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営業部員が考える「リアル書店」が必要な理由|文春社員図鑑08:二瓶仁志

株式会社文藝春秋の2021年新卒採用が始まりました! 採用HPも公開になりました。そこで文春note部では、「#文春社員図鑑」として様々な部署の社員をゆるく紹介していきます。

第8弾は、書籍営業部の二瓶さんにお話を伺いました。

■二瓶仁志(にへい・ひとし)
現在までの経歴
2013.03月 入社
2013.04月 週刊文春編集部
2014.07月 雑誌営業部
2016.07月 Number編集部
2018.07月 書籍営業部

――まず、今のお仕事を教えてください。

出版社の営業は、ざっくり言うと「売れる可能性を最大化する」仕事です。全国の書店や取次の方々に新刊の魅力を紹介し、POPやポスターを作り、目立つ場所で販売していただく。売れている本を重版し、サイン会やトークイベントの段取りをし、販路を拡大する。すべては、どれだけたくさんの人に本を手に取ってもらえるか(そして返品のロスをなくすか)が軸になっています。

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――入社理由を教えてください。

学生のころ読んだ『ぼくはこんな本を読んできた』(立花隆)という本に「退社の弁」という文章がありました。立花さんが文藝春秋に3年勤めて退社する際に、社内に向け書いたものです。その中に「文藝春秋の名刺があれば誰にでも会える」ということが書いてありました。当時の私はぼんやりと、いろんな人に会えるといいなあ、いろんな場所に行きたいなあと考えてだらだら生きていたところでしたので、「そんな会社あるんか!」となりました。そしてはじめて文藝春秋という名前を記憶しました。

また、高校まで野球部で活動し、大学ではスポーツ新聞を作っていた経験から、言葉やスポーツに関わる仕事をしたいとも思っていました。「Number」ももちろん(毎号ではありませんが……)読んでいました。そんなこんなで、文藝春秋を受けました。

――現在の仕事のやりがいは?

言葉や本が好きで、真摯な方に会えることです。書店には、目立たずとも黙々と、すばらしい品揃えの棚を作られている担当者がいらっしゃいます。忙しい日々にもかかわらず、驚くべき読書量を継続されている方がいます。新刊の説明をしている最中に返していただく言葉から、ある作家さんやあるジャンルに対する愛が垣間見えるときがあります。そしてその話を深く聞かせてもらい、同じ熱量で私も話せるときに強い喜びを感じます。すぐに売上に結びつけることは難しいですが、通常とは違う動きが生まれるのは個人的な関係をしっかりと結べたところから、と感じています。

あと、個人的には仕事に関係のないムダ話が好きなので、脱線して盛り上がるほうが楽しみです。これは営業として正しいと言えないかもしれませんが……。

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――これからの目標を教えてください。

営業で得た知見を生かしながら、インパクトのある読み物をつくりたいです。営業に異動する前は、「Number」や「週刊文春」の編集部にいました。恥ずかしいことに、当時は自社でどんな本が売れていて、何万部に到達したということはおろか、そもそも具体的にどんな刊行物を取り扱っているかも把握していないほどでした。

営業では、書籍でも雑誌でも、まず無事に刊行するために多くの人が身を砕いていることがわかります。そして出版物を「売る」ことの難しさと手間の大きさを実感しています。いいものをつくれば売れる、というのは事実でもあり、それだけでもないような感覚もあります。その塩梅や、販売する工夫の必要性を日々学んでいます。

営業から見える風景と編集から見える風景は全く違っており、両輪を学べるのはいい経験だと思うので、できる限り力を出して営業の仕事に臨んでいきたいです。その上で、強くおもしろい刊行物を生み出せるような人間になりたいです。

――営業部員として働く中で、最も高揚した瞬間は?

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年に一度、「本屋大賞」が発表されるころに営業部はそわそわします。日ごろお世話になっている書店員の方々が選ぶ賞であり、販売への影響力が非常に強いためです。前回の本屋大賞には、弊社刊の『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)が選ばれました。作品の魅力が第一なのはもちろんですが、担当営業部員がコツコツとPOPやパネルを作りかえ、帯をつけかえ、書店にも注文を取り続け、地道に販売努力を続けてきたのが報われた部分もあると思います。本屋大賞受賞の報告を受けた瞬間、書籍営業部長はたぶん泣いていました。見間違いかもしれません。でもそれくらい、営業部としてこの賞にかける思いが大きいのは間違いないです。授賞式の日には、懇意にしている広島の書店員の方がわざわざ休みを取って東京まで受賞を祝いに来てくださり、私にとっても非常に嬉しい瞬間になりました。

――出版社の営業の醍醐味を教えてください。

営業部員は本や雑誌を作っているわけではありません。しかし、「もの」ではなく「動き」を生み出すことは可能かもしれません。たとえば『花の鎖』(湊かなえ)は、2013年に発売された文庫本ですが、今年、あるお店でオリジナルのPOPとともに展開してもらったら売上が急増。累計80万部を超えるベストセラーになりました。

特に文庫本は、発売から時間が経っていても関係なく売れます。その鉱脈を発見し、掘り起こすことができるのは営業部員だけです。今年で言えば、『姫椿』(浅田次郎)や『午前三時のルースター』(垣根涼介)、『小さいおうち』(中島京子)なども仕掛けから売れています。本が好きな方にとって、既刊本の中で本当にいいと思えるものを、さらに売り伸ばせるのは魅力的なことではないでしょうか。

――オフの日の一日の過ごし方は?

文藝春秋にはひっそりと野球部が存在していまして、そこでピッチャーをやっています。昨年秋のリーグ戦(出版社6社で毎年やっている)では実は優勝しました。高校までやっていた野球では内野手だったので、最初は全く変化球を投げられなかったのですが、いまではスライダーとカーブとフォーク(決め球)を覚えました。

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――二瓶さんの忘れられない一冊を教えてください。

保坂和志さんの『残響』。友人と2人で、保坂さんが書いた小説を片端から読み、定期的に会ってお酒を飲みながら感想や連想などを話す(が途中から2人とも酔いがまわりめちゃくちゃな話になる)会を開いていたことがありました。強い伝播力がある小説です。会自体が楽しかった思い出も含めて、忘れられません。

――「リアル書店」で何を伝えていきたいですか。

「リアル書店」は絶対に必要だと私は思っています。ネット書店は、ランキングのチェックや目当ての商品がある場合にはとても便利です。しかし、意外な出会いはリアル書店で起こります。言葉とともに生きてきた書店員の方が商品を並べています。自分の購入履歴から導き出される本とは全然違った内容のものが、実は自分に突き刺さるかもしれません。そのきっかけが、リアル書店にはあふれています。

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書店員の方が心から売りたいと思っている本、出版社の営業部員が心から売りたいと思っている本などがひしめき合って並んでいる中から、読者が主体的に買う本を選ぶことができるのがリアル書店です。本の並べ方がやたらきれいな売り場(書店員さんもそこをよく見ているということ)や、長く使われ角が折れているPOP(商品の変動が激しい書店内でずっと生き残っている)など、意外と人の気持ちって売り場に漏れ出ているものなので、ぜひじっくり観察してみてください。

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