見出し画像

angel

エンジェルとは、
なんだか神聖な存在で時に私たちを導いてくれる
幼い子どもや女性に羽が生えていて、まぶしくうつくしく、、
そんなイメージだと思います。わたしもそうでした。

しかしわたしが南の島で出会ったエンジェル(たぶん)はおじさんだったのです。

今年の2月に、思い立ってひとりオアフ島へ旅をしたときのこと。
久しぶりの海外、そのうえ大して行き慣れたわけでもない遠い国でのカルチャーショックからはじまるお話。

島に到着した日の夕方、クヒオ通り沿いのABCストアで購入したパイナップルをかかえてエレベーターに乗り込み、混み合う中で壁際にあるボタンの前に流れついたわたしは24階の部屋を目指します。

日本にいるときのように各階で人が降りるたびオープン、クローズとボタンを押すことを繰り返していたわたし。
生粋の関西人のうえ大都会での暮らしも長くなり、大切なのはスピード感、頭の中では常に効率の良い順序を組み立て、メールの返信はすぐに返して、判断力を鍛えるためにレストランではメニューを一瞬で決める、、なんてよくある“どこの誰が書いたのかわからない自己啓発本“を読みあさっていた20代前半の頃に得た知識がいやに根付いてしまい、都会に染まった女子、年齢も重ねてせっかちに磨きがかかっていました。

ショッピングを満喫したファミリーやビーチ帰りのカップルを見送り、もう何度開閉のボタンを押したかもわからないくらい。
そして20階を過ぎた頃にはエレベーターにはわたしと、1階から乗り合わせていた白人のおじさんのふたりに。

アイボリーのTシャツにハーフパンツとサンダル。口元のひげがよく似合う、バカンスを満喫する欧米のおじさま。
おじさんは不思議そうな、すこし不快そうな表情で私に話しかけてきました。

「さっきからなにをそんなにせかせかしてるんだい」

私は言葉に詰まりました。そして同時に、欧米ではエレベーターでクローズボタンを押さないことが多いをいうことを思い出します。
きっと郷に入っては郷に従えを言われるんだろう、海外の洗礼、、せっかちはこの一瞬も頭の中にいろんなことが駆け巡ります。

「扉が開いたらボタンを押して、人が降りたらまたボタンを押す。
君がそうやってせかせかすることで周りは不快に感じることだってある。」

ボタンを押さないとイライラされてしまう国に暮らしているので、ボタンを押すことで不快感を生むことがあるということなまさにカルチャーショック。
ここまでであれば、日本と海外の違いを指摘されたくらいの思い出話ですが、おじさんは更に話を続けます。

「その一回一回の判断にきみの大切な思考が失われていく。思考は無限じゃない。
たとえ無意識だとしても思考は確実に使われている。気づいていないだけで。
そこに注力をそそぐのならば、もっと君自身が幸せになれることに意識を向けるべきじゃないかい」

「扉が閉まるまでのほんの数秒も惜しいくらいの人生をおくっているのだとすると、きみはもっと大きな事柄から時間というものを考え改めるべきだろう。時間も、人生も有限だ。そして君を幸せにするためのものだ。」

ろくに相槌をうつこともできず、目を見開くだけのわたし。

「素敵なバケーションを」

23階で扉が開き、最後に少しだけ微笑んで私にそう言い残したおじさんはエレベーターを降りていきました。

いきなりのことで頭が真っ白になりながらも鮮明に残ったおじさんの言葉は
この旅の、そしてこれからのわたしの人生の在り方を見直す大きなきっかけとなりました。

ほんの一瞬の出来事でしたが
日々に追われてほんとうに大切なものまで見失いそうになっていた私へ
おじさんを模したエンジェルからのメッセージだったのでしょう。










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?