To the next, To the 1番上。 2024.11.09 湘南ベルマーレ vs 北海道コンサドーレ札幌 マッチレビュー
開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。
■ハイライト
先週に比べて一気に冷え込んだ関東地方、日中の平塚にてキックオフ。湘南は前節からメンバー変更は1名のみで、淳之介に代わって松村がスタメン入り。淳之介はベンチからも外れている。またベンチには負傷離脱していたルキアンが復帰している。
札幌は湘南に合わせた独特の並びで、前節のメンバーから高尾が外れて荒野がスターターに入る。
開始早々に湘南が決定機、畑のパスに反応した章斗がDFラインの裏に抜け出しGKと1vs1を迎えるが、菅野の飛び出しによってセーブされた。
9分の札幌、左サイドのスローインからクロス、湘南のクリアを青木が拾い、右サイドを駆け上がった近藤のクロスに駒井が頭で合わせるが上福元のセーブ。
22分の札幌。後ろで回そうとした湘南のパスを青木がカット、ミンテと松村をかわしてシュートを放つが、上福元がセーブした。両チームともにベテランGKの活躍でスコアは動かない。
前半アディショナルタイムの湘南、右サイドのスローイン。中央へ侵入して田中の反転、パスに反応したのは福田。相手DFをかわして左足でファーサイドへシュートを狙うがポストに嫌われた。
連続して湘南の決定機。畑から抜け出した平岡へパスが通ると、そのまま畑が長い距離を走ってポケットに侵入。合えば一点もののクロスをあげ、章斗が飛び込むがシュートには持ち込めず。
前半終了間際に湘南が立て続けにチャンスを迎えるがゴールは破れず。スコアレスで前半を折り返す。両チームともハーフタイムでの交代なし。
後半の立ち上がり50分、湘南が札幌を押し込んでいるシーン。ボックス手前に位置した章斗に縦パスが入り、落としのパスを田中が左足一閃。シュートは枠外に飛んでいたが、ブロックに入った大崎の身体にあたって枠の中へ。運にも恵まれた湘南が先制点を挙げる。
しかし約10分後、59分に札幌が同点に追いつく。再三再四右サイドを突破していた近藤が畑を振り切りクロス、中で駒井が頭で合わせた。
62分に札幌が選手交代、荒野を下げて浅野が投入。駒井がやや下がり、浅野が前目の位置へ。
66分に湘南も交代。小野瀬に代わって出場停止と負傷で離脱が続いていたルキアンが入り章斗と2トップを組む。福田が右IHへ移動。
70分にまたも札幌が交代。パクミンギュに代わってキムゴンヒ、長身FWが前線に入る。菅が左CBに下がり、青木が左WBへスライドする。
80分には両チームで複数選手の入れ替え。湘南は章斗、平岡に代わってフェリッピと阿部が投入。札幌は菅と近藤、大崎に代えて宮澤、中村、白井が投入。
84分の札幌、ハーフライン付近のフリーキックの流れから。キムゴンヒのシュートが湘南DFに当たってコースが変わり枠内へ、上福元が素晴らしい反応で弾いて事なきを得た。
89分の札幌。キムゴンヒが鈴木武蔵へ大きなパス。流れたところを上福元がカバーし、繋ごうとしたボールが中途半端になって浅野がカット。得意の左足で無人のゴールを狙うが、ややカーブがかかりすぎて枠を逸れた。
試合はそのまま1-1、ドローで終了した。他会場の試合結果により今シーズンのJ1残留が決定、来シーズンもトップリーグで戦えることとなった。めでたい。
■試合の振り返り
■札幌の対策と湘南が仕込んだ準備
この試合を振り返るにあたって、まずは札幌の守備陣形を見なければならない。湘南は札幌の守り方を想定しており、その弱点をとるための準備をしてきたように見えた。この試合を振り返る前提となる認識を揃えておこう。
札幌の守備はマンマークが基本であるのは前回対戦時から引き続きである。この試合では大﨑と岡村が、2バックのように湘南の2トップを捕まえにきた。そして馬場とパクミンギュはCBともSBとも異なるように見え、「守備時にIHを捕まえる役割」を担っていた…という表現が最適かと思う。ピッチの10人がそれぞれのマーク担当を決めるような守り方であり、役割がはっきりする分スペースも空きやすいという点がある。
湘南が札幌の守り方を想定していたと思われるのは、第一にIHの振る舞いにある。サイドに流れてボールを引き出すのがIHのプレーとしてよく見られるものであるが、この試合ではむしろ中央に留まっていた。これは自身をマークするDF(馬場とパクミンギュ)を中央に釘付けにすることで、サイドにスペースを空けておくことが目的だったと思われる。
そして第二のポイントは相手守備者と同数である2トップの動き。一人かわせば決定機という試せば試すだけチャンスが生まれる確率が高まる状況で、スペースに流れてボールを引き出し、最も効率的な方法で相手陣内へ侵入を試みていた。これまでの試合ではFWはサイドに流れることは少なく、むしろペナルティエリアの幅の中でプレーする印象があったが、この試合ではIHと役割を逆転。サイドに流れて中央を空ける役を担っていた。
とりわけ福田は大﨑とのバトルでボールを失わず起点となっており(後に投入されるルキアンやフェリッピよりも)、彼が前線にいる時間帯は湘南が狙い通りの形でボールを進めることができていた。
スペースで起点を作った後の設計も整っていた印象で、中央に残しておいたIHがバイタルエリアに向かって前向きに走り込む姿があった。そこに対応されたとしても、今度は田中が晒されたDFラインの手前で引き取れるようになっていたし、畑もサイドやハーフレーンを駆け上がって選択肢を作っていた。実際湘南が挙げた得点は、DFラインの手前に空いたスペースを田中が上手に使った結果である。
反省材料としてはチャンスの手前である場面から、ボールを動かすテンポがずっと速かったところだろうか。相手の守備陣形に穴が空いているシーンがあるのは確かなのだが、空いていない時も急いでしまったり、急いだ結果ミスになるシーンが何度も見られた。ベンチにはテンポ管理ができる選手はいるのだけれども、この試合でIHに求められる役割を考慮すると、アンカーである田中がテンポ管理をして欲しかったところ。自身が奪ったボールを即座に味方へ届けられるのは十分すごいのだが、相手守備陣を広げたり味方に息を吐かせたりといった展開ができるようになれば、今度こそ欧州でも活躍できるのではないだろうか。
後ろで繋いで、という場面が作れなかったのは、札幌の奪いどころが湘南にとって辛い場所だった点も考えられる。3バックに対して相手FW3枚がマークしているため、ボールを引き取ってくれる上福元からすれば近場にパスを出せる場所はない。アンカーは荒野、サイドは対面のWBにばっちり監視されているためこちらもNG。残すはIHとFWになるがマーク担当である馬場とパクミンギュ、そして岡村と大﨑も含めてIHへの迎撃意識が強く、いつでも通せるような状況にはなかった。それでもフリーの場面ではボールを預けたりと、状況に応じた判断がされていたように思う。
ただしボールを奪った後や手詰まりになった状況で、人数の集まった同サイドにこだわり続けたシーンが散見された。この辺りの交通整理ができる選手がいて欲しいな…と感じる場面だった。
■今節と連勝中の違い?
現体制下では立ち位置の変化やボール回しによって相手のプレスをかわすという取り組みはなさげで、それなら空いているFWへ送った方が効率的でしょ、という考えがベースになっていると思われる。簡単にまとめると以下の通りだ。
この試合のゴールもそうだし、FC東京戦の章斗のゴールも、広島戦の田中のゴール、東京V戦の雄斗のゴールもやっていることは同じである。FW交代以降の印象が強すぎて悪いイメージができたのかもしれないが、この試合も連勝していた試合も同じ方針の下で戦っているはずだ(まさかFWの交代選手があそこまでハマらないとは思わなかったが)。結果を見てから良し悪しを判断するのも楽しみ方の一つだが、筆者としてはそりゃこういう試合もあるよな、というぐらいの認識である。単独で打開できる選手が何人もいれば話は別かもしれないけども。
どちらかというと気になるのは、シュートを打つエリアが徐々にゴール正面から離れているところ。FC東京戦の章斗もボックス外、畑は正面ではなく角度のある場所からのシュートであるし、この試合での田中のシュートはボックス外である上に元々は枠からも外れている。当然ながらゴール正面でより近い場所からシュートを放つ方が得点となる確率は高い。広島戦の田中や東京V戦の雄斗のように、ボックス内からシュートを打つシーンが減っている印象があるので、より相手DFラインを押し込むためのアクションを期待したいところだ。
何はともあれ残留が確定。ここ数年は痺れる展開からの残留決定が多かったために刺激が足りない方々も多いかもしれないが、2試合を残して翌年のカテゴリーを決められたのは着実な進歩だろう。チーム編成的にも多少なり有利に働くはずだ。
次節までは3週間近く空くため、サポーターの皆様も気持ちに余裕のある週末を過ごせるはず。筆者はシーズンレビューのネタづくりに入りますので出来上がったら読んでもらえると嬉しいです。それでは。
試合結果
J1リーグ第36節
湘南ベルマーレ 1-1 北海道コンサドーレ札幌
湘南:田中(50')
札幌:駒井(59')
主審 谷本 涼
タイトル引用:Creepy Nuts/Bling-Bang-Bang-Born
緑仙、花畑チャイカ、社築がカバーした楽曲より引用。湘南のチャントでも使われているアレです。来年はより高い位置へ向かいたいものですが、ひとまずは皆様お疲れさまでした。