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パンドラの宝箱

 神が人類を創造したのか、人類が神を創造したのか?
 いま、その答えが示されようとしていた。

 海に浮かぶ都市、東京湾アクアポリス――。
 令和27年に完成して、すでに10年が経過している。

 その男は一見、平凡に見えるが、ただならぬ雰囲気があった。
 このアクアポリスのほぼ南端にあたる新36番街――。
 ひときわ目立つビルがある。
 アリエス・ベイシティービル――その5階にあるワインバーで、彼は久しぶりにマルゴーの香りを楽しみながら、遠くで小さく光る海ほたるを眺めていた。
 その晩は真夏のわりには星がやけに輝き、天空には満月が浮かんでいた。海面に月光が反射してゆらゆらと優しく輝いている。

 西崎鏡花(ニシザキキョウカ)はそのワインバーで働くソムリエの1人である。――知性で輝く冴えた眼差。砂浜に打ち上げられた白い真珠のような素肌。モデルを思わせるスラリとしたシルエット。彼女に憧れてこのワインバーに通う男性客も多いと言う。
 いつもなら、落ち着いた様子の彼女だが、今晩はすこし違って見えた。
 時々視線を一人の見慣れない男性客に向けている。

 彼女の視線の先の人物は、妹尾圭(セノオケイ)という。
 ――その男は一見、普通のサラリーマンにしか見えない。
 だが、みる人がみれば、明らかにふつうの男とは違う。
 厳しい特殊訓練を積んだ身のこなし、目配り――。
 いっさい隙がない。

「いらっしゃいませ。今晩の特別メニューでございます」
 鏡花はそう言うと、海の方に流し目を送りながら、圭にささやいた。
 ……あれが、そうです。ご覧ください。

 ――え?!なんだ!あれ!!――

 ふつうの人間なら、そういう感想になるはずだが、彼は違った。
「なるほど。着実な成果というわけだ」
「……では、ごゆっくり」
 ……架空生命体か。ついに、やりやがった!

 彼の視線の先には、何かの群れがうごめいていた。イルカなどの海洋生物のようでもあり、人間のようでもあった。



 (つづく)




------------------ ✂︎キリトリセン ✂︎------------------


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コレは「第2回逆噴射小説大賞」応募作品です。

NOTEの皆様今晩は*+.

紅花でございます☆ミ

ちょっと、迷ったのですが、滑り込みでもう一つだけ逆噴射します(笑)

よろしくお願いします(#^^#)*+




ご褒美は頑張った子にだけ与えられるからご褒美なのです