アイキャッチH30論文合格者数20190912

【質問回答】判例の勉強のしかた

0. プロローグ

前回の記事は現時点で「37アクセス」なんですが、昨年の論文式試験の合格者が「たったの259人」であることを鑑みると、まぁまぁ、そういうこともあるよね、と抽象的に納得しています。

さて、昨日概説した審査基準の勉強のしかたに関する記事は「とても参考になる記事でした。」という感想が返ってきたためナイーブに気をよくしていたところ、

という質問が寄せられたので、今回は弁理士試験に合格するための「判例の勉強のしかた」について考えをまとめてみます。

1. 判例はいつから勉強するのがよいのか

判例の勉強は着手時期が最も重要です。

というのも、昨日解説した審査基準については応用的な考えのみならず定義・趣旨やベーシックな事項も説明されている行政文書であるから、学習の初期から参考にしてもらってもOKなのに対し、判例というのは、ベーシックな法律の理解だけでは解決しなかった問題(≒争い)について、司法的な落としところが書いてある文書です。

つまり判例はバリバリに応用的な内容であるから、それらを学ぶには少なくとも基礎講座・入門講座で解説されている事項が説明されたらわかるレベル、復習したらわかるレベルにまで達している必要があります。別の言い方をすると、知財検定2級の合格レベル(実際に合格した後)でない限りは、判例の勉強はしないほうがよいと言えます。

したがって「判例を学ぶ」ことについて関心をいだいたのなら、まずは自分の現時点の実力が知財検定2級合格者レベルであるか、実際に知財検定2級を受けてみて確かめてみることをオススメします。

このことは大学受験の数学で考えてみてください。教科書の例題レベルが解けないのに、難関大の入試問題は解けないですよね。

知財検定2級レベルのベーシックな知識を固める、それが判例を学習する前提です。

2. まずは『判例教室』で結論を憶える

判例についても短答対策なのか論文対策なのかで考え方・取り組み方は変わります。ちなみに、口述試験は判例の知識がないと合格しない試験ではないし、なにしろ短答・論文と判例対策ができていれば知識の面では不安はありません。

東進で古文を教えてる先生が言ってましたね。

「頭には知識はあるの。あとは訓練と引っ張り出す練習とスピードの問題です。」

口述試験の受験生にアドバイスできることといえばまさにこれ。
この記事を読んでいるあなたもいずれは口述試験を受けるのでしょうから、この心構えは覚えておいてほしいです。

脱線した話を戻しましょう。

判例にまつわる問題は短答でも論文でも出題されますが、ぶっちゃけ短答は判例の結論だけ憶えておけば正答できちゃうのが現実です。

そして知的財産法の重要判例を結論だけ手広くカバーするなら正林先生の『知的財産法 判例教室』の1冊でよいです。

『判例教室』は特実意商のみならず著作権法・不競法についても重要判例がコンパクトにまとまっているので、まずはこれを読んで各判例の結論部分(どれも1~2行程度です)をマークし、憶えてしましましょう。

しかも短答式試験の判例にまつわる問題は、結論だけぼんやり憶えていても正解できる問題が増えています。昔のように、判決文をベースにした文言の空所補充問題であれば正答のためには正確な記憶が必要ですが、最近はその傾向の問題は少なくなってしまいました。

今後再び空所補充問題が複数出題されるかもしれないものの、それであっても、まずは各事件の結論を憶えて、その後に余力の許す限り要件を正確に憶えていくというスタンスでよいです。

ちなみに『判例教室』は2年に1度ぐらいのペースで改訂されていますから、購入前に、最新版の刊行予定がないか、出版社に確認すると万全ですね。

なお、なんらかの事情で『判例教室』を購入することができない事情があるのなら、下記のツイッターをフォローして学んでみてください。

このアカウントは過去の弁理士試験で出題された判例について、結論部分を中心に網羅的にツイートしています。

いずれにせよ、知財検定2級合格者レベルにあるのなら、重要判例の結論部分にどんどん目を通していきましょう。

追記:上記のアカウントが凍結されてしまったので、内容をノートに転記しています

3. 次に「判決文全文」をできるだけ読む

短答式試験は上記の対策でクリアできるとして、論文式試験対策となると結論部分だけの暗記だけではやはり太刀打ちできないのが現実です。

均等論に関する最高裁判例の5要件やBBS事件で判示された並行輸入の論点ように、論文式試験では判決で示された規範に基づいて本試験の事例問題であてはめられるか、といった力が問われます。

この力をつけるためには、判示された要件を正確に再現できるように憶えていく必要がありますが、個人的には結論の記憶とちがって、要件の暗記は『判例教室』ではうまくできませんでした。

もちろん『判例教室』にも事案の説明や、判示内容のまとめは記載されているのですが、それだけを理解・記憶してもどういうわけか答案でなかなか再現できませんでした。

そこで、試しに最高裁の公式サイトから判決文の全文をPDFでダウンロードして印刷したものを読んでいったところ、判決文全文といっても意外と短い(数ページのものが多い)し、記載されているキーフレーズ以外の事情を読んだほうが事件の背景を理解しやすいし、さらには丁寧に判決文中の重要部分は下線が引かれてハイライトされているので、

「なんだ、判決全文を読んだほうがわかりやすいじゃん」

という結論に至りました。

よって、答練で未知の判例に基づく問題が出題されて、解説冊子の判例解説を読んでも内容がイマイチ理解できない場合は、一度思い切ってナマの判決文を読んでみることをオススメします。

上で紹介した、

では、紹介している判例について最高裁の公式サイトから判決文全文がダウンロードできるように個別にリンクを貼っていますから、リンク集としても活用してもらえればと思います。

4. まとめ

弁理士試験に合格するための判例の学習のしかたについては、以上で説明したポイントを押さえておけばよいでしょう。

重要な判例は毎年のように出てくるので、最新の判例をカバーするためには受験指導機関の直前講座を利用するのが得策ですが、基礎的な知識をつけるだけなら上記の対策でまかなえないか、まずは試してみるとよいでしょう。

上述した以外のこと、たとえば判決が出た期日をゴロ合わせで憶えたり、といったことは、記憶を定着するためのフックとしてはいいかもしれないけど、憶えてないと合格できない類の知識ではないことを付言しておきます。

「自習だとやっぱりキツい」
「講座を受けたい」

という場合は、江口先生の講座か、宮口先生の講座を受けるのがベターです。

関西弁が気にならないなら江口先生の講座が、数多くの判例に当たりたいなら宮口先生の講座がそれぞれオススメです。

リンク先の講座が申し込めない場合でも、同様の講座が年末年始や直前期に例年ありますから、お金さえ払えば講座は受けることができます。

判例の勉強法についても、具体的に踏み込んだお悩みやお困りごとがあれば改めて具体的に質問された時に解決策を考えてみたいと思っています。

なにかお気づきの点やご不明な点があれば、下記までお寄せください。

ツイッターのDMも開放しています。

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