琉球の紅毛酒
面白いものを見つけたんですね。いつものように何か面白いものないかなぁーってペラペラと十返舎一九の『手造酒法』(1813年)に書かれてる本をめくっていたらあった。
【紅毛酒】
紅毛とは本来江戸時代、オランダ人の称。転じて、一般に西洋人のことを指す言葉なんだけどここからが面白い。泡盛を使うんです。
紅毛酒のレシピの造り方をざっくり翻訳すると
泡盛一升。氷砂糖二百五十目
右さとう粉にして酒に入、三十日程過で出し喉得ば酒すみ風味いたって良し。
※ 氷砂糖二百五十目は(1目は約3.75グラムなので、約937.5グラム)なのでかなり濃厚な甘め泡盛リキュール。一升が1800mlで砂糖が937.5だとざっくり糖度が50%を超えるんですね。これってクレームドカシスリキュールやカルーアミルクのカルーアリキュールなんかよりも遥かに糖度が高いんですね。
ここで「紅毛」とは、本来、江戸時代にオランダ人を指す言葉。ただオランダを漢字で「阿蘭陀(オランダ)」とも書くけど紅毛と呼ばれた理由は、外国人の中で髪の毛が赤みを帯びていることが江戸時代の人にとって特徴的であった為で、また、この時代に江戸幕府と公式に交易が許されていた外国は、琉球王国、朝鮮、中国(清)といったアジア系の国々のみ。その中で、髪色が明らかに異なる紅毛の人々、つまりヨーロッパ人のオランダ人🟰紅毛なんですね
であれば紅毛酒はジュネバジンなどが入ってたらオランダ酒っぽいのだが紅毛酒は泡盛を使っているんですね。
ただここが面白いなぁって。時代を鑑みればこの時代の琉球王国も外国であるから『泡盛』も外国を意味する『紅毛』なんだなと。そう思えば納得であって。
紅毛酒は糖度が50%を超える極めて甘い泡盛リキュール。江戸時代の焼酎や泡盛は現代のように洗練されたものではなく、荒々しい味わいが特徴であったと確か聞くのでそのままでは飲みづらかったのかなと。その背景もあり激しい風味を和らげ、飲みやすくするために甘味を加える手法が考案。つまり紅毛酒のような高糖度の泡盛リキュールは泡盛や焼酎などの蒸留酒に馴染みのない本州の需要に応える形で生み出されたものなんだろうなと。
でもその江戸時代の激しい味わいの泡盛などの古酒をいつか飲んでみたい。