8. FCは本当にインチキなの?【ハリー・フーディーニの物語】

 FCの真実をひも解く中で、今回はハリー・フーディーニのお話を紹介します。彼は19世紀から20世紀のアメリカで活躍した有名な手品師です。

 フーディーニの生きた時代のアメリカやイギリスでは、『心霊主義』なるものが流行していました。現代の感覚で言えば「オカルトブーム」でしょうか。しかし、当時はまだ「単なるオカルト」といった感覚ではなく、「新たな学問の可能性」として考えられていたようです。

 『心霊主義』は様々なことを試みました。死者の姿を見る、死者の言葉を聞く、死者の魂を「霊媒(れいばい)」と呼ばれる霊能力者に降ろし、霊媒の口を借りて死者に思いを語らせる―― いわゆる「降霊術」です。

 フーディーニは、この降霊術にいたく興味を持ちました。彼には亡くなった愛母がおり、どうしてももう一度、彼女と話がしたいと望んでいたのです。

 フーディーニは降霊会(降霊術を行う会)に参加し、最初の内は衝撃と感動を覚えます。しかし、彼の職業が、それにひたり続けることを許してはくれませんでした。フーディーニは手品師ゆえに気付いてしまったのです。「霊媒」たちのやることがインチキのトリックばかりだと。

 そしてハリー・フーディーニは怒れる「ニセ降霊術バスター」になりました。ニセモノたちのトリックを暴きつづけたのです。本当に母の言葉を聞かせてくれる「本物」を捜すために。

 残念ながら、彼の存命中に「本物」は見つかりませんでした。

 彼の死後、フーディーニの霊との交信に成功したと主張する者が何人も現れましたが、彼らはフーディーニが生前に残していた「合言葉」を一人も当てることができなかったといいます。

 以上が哀しき魔術師・ハリー・フーディーニの物語です。

 さて、なぜ私がこれを「FC」を理解する話の中に挟み込んだのか、疑問に思った方もいるでしょう。

 この話が物語るのは、端的に言えば「手品師でもなければ人は容易に騙される」ということです。もしFCの介助者(ファシリテーター)が、無意識に、あるいは意識的に、手品のようなトリックを使ってしまっているとしたら? それは一目見て分かるものではないかもしれません。

 あなたは騙されない自信がありますか?

 それとも、騙されるかもしれないと警戒して、慎重な態度を取る道を選びますか?

 ……続きはまた。