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スーパースターは超努力の人だった〜長嶋茂雄「野球は人生そのものだ」を読んだ。

ミスター・プロ野球、長嶋茂雄が2007年7月に、日経新聞に「私の履歴書」として連載したものが底本になっている自叙伝的な本。単行本は2009年初版、文庫本は2020年初版。

野球は人生そのものだ表紙


先日、めずらしく野球ネタで記事を書いたところ、


・・いつもの競馬ネタよりもスキがすこし多めについた。

日本シリーズ直後に書いたので、タイムリーだったためか、閲覧数の伸びもよかったし、野球ファン人口の方が競馬ファン人口より多いのかな、とも思った。


・・その後、「そういえば、松井秀喜はどうして巨人の監督に就任しないのかな?」という疑問が湧き、松井秀喜関連の本を2冊読みnoteで記事にもした。

■伊集院静著の松井本


■松井自身の本


2冊読んだことで、松井秀喜の考え方や価値観について、理解が深まった。
(巨人の監督には、いつかなるかもしれないけど、向こう何年はなさそう、という印象を持った。)


そして、今日感想記事を書いてみたいのは、またしても「野球本」。


長嶋茂雄日本プロ野球、日本プロスポーツの最大のスーパースターと言ってもいいのではないだろうか。長嶋茂雄自身が、子ども時代含めた野球人生について語っている本は、意外と多くはないのでは?(プロ野球監督経験者の本というと、野村克也の本が圧倒的に多そう。)

長嶋茂雄 ー 私自身としては、選手時代(1958年〜1974年)、第一次政権(1975年〜1980年)時代はリアルタイムで見ていない。ただ、その後の王監督だった時はかなり夢中で巨人のゲームを見ており、王さんの凄さは知っており、王さんと横並び(あるいは人気では上?)の存在である長嶋茂雄について、当時はインターネットなどはなかったが、父親が買ってくるNumberや、自分の小遣いで買ったプロ野球の歴史みたいな本で、よく知っていた。

その後、1992年シーズンオフに復帰が発表され、1993年〜2001年に第二次政権となるが、個人的にこの時期に”野球離れ、巨人離れ”が進行したこともあり、意外と長嶋茂雄についての理解は、子どもの頃の印象にとどまっていた気がする。
とはいえ、自分では長嶋茂雄のことを、”よく知っているつもり”だった。


・・しかし、この本を読んでみると、自分が思っていたよりも、子供時代、学生時代、選手時代、監督時代と、それぞれの時代で多くの苦労、逆境を乗り越えてきた人だったんだな、と理解が改まった部分が多かった。

長嶋茂雄というと、特にテレビ番組などでは、天真爛漫な性格、おかしな英語フレーズ、エピソードによってはド天然ー例えば、長男の長嶋一茂を球場に置き忘れて帰宅してしまったー、などの面が強調されがちな気がする。

そのせいか、なんとなく”天才肌(あまり努力家ではない)”という印象を持っている人も多いかもしれない。

しかしこの本を読み、この記事のタイトルにも書いたとおり、”大変な努力の人”であることがよくわかった。

すこし引用すると、、

 私の本質というのは、天才肌でもなんでもない。夜中の一時、二時に苦闘してバットを振っている。人がいなくなったところでは、自分との技への血みどろの格闘をひとりで必死にやっていた。

 プロとは夢を売る商売。だったらお客さんにいいものだけをお見せするべきだ。暗い隠れた部分は絶対にお見せするべきではない。

”一茂置き忘れ事件”についても触れている部分があった。なんでも、その日のゲームで打っては4タコ、守ってはエラーといいところがなく、怒り心頭、ゲーム後は急いで帰宅して素振りをすることしか頭になく、それで置き忘れてしまった、というのが真相だったそうだ。(ただのポカではない。)


感想として持ったのは、長嶋茂雄の”プロたるものこうあるべき”というプロ意識は、そのまま弟子である松井秀喜にも継承されている、ということ。

・・松井本、長嶋本と、続けて読んだことで、すごく腹に落ちた。

長嶋ー松井と継承された高いプロ意識を、ぜひ松井・巨人監督誕生の暁には、次の世代に受け継いで欲しい、とも思った。


しかし、この本に掲載されている写真、とにかく華のあるものばかり。

よく、ひとりの人間に、これだけの名場面があるものだと、改めて驚く。

▼プロ入り2年目、天覧試合のサヨナラホームラン。

▼1974年、引退セレモニー。「わが巨人軍は永久に不滅です」は有名すぎるフレーズ。

▼1992年のドラフト会議。松井秀喜の交渉権を引当ててのドヤ顔。

▼1994年、伝説の「10・8」対決で中日に勝利しセリーグ優勝、西武との日本シリーズも制し、監督として初の日本一となり胴上げされる。


・・これらの華やかさの陰に、不断の努力が隠されていたことを知れたこと、また、逆境の数々を乗り越えてこその華やかな場面だったことを思い知った。

先の東京五輪開会式での聖火リレーも、脳梗塞後の懸命なリハビリという逆境を乗り越えたもの。本当のスーパースターだと思う。

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