鳥獣人物戯画の商用利用

「デザイナー日本の伝統文様研究家、日本の伝統色研究家
日本画家、伝統産業デザインアドバイザー、一次産業ブランディングアドバイザー」を名乗る「成願義夫」氏のブログに気になる記載があります。

例えば、『鳥獣人物戯画』を所有している高山寺は著作権以外の新たな権利登録を行なっており、結果的には無断で『鳥獣人物戯画』を商用利用する事はできなくなっております。

 しかし、本当でしょうか。登録可能な無体財産権としては、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、育成者権、回路配置利用権等がありますが、「鳥獣人物戯画」は単なる絵ですから、登録をなし得るとすれば商標権と意匠権以外には考えがたいです。
 「鳥獣人物戯画」の絵柄自体は商標登録の対象となる「標章」(人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの)たりえます。しかし、仮にこれを高山寺が商標登録したところで、特定の商品または役務についての出所等を明示するための使用(商標的使用)以外の方法でこれを使用した場合には、商用利用であっても、商標権侵害にはなりません。また、商標は、指定商品または指定役務ごとに登録しなければならず、当該商標の指定商品または役務と同一または類似していない商品や役務に用いられても商標権侵害とはなりません。
 意匠は、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいうので、「鳥獣人物戯画」の絵柄が特定の物品に用いられた場合に「意匠」たり得るとはいえそうです。しかし、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠」については意匠登録することができない(意匠法3条1項1号)ところ、「鳥獣人物戯画」の絵柄は、ずいぶん前から日本国内において公然と知られていたように思います。
 このようにみると、『鳥獣人物戯画』を所有している高山寺が著作権以外の新たな権利登録を行なっている可能性は乏しいように思います。
 こういう発言を、部外者である成願氏が勝手に吹聴している分には法的な問題は起きないのかもしれませんが、高山寺が積極的にそういうことをWebサイトなどで表示場合には、「鳥獣人物戯画」の商用利用について独占権がないにもかかわらず、そのような権限があるかのように誤認させるような表示をしたことになりますから、2条1項20号の不正競争行為となる危険があります。なので、高山寺におかれましては、慎重な行動が求められるところです。

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