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ロマンスカー SEの想い出

小田急電鉄で勤務させて貰った中で、一番の思い出はSEに乗務できたことかも知れません。SEはまさに小田急の初代ロマンスカーで、その名の通り、スーパーエクスプレス。新幹線ができる前は日本最高速度の新記録を保持していた名車です。私がロマンスカー乗務の資格を得たときは、まだロマンスカーはSEとNSEが全盛期で、7000系と呼ばれるピカピカのLSEが走り始めたばかりでした。新車が来ると「今日はマイクの音質が最高だ」と回送列車で一曲唄いたくなる衝動にかられましたが、でも、私はいちばん愛したのはSEでした。5両編成の芋虫みたいな形状が愛らしく、運転席が広かったのもありますが、フォルムも美しく、電車にほおずりしたくなるくらい可愛い車でした。ペットが好きな方が愛犬を溺愛するように、私もSEを溺愛していて、乗っているだけで幸せでした。とはいえ、経年劣化した車両ですから、実際はボロボロ。老体に鞭打って爆走していましたが、このロマンスカーは窓が開く仕様で、ドアも手動ドア。雨が降ると天井や窓の隙間から雨漏りがして、大雨の時は床が洪水状態になり、モップを片手に車内を駆け回っていました。ドアも手動なので出発前にすべてのドアがしまったかを目視で確認したり、とにかく楽しい車でした。マニアックな話ですが、多客期はSEの重連が運行されて5両+5両の重量編成となることもありました。今、思い出しても昭和の小田急全盛期だったと思います。白いVSEも真っ赤なGSEも素晴らしい車ですが、夢が叶うなら、リメイクしたSEを復活運行させて欲しいものです。私の希望的観測ですが、次世代は昭和スタイルの復興ブームが来るのではないかとみています。一見古そうなものが実はかっこいいことに、人々が気付き始めていると思うのです。

温故知新。

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