そのくせ、「今、○○って言ったよね?」と聞き返すと、きょとんとして、「そうだっけ?」と返してくることもしばしば。自分が直前に言ったことすら覚えていないことが多い。これはどういうことだ…。
 SNSでもそういう人はいる。考えていることを延々と喋るように書いているタイプ。明らかに誰かに語りかけているのだが、その対象は不特定多数のつもりのようだ。彼女・彼らは誰かが見ていなくてもそうするのだろうか?誰もみていないからやめれば?と指摘するのはとても失礼であるのでしないが、その時どう反応するだろう?多分、ムキになって猛反撃してきて、その後さらに行動は倍増しそうだ。
 逆に、自分のようなあまり喋らない、思考を口にしないタイプはどうだ。といってもたまに自論をまとめて整理して記事にしたりはするのはご存知の通りである。しかし普段はだんまりである。発声が苦手というのもある。知人が、FFもしくはフォローさん(私が一方的に見ている方)が、または世間で、社会で何か「こと」があったとしても、動じないし、考えはするが滅多にそれについて語らない。実は何か事件があるたびに四方八方を調べてその上で自分のスタンス、というものを定めておくという作業を毎回、しているのだが。しかし滅多にそれを公表しない。見ていられない時のみ発信してしまうことがあるが、はしたないな、と後で後悔することもしばしば。そっ消しすることもしばしば。
 よく喋る人はそれしか考えていないのか、と思ってしまうことがある。それこそ失礼であるが…。しかし、アウトプットしながら自分の思考を整理しているのかもしれない。そういえばクラスに暗読できず困っている子が一人は居たな…。やはり構造の問題に違いない。

 ごはん大好きなくせに

 我が家のリビングはマンションでは普通なリビングダイニングプラスキッチン、であるのだが、そのダイニング側にはちょっといい北欧家具の大きな円形のバタフライテーブル(広げたこと無い)、その頭上には同じく北欧・デンマークの照明ブランド、ポールセンのUFOのような形の照明が天井からぶら下がっている。チェアはイームズ。そこでかしこまって食事をするのが私の趣味なのだが、彼はごはんの時間が近づくとまだ私が用意もできていないのにそこで何かしているフリ、すなわちごはん待機をしていることがある。また、私が時間を忘れて自室で作業に没頭していると、たまに部屋のすぐ外(ダイニング側)の近い席で待っていることがある。出待ちをしているのだ。ごはんについては積極的に催促してこない、彼にも恥ずかしいということがあるのか。ごはん大好きなくせに。しかし、彼が一番の早起きなので、毎朝太陽が出たころの時間に私を「おはよう、朝」と起こしに来る。ようするに朝食が欲しいのだが、私はもっと寝ていたいのだが。おかげで私毎日二度寝している。

 彼は可愛げがある…というよりもふてぶてしい。

私の責任

 彼らと一緒に生活するようになってしばらくになる。彼らとの将来をどうしよう?私には責任感とか、あまり実感がない。考えられていない。
 兄は、前の居場所ではいじめられていたそうだ。今はこの静かな生活を気に入ってくれているだろうか。弟のほうは、孤児であるが悪い境遇ではなかった。どうしてうちへ来たのか?明確な理由を思い出せない。ただ、非常に私のもとへ来たがっている、と感じたのを覚えている。澄んだオッドアイの瞳がとてもきらきらしていたのを覚えている。
 彼はいま、幸せだろうか…。

 私はいま、それぞれが順番に我が家に来た時のことを思い出す。
 弟が大きな病気で手術をした時に私本当に心配で恐怖を感じたことを思い出す。彼も恐怖に震えていたが、頑張った。

 私はいま、彼らのことを思うと胸があつくなるのを禁じ得ない。彼らの一生に、責任をもたねばならないということ。彼らを、不仕合わせにしてはならないということ。彼らを、居候のような扱いではなく、家族なのだから、もっと愛情をもって接してあげねばならないということを。私は人を愛することが苦手なので、それにあまり応えてあげれていない。ごはんは忘れるが彼らの飲み水は絶対に切らしてはならないと思っている。そして、彼らは先に逝くと思うが、その時は、穏やかに満足して天に召されて欲しいと、

 切に願う。


二人は兄を先に亡くしている。


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