連座制採用の是非
芸能事務所の社長から性加害を受けた被害者が訴訟提起したり刑事告訴したりあるいはマスメディアを通じてその旨を公衆に知らしめた場合に、テレビ局やCMスポンサーがその事務所との契約を切りあるいは新たな契約を結ばないようになり、結果として被害者を含む所属芸能人が仕事を失っていくようになるとしたら、爾後、芸能事務所の社長から性加害を受けた被害者はそのことを誰にも打ち明けられなくなるのではないかって危惧しますけどね。だって、自分が性加害を受けたことを知られたら、自分や自分の仲間たちが仕事を失っていってしまうし、自分の仲間やそのファンから恨みを買いかねないわけですから。
実際、ジャニーズ事務所の件では、被害者の会の構成メンバーが酷い中傷を受けているわけです。加害者(の相続人)に賠償金を支払わせるというだけのスキームであれば、ジャニーズ事務所所属アイドルのファンたちが被害者の会の構成メンバーを恨む理由などないのです。しかし、現状、テレビ局やCMスポンサーがその事務所との契約を切りあるいは新たな契約を結ばないような雰囲気になりつつあるために、被害者の会の構成メンバーは、自分がファンであるアイドルの活躍の機会を奪う人として、恨みの対象になってしまっているのです。
事務所を移ればいいって簡単にいう人たちもいますけど、他の事務所にスムーズに受け容れてもらえるのって、ジャニーズ事務所所属アイドルのごく一部だけだと思いますよ。自分たちで作詞・作曲できるバンド系と違って、ジャニーズ所属のアイドルは、歌を歌うにしろ、役者として演技をするにせよ、基本的には事務所にお膳立てしてもらわないといけないし、この点に関しては、ジャニーズ事務所以上のノウハウを持っているところってほとんどありませんし。大衆の耳に残るようなキャッチーなメロディから構成され、かつ、彼らの歌唱力の範囲内に留まる作品を、コンペティションで寄せられた楽曲の中から選び出すって、結構大変ですからね。
しかも、ジャニーズ事務所は、知名度が低い間は知名度の高い先輩アイドルのバックダンサーとしてステージに上ることで大衆の前にその姿を晒していき、ある程度知名度と顧客吸引力を獲得した後、アイドルとしてデビューさせるという育成システムを採用してきたので、まだ育成過程にある「アイドルの卵」は、育成システムの外に行ったら、育成されない可能性が高いですからね。
だから、経営陣等による性加害を告発等したら自分たちも連座責任を負わされるという前例は作らない方がいいと思うんですよ。